特報:カカオトーク、インドネシアに進出

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【原文】

人気のメッセージング・プラットフォームの一つ「カカオトーク」は、数日前 Windows Phone 版をローンチした。これによって、Android、iOS、BlackBerry、Windows Phone を含む、ほとんどのスマートフォン・プラットフォームで利用できるようになった。でも、同社から発表された興味深いニュースはそれだけではない。最近、中国の Tencent(騰訊)から資金調達し、韓国でも人気を得て、次に攻める市場を見据えているところだ。最初のターゲットとなったのは日本であり、次はインドネシアを中心とする東南アジアの国々である。

以前、WeChat(騰訊のメッセージング・アプリ、関連記事)は、インドネシアのローカル・コミュニティから注目を集めようと、ソーシャル・マーケティング戦略をしかけたことがある。カカオトークも、WeChat も、同じ騰訊の資本が入っていることになる。この市場における他のプレーヤーは、(シンガポールの)mig33 だが、彼らは Android や BlackBerry ユーザもターゲットにし始めたものの、多くはフィーチャーフォン・ユーザーだ。

DailySocialは、カカオトークの社員の一人に話を聞くことができた。なぜ、東南アジアをターゲットに選んだのかという問いに対し、この地域はニューメディア・サービスを立ち上げるのに都合がよいから、という答えが返って来た。ニューメディアに対する受入率が極めて高く、人口の多さという点でも可能性が高い。この人物は、計画を実現するために、インドネシアにカカオトークの支店を設けるのではなく、パートナーとして、現地の企業と協業していることを明らかにした。インドネシアのユーザを増やすべく、この計画は8月から年内いっぱい実施される予定だ。2013年初頭には、彼らの4つのすべてのビジネスモデルが、インドネシアに投入される見込みだ。

まず、理解すべきは、カカオトークがもはや「メッセージング・アプリ」ではない、ということだろう。世界中で5千万人が利用しており、メッセージング以上のものに進化を遂げている。韓国では、プラットフォームを支える4つのビジネスモデル(およびAPI)が展開されている。そのビジネスモデルとは、プラスカカとも広告、デジタル・アイテム、モバイル・コマース、ゲームセンターだ。ゲームセンターが最新の機能で、7月にリリースされる予定だ。

プラスカカとも広告とは、まず友人としてあるユーザのアカウントを購読し、このアカウントがイベントや情報を拡散する仕組みだ。少年アイドルの「スーパージュニア」の例で言うと、彼らが新しいプロモーションを行うたびに、そのアカウントを購読したユーザは一番にプロモーションのことを知ることができる。世界中の熱心なファンがいるスーパージュニアのような有名アーティストのおかげで、カカオトークは積極的なユーザを獲得できるわけだ。カカオトークは既に、多くのK-Popアーティストを擁する SMタウン・マネージメントと提携している。さらに、既に180を超える、プラスかかとも広告のパートナーが居るという。レストラン・チェーンの雄、マクドナルド、バーガーキング、KFC(ケンタッキー・フライド・チキン)などがパートナーリストに名前を連ねている。

デジタルアイテムは、友人と対話するのに使える、エモーティコンとステッカーからなるセットだ。LINE や WeChat で似たような機能を使ったことのあるユーザもいるだろう。カカオトークはデジタル・アーティストとコラボレートし、ユニークなエモーティコンを用意している。無料のものもあるが、多くは1セット99セントなど、少額の有料となっている。

モバイルコマースもうまくいっている。例えば、コーヒー1杯の支払いに使えるギフトクーポンを購入し、カカオトークのプラットフォーム上で支払ったとしよう。そのクーポンを友人に送ると、友人は近所のストアに行き、レジでそのクーポンを見せるだけで、コーヒーを購入することができる。韓国では驚くような話ではないが、インドネシアでは、レジ担当者が電話を中継デバイスとして取引を記録できるしくみとして紹介されるかもしれない。

最後にゲームセンター。現時点で利用可能なゲームはなく、今月中に発表される予定だ。カカオトークで提供されるのは、概ね Facebook 内のゲームのようなものとされている。LINE も、mig33 も、この機能を実装した。対戦表やリーグ上で点数を見せ合い、同じゲームを友人と競える機能だ。カカオトークは多くのゲーム開発会社と提携しており、この機能はアプリ内でのユーザ滞在時間を延ばすのに貢献するだろう。

話をインドネシアに移してみる。インドネシアをターゲットにしようと、ある動きが見て取れる。3つのビジネスプラン(ゲームセンター以外)は、インドネシアでも機能実装されるだろう。新しい地で受け入れてもらうために、カカオトークは、インドネシアのデジタル・アーティスト、ビジネスチェーン、有名人らとコラボレートするだろう。もちろん、インドネシアには多くの K-Pop ファンがいるので、K-Pop 関連のコンテンツも多く投入されるだろう。

カカオトークがインドネシアに来ることで、インドネシア人はどんなメリットを享受できるのだろう? デジタル・アーティストは、カカオトークの中で注目されるべく、自らのエモーティコンを登録できるだろう。たまたま、今日はラマダン(訳注:イスラム教の断食月。インドネシアはイスラム教国家である。)のエモーティコンが Android ユーザ向けにアップされた(おそらく、iOS ユーザもダウンロードできるようになる)。技術的な問題があり、BlackBerry 版のアプリは、エモーティコン機能をサポートしていない。

また、有名人やビジネス・チェーンも、ソーシャル・メディア上での存在感を向上させるべく、協業することになるだろう。そう、メッセージング・プラットフォームは、同時にソーシャル・メディア・プラットフォームなのだ。さらによいことに、ユーザに対して情報を拡散したり、モノを売ったりするのに向いている。チャットやゴシップを交換するだけのソーシャル・メディア・プラットフォームから、コマース機能が使えるメッセージング・プラットフォームへと乗り換えることは、論理的にも説明がつく。

私見では、大きな障害となるのは、決済システムと電話の初期設定だろう。スマートフォン上の決済は、アップルやグーグルなどのシステムオーナーを介して処理せざるを得ない。最近、クレジットカードの会員数は増えているものの、多くのインドネシア人にとってオンライン決済システムはまだ不便なものだ。インドネシアでmig33が少額決済で成功したのは、少額でギフトクーポンを購入してもらい、プラットフォーム上で電子財布として機能できるようにしたからだ。

最初の問題に関連して、インドネシアのスマートフォン・ユーザは、まだフィーチャーフォン・ユーザーほど多くない。数が伸びるまでは、ニッチな市場であり続けるだろう。スマートフォンに頼ることは賢明な選択だが、十分なユーザ数が確保できるメインストリームになるまでには時間が必要だ。もし、カカオトークがこの2つの問題を乗り越えられれば、それはインドネシアのモバイル・コマースが次の段階へ進もうとしていることを意味するに違いない。

【via Daily Social】 @dailysocial_en

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