ビッグデータがあらゆるビジネスを変えていく:データを駆使する企業事例

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【翻訳 by Conyac】 【原文】

この記事は、ゲストエディターとして、ビッグデータの処理と解析のスタートアップで、時系列やセンサーデータ用のクラウドを基盤としたエンジンに焦点を当てるBrainpageの共同ファウンダーWenzhe Zhou博士による投稿だ。同社のHadoopを基盤としたサービスは、開発者や業界パートナーに対して使いやすく拡張性と柔軟性を兼ね備えたデータベースと解析ソリューションを提供している。

世界に存在する情報は信じられない速度で成長している。2011年には一年間で1.8ゼタバイトの情報が作成された。これは、CDに置き換えると月面にまで届く量に相当する。しかし、これはまだ始まりに過ぎない。ソーシャルネットワークや「ツイート」、モバイル端末、パブリックと個人のセンサー等、多様化したデバイスをソースとした情報は膨れ上がり、集められるデータは毎年50%ずつ伸びると予測されている。

多くのソースから得られるデータからあらゆる可能性がみえてくる。例えば、毎日つぶやかれる12TB分のツイートから商品をもっと正確にマーケティングする事ができる。何千、何万もの賢いメーターの読みを解析してエネルギー消費量を分析し節約につなげることも可能になる。ビジネスのパフォーマンスデータに注目して、失敗の原因を突き止め利益を増やす事もできるだろう。

逆説的なのは、この分野は今や「ビッグデータ」と呼ばれているが、本当の価値はミクロや個人をいかに抽出するかにある点だ。以前、お店のプロモーションはある程度の規模をターゲットにするしか無かったのが、今では個人に向けてそれができる。電力会社もネットワークを地域別にしか区別する事ができなかったが、今では回線ごとに把握できる。病気を人口でしか分析する事ができなかった医者も、今では個人の遺伝子レベルでそれが可能だ。他にも事例はたくさんある。

この記事では、ビジネスが顧客をより理解する事に関係する事から、マクロからミクロへの価値の移りに焦点を当てていく。どちらもビッグデータをさらに理解するのに必要な事だが、多くの企業はそのアドバンテージを取ることに失敗している。Gartnerの分析によると、2015年までに新しいデータのアドバンテージを取った企業はその競合を20%しのぐという。

果たして「顧客を理解する」とはどういう事なのだろうか?ビジネスにおいて、顧客の内情を知る事は3通りで役に立つ。既存の顧客ロイヤリティの獲得、新規顧客の獲得、そして新しい商品やビジネルモデルの構築だ。

顧客の維持

今年の始め、男性が地元のTargetに怒鳴り込んだ。(Targetは大手の「big box(大型店舗)」小売店。アメリカのWalMartのような存在だ)

「あり得ない!」男性は店の責任者に叫んだ。「17歳の娘に赤ちゃん用のおむつやベビーカーのクーポンを送るとは何事だ!娘はまだ17歳なんだぞ!」店の責任者は会社のビッグデータのシステムの事など知らず、間違いであったと説明し謝罪した。1ヶ月後、怒っていた父親から謝罪の電話がかかってきた。実は間違っていたのは彼の方でTargetが正しかったのだ。彼の娘は妊娠していた。

この話から始めよう。顧客の維持と販売促進の実例だ。顧客獲得の方が顧客維持よりも注目され費用も集まるが、80/20の法則は無視できない。企業の将来の利益の80%は、20%の既存顧客からもたらされる。既存顧客の消費のパターン(クラブカードの利用や銀行のカードを使用する等)を発掘し、賢い小売店はマーケティングのキャンペーン、サプライチェーン、販売促進を最適化する事により効率を上げ大きな成果に結びつけている。

より高度な統計方法を用いる事により、賢い小売店は以前に購入した商品から将来何を買うかを予測するモデルを構築している。個人単位の顧客が将来何を買いたいかを知る事により、競合他社がターゲットを絞り込んだクーポンやプロモーションを打っても、自社で商品を買ってもらうよう気を引く事ができる。先ほどの事例の場合、Targetは妊娠する前と、した後での購買行動の変化に相互関係を見いだした。もちろん、新しい親がTargetで赤ちゃん用の商品を買えば、その顧客をその後何年も確保したと言えるだろう。少量の分析とターゲティングは、何年分もの顧客ロイヤリティを意味する。

もう一つ、Tescoの事例を挙げよう。イギリスのスーパーマーケットで世界で2番目に大きい小売店(Wal-martの次)は、顧客を細分化し彼らの購買パターンを観察する事によって大きな結果を出した。Tescoのクラブカードのデータを利用し、顧客がどんな「タイプ」であるかを理解する。(「ファストフード好き、学校に通っている子供がいる家族、等)細分化はマーケティングの効率を高める。郵便やeメールでのプロモーションは顧客の好みを反映し、店内でのプロモーションは特定の時間に売り場にいるかに照準を合わせることができ、地域の広告も更にターゲットを絞り込める。この購買パターン認識のおかげでTescoは年間3億5千万ユーロものマーケティングキャンペーン費を浮かせる事ができた。

