シリコンバレーで主流になっている「Convertible Notes」(転換社債)とは?

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「Y-Combinator」を運営するPaul Grahamが過去に以下をツィートしたことがある。

“Convertible notesが勝った。今期Y-Comから出てきたスタートアップはConvertible noteで投資された。”

もはや、シリコンバレーではConvertible note(転換社債)で出資することが主流になっています。

投資家または投資家グループから企業が受けた借入金を、当事者たる当該の企業および投資家または投資家グループが、後日、双方の同意によって株式に転換しようとするとき、これをConvertible Note(転換社債)と呼びます。

融資が行われるときは、どのような方法で借入金を株式に転換するかが指定しておかれるのが一般的です。場合によっては、割引やワラントの形で補償されることがありますし、そのような補償が与えられない場合もあります。また、借入金の転換にあたって査定額に上限が設けられる場合もありますし、設けられない場合もあります。

投資家と融資を受ける企業の双方、またはいずれかが、直接株式を発行する代わりにまず債務契約を結び、後日、改めて借入金を株式に転換しようとするには、いろいろな理由があります。企業にとっての理由は明らかです。

自社の株式の価値が将来高まると判断している会社にとっては、まず融資を受けて、それを後日、株式に転換することで借入金の価値を小さく目減りさせることができるからです。同時に、借入と株式の発行手続きを比較した場合、この方法を取った方が取引コスト、特に法的手数料を小さく抑えられるのも事実です。

一方、投資家の側から見ると、株式より借入金を選ぶ理由はそれほど明確ではありません。時として、投資家達は企業への投資機会が得られること自体を重要視するあまり、資本を転換社債に変え、次のラウンドで自分達が価格決定権を握ろうとする場合があります。

このような場合の投資家は、現時点での価格決定に固執すると、自分が投資しようとしている資金を当該の企業が単に受け取ってくれなくなるのではないかと危惧しているのです。また別の場合には、ワラントや割引の形で付く補償に十分な価値があると判断し、これが株式より借入金を選んだ場合のオフセットとなると考えることもあります。

最後に、株式より借入金の方が清算してもらいやすく、企業から株式を購入するより企業への借入金の形を取った方が、いくぶん安全になるという利点もあります。ただし、起業初期のスタートアップ企業にとっては、これはたいして価値のないことです。起業に失敗すれば、清算価値がほとんどなくなってしまうからです。

ワラントも形を変えたオプションです。ワラントとオプションとは非常によく似通っています。一般的な転換社債では、次のラウンドに何らかの担保が売却される場合にワラントがオプションとなります。転換社債を発行する際の補償は、多くの場合、ワラントまたは割引の形にします。

ワラントは「ワラント・カバレッジ率」で表現される場合が一番多いようです。たとえば、「ワラント・カバレッジ率20%」となっている場合には、転換社債の規模に応じて、たとえば100万ドルであれば、それに20%をかけたもの、つまり20万ドルとなり、次のラウンドにはワラントのおかげで20万ドル分多く安全に保持することができるという意味になります。この例を締め括るには、次のラウンドは400万ドルだとしましょう。

すると、次のラウンドの総額は520万ドルになる訳です(新規の400万ドルに100万ドル分の転換社債を加え、さらに20万ドル分のワラントを追加した額)。転換社債の総コスト120万ドルは、次のラウンドでは現金にして100万ドルの価値に希薄化されます。

割引はもっと分かりやすい概念ですが、その実行はより複雑です。割引も百分率で示されますが、最も一般的な割引率は20%から25%です。割引は転換社債の債権者が次のラウンドで転換する際に受ける価格割引の量を示しています。前の例と同じく、ここでも割合は20%であったとしましょう。

融資を受けた企業が新しく現金400万ドルの収入を得たとすると、転換社債の債権者は100万ドル分の借入金を転換することで、そのラウンドでは125万ドル相当の株式を手にすることができます(100万ドルを80%で割ると125万ドルになります)。見方を変えると、これは100万ドルが125万ドルから20%を割引した値だということもできます。

転換社債には、転換する際の査定に上限を設けるのが一般的です。典型的な上限の設定法は現在の査定額どおり(これはあまり一般的ではありません)からその数倍の間で任意の値を定めるというものです。最近では、上限を設けない転換社債も出始めています。これらの債券には転換する際の査定上限がありません。

スタートアップ企業は、よく起業初期に転換社債を通じて資本を獲得する方法を検討します。スタートアップ企業は速い動きが身上で、取り引きコストを小さく抑えようとすると同時に、概ね天使のような投資家達と取り引きしているため、シードラウンドやシリーズAラウンドよりも転換社債の方が次のラウンドへと進みやすいものです。

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