女心をとらえる、女性ゲームのスタートアップ「チェリッツ(체리츠)」

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【翻訳 by Conyac】【原文】

女性をターゲットにし、女性開発者が女同士で企画したゲームがリリースされ注目を集めている。女性向けゲーム開発している企業、チェリッツ(체리츠)の「ダンデライオン(덴더라이언):君に吹く風」がそれだ。こうした女性向けゲームは、女性のゲーム消費が増えるに連れ、ブルーオーシャン(競合の居ない未開拓市場)として注目されている。

特に昨年以降、女性をターゲットとする戦略がスマホゲームのブームと重なり、注目を浴び始めた。チェリッツの女性向けゲーム「ダンデライオン」を通じて、イ・スジン(이수진)代表は、現在のIT産業のブルー・オーシャン事情について語った。

自信あふれる創業挑戦記

「モバイル、オープン・ソース、ソーシャル・ネットワーク、鉄道会社など、会社の大小を選ばず仕事をしてきました。いろいろなところで働きながら、多様な分野でたくさんの経験を積みました。創業当初、創業への不安はまったくありませんでした。いろんな会社で多くのプロジェクトをやってみて、創業出来るという自信が沸いたから。」

イ・スジン代表は学校を卒業し、海外に出ていろんな人たちと出合い、いろんな実務経験を積みながら努力してきたので、創業に対する不安を乗り越えることができた。そういった経験が創業への自信につながり、韓国国内に人脈がなくても、自信を持って創業することができた。またいろんな分野の仕事をしてきたので、自分でも気づかないうちに、複合的なスキルをもった人材になり、新しく挑戦するゲーム分野でも活躍ができたのではないだろうか。

女性のためのゲーム会社

ゲームユーザの多くが男性で、女性のためのゲームは見つけにくい。それくらい、女性とゲームとの間には、特別な関係性を見出しにくい。チェリッツが女性のためのゲーム開発企業というスローガンを持った理由ときっかけを聞いてみたい。

おおむね、ゲームは男性がするものと考えがちだ。実際にゲームを楽しむ人達も、ゲーム開発会社がターゲットをする対象も、ほとんど男性だ。しかし、チェリッツはどうして女性のためのゲームを開発しようと思ったのか。

「実は私はゲームがすごく好き。開発者出身だから一人で経営できて一番楽しく作れるのは何があるかなと考えたら「女性のためのゲームを作ろう」という考えが出てきました。たくさんの人力を必要とすることもないし、アイデアや企画、キャラクターを求められるので、まず「面白い」と思った。」

創業時、開発者を見つけられなくて困っている方が大勢いると聞く。しかし、イ・スジン代表は自ら開発し、もう一人の開発者はアメリカで一緒に学校に通っていた同期の一人だという。そして、他の人材はみんな広告で集めた。気が合う開発者と一緒に仕事出来たということも幸運ではないだろうか。また、多くのゲームをしながら市場を分析した結果、女性向きゲームの市場のニッチ、ニーズを見つけることが出来た。

イ・スジン代表は創業時、苦労して開発者を探すより、自分で直接開発する方を選んだ。創業後、アメリカから学校に通っていたとき同期も合流した。ある程度会社が大きくなってからは広告を通じ、開発者を迎え入れることが出来た。何もない状態から開発者を説得し、一緒に創業しようとしたら、果たして開発者を獲得できただろうか。イ・スジン代表に立派な開発者たちが集まってきたのは、イ・スジン代表の実行力があったからである。

また、多くの女性向けゲームを分析した結果、このゲームの市場はまだ〝空いている〟(=ブルーオーシャン)と確信するようになったという。

トレンドとは逆行したPCゲーム

ゲーム開発者たちが皆、モバイルゲームの成長に可能性を見出してモバイル市場へと参入している時、トレンドとは逆行したPCゲームを選んだことに少し不安感を抱いているのではないかと聞いたところ、むしろこのような状況がより大きな機会をもたらすという信念を持っていた。

「韓国はモバイルゲーム、3Dゲームが強い。そのようなゲームの共通点は、システムが非常に優れているというところです。システムが優れているほど消耗するスピードも早い。ユーザに飽きさせないために、システムは中毒的なものでなければいけない。始めから終わりまでストーリー性があって、その中に魅力的なキャラクターが居れば、ゲームは終わっても余韻が残ります。PCゲームは、あらゆる分野をまとめた総合芸術のようなものです。中毒的なゲームでなく、何かを伝えられるゲームでなければならないと思う。一回で終わらず、ストーリーの延長も可能だから。」

「ダンデライオン」は女性向けの恋愛シミュレーションだ。簡単に言うと、自分がヒロインとなり恋愛話を作っていくゲームである。ゲームには恋愛漫画のように、魅力あふれる5人の男性が現れる。

国内の声優が声を録音しており、キャラクターと相互作用して、多用なストーリーを引き出す。これら全てのことが複合的に作用して、ひとつの総合芸術作品を作り上げている。

8月に売り出された「ダンデライオン」ヘの熱い反応

ゲーム産業は大衆文化や社会問題にも敏感に反応し、セールスには消費者の反応が直接的に早く現れる。「テンドライオン」の売り出された後の反応がとても気になった。

「反応が良くてびっくりしました。韓国には、女性ゲームの企画者があまりいない。私は女性ですから、女性が欲しがるものが何かがよくわかります。ゲーム自体がそれほど売れたわけではないけど、ゲームを通じて反応が得られたし、肯定的な反応がほとんどで非常に驚きました。女性のためのゲームでしたので、実際にゲームをプレーした95%以上が女性でした。」

