Kickstarterは、ハードウェア・イノベーションの救世主

by Mashable Mashable on 2012.6.4

【原文】

Pebble Technology は Pebble Watch を製造しているスタートアップだが、同社を支援してくれる投資家を見つけることができなかった。だが、Kickstarter にプロジェクトを掲載して28時間以内に100万ドル以上の資金を調達することができた。

資金問題に直面し、Kickstarter で資金を調達をしたスタートアップは Pebble Technology だけではない。

プロダクトデザイン企業 Frog の Robert Fabricant 副社長は、「Fast Company」の最近の記事で「Best Buy やウォールマートなどへの販売が決まっていない限り、ハードウェアを扱うスタートアップに出資してくれる投資家を見つけるのは本当に難しい」と述べている。

一方、Kickstarter は投資家に魅力のあるアプリやクラウドベースのソフトウェアよりも、ビデオで簡単に紹介できるクールなガジェットに好意的だ。Kickstarter の今週の人気プロジェクトのトップ6は全てハードウェア関連だ。

あわせて参照されたい:Kickstarter での資金調達に必要な9つのステップ

だが、Kickstarter がハードウェアスタートアップに与えるのは資金調達のチャンスだけではない。開発の初期段階で関心を持つユーザに新しいプロダクトを紹介することで、 ハードウェア・スタートアップもソフトウェア企業のようにプロダクトを開発することができ、ユーザが何を必要としているかを確かめ、開発段階で得たフィードバックを商品に取り込んでいけるのだ。

ユーザの関心を取り込む

Dan Provost と Tom Gerhadt は iPhone用の三脚「Glif」の商品化のため資金調達の目標額1万ドルを設定、137,417ドルの資金を獲得し会社を設立。

Eric Ries は近著「リーン・スタートアップ」の中で次のように述べている。

人が欲しがりそうという、プロダクトのアイデアだけに頼って、スタートアップを始める人が多すぎる。彼らは数ヶ月、時には数年をかけ、まだ開発初期段階のものなのに、 買ってくれそうな顧客にそのプロダクトを見せることなく完成させてしまう。

Reis はこのベストセラーの中で、スタートアップは誰も欲しがらないプロダクトへの多額の投資を避けるために、早い段階で未完成のプロダクトを紹介し、頻繁に試行錯誤を繰り返すべきだと提案している。

だが、minimum viable product(市場のフィードバックを得るため、必要最小限の機能を備えたプロダクト)を流通させるのはハードウェア企業よりもソフトウェア企業の方がずっと簡単だ。確かに、新しいハードウェアのコンセプトが軌道にのるには時間・材料費・製造費が必要になる。

しかし、Kickstarter ではハードウェア・プロダクトの出荷準備が整うかなり前に商品を紹介する。消費者にとってプロダクトが魅力的かどうかによって出資の是非が決まるため、リスクが少なくなる。

このプロセスはプロダクトをそのまま押し進めることを簡単に思いとどまらせると同時に、簡単に企業もつくってしまう。

例えば、Dan Provost と Tom Gerhadt が 2010年にGlif という名前の iPod用の三脚を商品化するために資金調達したとき、2人には会社を設立するつもりはなかった。Kickstarter のユーザが1万ドルの目標額に対して137,417ドルを出資し、2人は Studio Neat という企業を設立した。それ以後、2つのプロダクトをリリースし、Kickstarter で別の資金調達キャンペーンも行なった。

Provost は、Mashable に次のように語っている。

最初のプロジェクトの結果には本当に驚いた。そんなにお金が集まると思っていなかったから。そして、なんとなく会社を設立することになったんだ。

予め、ユーザからのフィードバックが得られる


Mashable のオフィスで、 IPad用キーボードの説明をする
TouchFire 社クリエイターの Steven Isaac 氏。
 

普通、何らかの拍子で iPad のキーボードに指が触れると触れた文字がそのまま入力されてしまうのだが、Steven Isaac の TouchFire — iPad の上に装着するキーボード — を使えば、そのようなことは起こらない。

