新しい製品をつくり企業を成長させていく。企業にとって、少ないリソースをいかに効率的に使って市場で戦うか、そのためにどういうニッチな分野を突いていくかが重要になってくる。
ARの製品やソーシャルゲームなど、業界に先立って製品を常に作り続けている芸者東京エンターテインメント。競合が少ない分野に切り込み、市場を作りあげる行動力と企画力がある企業だ。代表取締役の田中泰生氏は、ベンチャーが戦うときに意識することはなにか、いかにして企業を成長させていくか、ということを経験している人物である。
田中氏が「MOVIDA SCHOOL」で、起業家に向けて語った、企業を成長させるために必要な考えとそのステップについてまとめた。
2年で自社製品をつくりあげる
起業をするときに最初に考えるべきは、成長ステップを視野にいれていくことだ。経営をしていくために下請けも必要だが、それだけだと起業した意味がない。そのため、2年という期間を一つのステップとして考えていく。
最初の2年はなにかしらの製品をだし、自社としての名乗りを上げる。ベンチャーは業界としても無名な存在。だからこそ、自社として世の中に伝えられるものをだす。
そして、次の2年で特定の分野で日本のトップをとる。そして、次のステップで、日本でトップをとったビジネスを成長させ儲けがでる仕組みをつくっていく。この3つのステップのそれぞれの年収を、1億、10億、100億と意識することで、企業としての立ち位置を確認することができる。
半端な製品ではなく、完成品をつくる
多くの起業家は、「作りたいものを作る」という考えを持ちがちだが、そうではなく「作れるものを作る」という意識をすべきだ。自分たちがいまできる「完成品」を作り、その製品で戦っていくことが大事だ。
ベンチャーにとって、自社の製品は武器。だからこそ、未完成な武器を持つよりも、確実な武器を手にビジネスを進めていく。
制約条件の中で考えていく
製品をつくるときに考えるべきは、自社の現在の制約条件が何かを考えることだ。人、スキル、お金といった制約条件の中で戦う条件を整えていく。それによって完成品の形が見えてくる。
世の中には、自分たちよりも大きな会社、大きな資本を持っている企業は多い。そうした企業と争わないといけないからこそ、自分たちが持てる武器、自分たちが戦える分野を見つけ出すことが大事になってくる。
完成品の武器のあてどころを考える
制約条件の中でつくりあげる完成品をもとに、どこにその武器を使えば効果的に成果をあげられるかを考える。既存の大手や既に成熟している分野に進んでも返り討ちにあってしまう。そのために、世の中にないアイディアで戦うか、競合はいるが自分が勝てそうなニッチな分野を探して突いていく。
ニッチな分野も、次第に大手の参入もしてくるが儲かる見込みが少ないとあまりリソースを割いてこない。そこを見極め、大手と対等に戦える分野を攻めることで勝てるチャンスが出てくる。
事例として、起業して二年目の2008年に電脳フィギュアを自社製品として作り上げた。それは、ARを使ってキャラが動くものだったが、当時はまだARすら知らない世の中、かつ、大手もいない分野だった。だからこそ、自分たちがもてるリソースの中であっても完成品を作り上げたことで、注目を浴び、自社の製品として名乗りを上げることができた。
その際も、宣伝するためにどうすればいいかを考えたときに、いかにテレビに取り上げられるかということも計算していた。そのために、製品発表の場所なども工夫をした。そうすることで、自社製品の成功率を高めることができる。
新しい制約条件のもとにゼロベースで自社製品をつくる
製品を出し、それが成功すると以前の制約条件とは違うステージの制約条件になっている、ということを意識すべきだ。お金、知名度などがある中で、成功した製品に縛られることなく、一度リセットして次に自社の製品として戦える分野を考える。新しい制約条件、自社製品としての完成品、自社製品が戦えるニッチな分野を日々探し、邁進していくことで、企業は成長していく。
最終局面を考えて行動する
自社の製品で戦う市場を考えるとき、ニッチな分野を突くことを意識すると同時に、大手が入ってきてその業界が成熟したときの最終局面をどこまで俯瞰して考えられるかが大事だ。
そのためには、将棋的な思考の中で局面として詰んだ形をどこまで意識できるか。多くのベンチャーは、目の前の歩をとって喜んでいる人が多い。しかし、ビジネスは行ったり来たりをしながら業界が成長し局面が生まれる。そして、最終局面で勝った人が勝ちな世界がビジネス。だからこそ、自社が生き残り、勝ち上がっている局面ができあがることを目指しながら行動することだ。
事業の3割を割いて自社製品をつくっていく
どんなに優秀な経営者であっても、リリースするサービスすべてが成功するとは限らない。だからこそ、手持ちのリソースの中で自社製品をつくるときは3割以上のリソースを割かないことだ。資金でいえば1億なら3000万、10億なら3億程度でできることを考える。
それによって、チャレンジのためのチャンスを3回は用意することができる。一度失敗しても、事業として崩壊することもなく、その失敗をもとに次の製品を開発する余裕もでき、また大きな教訓も得られる。そうした、自社としてのそれぞれの制約条件を考えながら、継続的に経営を進めていくことを常に忘れてはいけない。
【U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。
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