刺激的なゲームに反応する男性ユーザとは違い、繊細さを追求する女性ユーザ達。女性はストーリーの進行や、システムに求める特性が男性とは異なるという。男性は結果に重点を置き、結果をかけて競争することを好む。しかし、女性は結果をかけて競争するより、どのように進めるかに焦点を当ててプロセスを重要視する。そのような特性が「ダンデライオン」の制作過程ににじみ出ている。

また、女性は各々異なる趣向を持っており、多様なキャラクターを通して、恋愛の「代理満足」を感じているようだ。女性が望む多様な男性像がキャラクターに反映されていたため、ユーザの反応が良かったのではないだろうか。

北米リリースの後、中国・日本にも進出する予定

「ダンデライオン」は韓国でのリリースに続いて、英語・日本語・中国語に翻訳にされ、全世界にサービス提供される予定だ。

「アメリカやカナダに輸出する予定で、英語への翻訳作業をしています。最初にゲームをデザインする時から、グローバル展開しやすいように作業を進めてきました。アメリカでの販売開始後、中国と日本にも輸出するつもりです。」

チェリッツのホームページを英語でデザインしているからか、アメリカからメールや連絡が届くという。韓国のITベンチャー企業は韓国国内での成功に満足しないで、継続的に海外市場への進出を試すべきだ。

「前に仕事していた、海外のモバイル関連企業から支援をしてもらった。何回も調査をし、プレゼンテーションを重ね、説得しました。女性の感性を男性の投資家に理解してもらうのが難しかった。例えば、ゲームの音響のために、ギターやピアノの演奏が必要だと説明したら、コンピュータ合成でできるではないかと理解してもらえませんでした。それについて説明をしたり、キャラクター間の相互作用が女性に大きなアピールポイントとなりました。映像だけでなく、音響も非常に大事だと説得しました。」

「ニュータイプという雑誌に広告を出し、バナー広告も出しました。私たちのジャンルが独特だったため、アニメ好きを中心に広まっていったのが一番大きな効果を生んだと思います。特にTwitter、Facebook、NAVERのブログ・コミュニティを通じて噂が広められました。」

広告でどれだけ多くの人と出会えるか悩むのではなく、本質にフォーカスを合わせるとより大きい広告効果が得られる。

代表と社員の全員が女性

ゲームを作る会社は常に面白く、楽しいという先入観を持つが、チェリッツの雰囲気はどうだろう。

「チーム員のみんなが女性なので、とても自由で几帳面です。特にお酒を飲む会食はしません。お酒を飲むと業務にも差し支えるので。会食をするならランチタイムに一緒にランチをするくらい。」

チェリッツはフレックスタイム制を採用した。自分から目標意識を持って仕事が出来るようにしたのである。韓国では垂直構造で仕事をするが、チェリッツでは水平構造で仕事をするよう指示している。ゲームは創造力を要するため、創造力の余地を残しておかなければならないからだ。本人を信じて任せるのだ。概ねゲームの開発は2週間単位で行われるが、忙しい時には1週間単位で調整しながら開発を行うという。

女性の社会進出が活発になり、女性代表の割合も増え続けている。しかし、多くのベンチャー事業主の同様、イ・スジン代表もまたビジネスを進めながら経験する苦難を避けられなかったはずだ。

「男性と接するときは、少し大変です。酒を飲みながら取引が成立したりもするのですが、私は自分が女性なので、男性と人脈を作るのが大変でした。対極的に、女性のCEOであることの良い点は、注目を受けるということです。周囲から多くの人が訪問してくれました。関心を受けるということはプラス要因です。他社よりも、視線を集めることになります。」

韓国には女性開発者があまりいないという。しかし映画産業、ドラマ、小説を見ると、大勢の女監督、作家、小説家たちが成功しており、彼女たちを見て、創業への意思が沸き、多くの女性が挑戦できたと思う、と話した。また、多くの女性がゲーム開発の創業に挑戦してほしいとはなした。

「カジュアルで、居心地がよい環境と穏やかな心が持てることが一番大事だと思います。快適さが哲学と言えば、そういうことでしょう。」

インタービュの間、ずっと暖かさを見せてくれたイ・スジン代表の哲学が現れた回答だった。

「カジュアルでライトな、女性のためのモバイルゲームの仕事を続けたいです。関連商品を数多く多く作り出したい。裏話も企画しています。次回作も準備していて、モバイルとPC用を考えています。小説やアニメーションの要素も含まれると思います。」

もはや、IT業界で女性のリーダーを見つけることはそんなに難しいことではない。彼女たちは、男性に不足しがちな温かい配慮と柔軟なリーダーシップを通じ、企業をより堅実に経営している。チェリッツのイ・スジン代表は、最後に温かい言葉で、後進の女性起業家達に希望を与えている。

「女性だから傷つくことも多いし、負担に感じることが多いと思います。でも、そうやって、強くなればいいと思います。男性と大きな違いがあると考えず、女性だからこそ得意な部分を強みとして、仕事を推し進めて行ければよいでしょう。そのためには、創造性を発揮できるよう努力が必要です。女性として成功できる仕事を見つけて、たくさん挑戦すればいいでしょう。」

成功に固執したり、作業や宣伝に没頭したりするのではなく、温かい経営哲学を持ち、落ち着いてゆっくり成功に近づいていく彼女。今後リリースされるチェリッツの新しいゲームと、次回作の成功に期待したい。

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

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