キーボタンがはっきりしているので、スクリーンを見ずにタイピングすることも可能だ。シリコン製の本体は非常に薄く柔軟性があることから、不細工なプラスチック製の代替となる。言い換えれば、非常に便利ということだ。

このガジェットのデモビデオを見た Kickstarter のユーザーからの不満はたった1つ。それは、iPad についているカバーに TouchFire を装着するためのクリップが不細工だということだった。

このフィードバックをもとに、Isaac は製造プロセスに進む前にデザインを再検討することができた。Isaac は言う。

新しいプロダクトを開発する時はいつでも、こんな寒くて寂しいデザインスタジオでやらなければならない。そこでは、商品がどうあるべきかについて一番よい方法を考えている。

TouchFire を開発していた時、ユーザテストをしたんだ。大抵の場合、一握りの人にしかユーザテストはできない。でも、Kickstarter では、何千人という人が商品開発に関与してくれる。商品開発においては全く異なるやり方だ。

コンシューマ・プロダクトを作るスタートアップにとって、新たな道筋となる

Pebble Technology の設立者 Eric Migicovsky は Kickstarter でこれまでに1000万ドルの資金調達に成功した。Kickstarter での調達額最高記録となっている。

ハードウェア企業が新しい商品を開発する時に Kickstarter を利用するメリットはあるのだが、完璧なシステムではない。

問題の一つは、プロダクトの製造に必要な費用を低く見積もってしまうことだ。あるスタートアップが、たとえ必要コストを正確に計算しても、資金調達のチャンスを逃したり、資金が全く得られなかったりすることを避けるため、必要額よりも低い目標額を設定することもあるだろう。

Pebble Technology の設立者 Eric Migicovsky は、時計1000個を作るのに十分な10万ドルの目標額を設定したと述べた(実際に集まった金額は1000万ドルを超えた)。Isaac は TouchFire 製造のために自身が設定した目標額1万ドルでは足りなかっただろうと言う(最終的に集まった20万ドルが「ちょうどだった」そうだ)。

Scott Wilson は iPod nano を腕時計に変える TikTok と Luna Tik というバンドをつくるために942,578ドルの資金を調達し、その後はお金の心配をしなくてすんだ。だが、彼もコストは低く見積もりがちと考えている。

人は Kickstarter で集まった額を見るが、私達が 2万個以上の TikTok と LunaTik を2か月以内に製造・包装し、Kickstarter の支援者に出荷した投資への見返りについては考えない。資金調達から製造・包装・発送を2ヶ月以内に実行できたのは、コンシューマ・プロダクトとしては異例の早さだ。

Kickstarter では、資金調達に成功したクリエイターに対し、目的が達成できなかった場合は集まったお金を支持者に返金するよう要請している。

だが、このようなリスクがあっても、資金調達プラットフォーム Kickstarter は、資金の問題を乗り越えて成長しようとするハードウェア企業に新たなチャンスをつくっている。Issac は言う。

私達はコンシューマ・プロダクトを作る方法という点で、非常に面白い進化をし始めたと思う。90年代初めのソフトウェア企業を思い出すよ。今では実際に形のある物が作れるようになった。それも小さなチームでだ。

【via Mashable 】 @mashable


著者紹介:サラ・ケスラー

サラ・ケスラーは、教育・政治・娯楽における技術トレンドや起業家について寄稿している。Mashable には 2010年8月より、特集ライターとして参加。

16歳のとき地元紙に雇用されたのが、記者としてのキャリアのスタートとなる。大学に通う間も、地元紙向けにフリーランスで記事を書いていた。ノースウエスタン大学では、Abroad View(海外の視点)という全米向けの国際教育誌の編集長を務め、シカゴの歴史あるスポーツマガジン Windy City Sports に寄稿し、シカゴのラジオ局 WBEZ で放送されたドキュメンタリーを共同制作していた。大学では、冤罪問題を扱う Medill Innocense Project にも参加していた。

Sierra 誌 に寄稿し、アウトドアに関して自身の興味を花開かせる機会を得た。Inc. 誌では、スタートアップに関する興味を花開かせた。

ニュースレターの購読について

毎日掲載される記事の更新情報やイベントに関する情報をお届けします!

----------[AD]----------