もちろん、Amazonを忘れてはいけない。この巨大オンライン小売り企業ほど、自社のデータ利用で有名な所は無いかもしれない。Amazonで買い物した事がある人は「この商品Xを買った顧客は、商品Yも買っています」機能について知っているだろう。このシンプルな機能はただ便利なだけでなくもたらすものが非常に大きい。そして非常に複雑な仕組みでもある。Amazonは単純に購買の相互関係を見ているだけではなく、顧客のサイト上の行動を全て追跡している。どのくらいページを見ていたか、レビューを見ているかといった具合だ。彼らはシンプルなwin-winの関係を理解している。おすすめした商品が良ければ、顧客は喜びAmazonも利益を得られる。

データを黄金に換えるこの機能がAmazonを従来の購買モデルから脱却させた。オンラインとオフラインの両方で購買体験を提供するAmazonのモバイルアプリは、個人単位の顧客の好みを理解するために役立っている。Kindle FireやSilkブラウザもAmazonのサーバーにユーザの趣向データを持ってくる。Amazonのような賢い企業にとって、より多くのデータはより多くの利益をもたらすのだ。

顧客の獲得

企業はただ顧客の保持や販売促進に利用しているのではなく、新規の顧客の獲得にも利用している。「ソーシャル」は新規顧客を見つけるのに全く新しいフィールドを発掘し、またビッグデータのテクノロジーはデジタル広告の影響を変えている。以下にいくつか事例を挙げる。

ソーシャルな投稿で発掘:賢い銀行や航空会社はTwitterのツイートを取り込んで、新しい銀行や航空券を探す潜在的な顧客を認識している。これらの企業は、自然な言語プロセシングを利用して「誰か良い住宅ローン知らない?」や「ニューヨークまで一番安い航空便は?」等のツイートを探している。親切でターゲットを絞った返答をする事により、ユーザの顧客へのコンバージョン上昇と顧客満足につなげている。

広告のリターゲティング:良いセールスマンは粘り強さと「先導に従う」事が鍵だと言う。しかし、従来の宣伝とは当たりか外れかのいずれかだった。ウェブサイト、テレビ、看板等の広告とターゲティング広告(検索エンジンマーケティング等)の一つや二つ打てば、上手くいくと思われていた。最新の広告の計量を見ると、いずれの方法も良い顧客へのコンバージョンであるとは言えない。

しかし、新しいデータテクノロジーを駆使し、アメリカのChangoや中国のUniqlickはこれをデジタルの側面から変えている。ユーザが検索した内容や訪れたサイトから、どのネットユーザが広告主が提示する価値に反応しやすいかを理解し、反応しそうな人にだけ続けてターゲット広告を届ける事ができる。GoogleのAdWords(広告検索)のようだが、検索結果ページだけでなくインターネット上の全てが含まれる。意味のあるバナーや検索要らずの広告は、広告主にとっては高いコンバージョンと広告を提供するウェブ上のスペースからより多くの価値が創造される。

新しい商品とビジネスモデルの創造

データは最適化の機会を大量に作るだけでなく、新しいビジネスの実践の場を提供している。エネルギー分野のOpower、Software-as-a-Service (サービス型ソフトウェア)企業では、電力効率の向上にデータを使用している。公益事業社とパートナーを組み、家庭の電力料金を分析し、近隣住民の電力使用量と比較したレポートとデータに基づいた電力の節約方法を提供。Opowerのサービスはアメリカで100万以上の世帯に行き渡り、アメリカの電力消費者を年間500米ドルほどの節約に貢献していると予想されている。

ヘルスケアの分野では、サンフランシスコに拠点を置くSeeChangeがクライアント個人の健康データを理解する事でより良い健康保険の計画を立てる方法を提案している。同社は個人の健康の記録から集めた豊富なデータを分析。健康状態のデータベースと薬局のデータから、カスタマイズされたコンプライアンスプログラムによってカスタマイズし慢性的な患者を特定する。また、患者が臨床の目標を達成するのに必要な健康活動を推進させるためのインセンティブを現金で提供する。経過はデータ統計エンジンがモニタリングしている。SeeChangeは2から200人までを雇用するSMEsに対しサービスを提供する。

小売りの分野では、顧客維持のマーケティングプラットフォームであるRetention Scienceがある。eコマースビジネスに対して、顧客が拡散しないよう、またサービスの再利用を促し、コスト効率の良い能動的なデータ解析ツールを提供する。彼らのCustomer Profiling Engine(顧客プロファイリングエンジン)はアルゴリズムや統計モデルを利用し、顧客の維持を最適化する戦略を構築する学習型のエンジンである。最新の顧客行動の予測を立てるため統計はリアルタイムで計測され、同時に顧客の独自の特長に応じて動的にオファーを作成する。この企業は、1300万米ドルをBaroda Ventures, Mohr Davidow Ventures, Double M Partners 等を含む投資家から資金を集めた。

既存の機会を最適化する場合も全く新しい機会を探す場合においても、ビッグデータやニューデータテクノロジーは個人に向けたターゲティングという今までにない経験の機会を創出している。ユビキタス情報テクノロジーが全てのビジネスにとって近い存在になりつつある21世紀において、全てのビジネスはデータを創出しており、その全てを集める事に注力するべきかもしれない。勝者と敗者の分かれ目は、それらをいかに効率的に保管しデータの中から黄金を発掘できるかにかかっている。

【via Technode】 @technodechina

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