50万ユーザーを抱えるある学生起業家の苦悩と挑戦

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50万ユーザー突破

「もうすぐ50万人を超えそうです。ようやく話題が出来ました」ーー2012年の暮れ、私はある起業家の話に耳を傾けていた。彼の名前は喜洋洋。異なる言語圏のユーザーがソーシャルに文章を添削できる語学学習プラットフォーム「Lang-8」を運営するLang8の代表取締役だ。

彼の言った通り、2013年に入ってこのコミュニティは51万人に到達する。現在のアクティブ率は10%程、190の国から利用されていて、ユーザーの7割は日本以外、ビジネスの現場で働いているユーザーが多いのだという。

喜氏がLang-8を始めたのは京都大学に在学中、彼が23歳、2007年の時のこと。中国生まれの彼が上海に留学中、友人と交わした日記の添削がヒントになってこの語学学習プラットフォームを思いついた。

「会話だといちいち直してくれないんです。最初は中国語で3行しか書けなかった日記が1年後には2ページになってました」。帰国後、彼は友人とLang-8を立上げる。

学生起業家が6年間で学んだこと

2007年から約6年かかっての50万ユーザー獲得はお世辞にも成長が早いとは言えないだろう。その点を聞いてみると、Lang-8の実質の成長はここ1年でそれまでは準備に時間がかかったのだと、これまでの道のりを話してくれた。

学生起業家としてキャリアをスタートさせ、まず最初にやったのはやはり受託開発だったそうだ。サービスで売上を付けるためには相応に成長させる必要がある。そこまでの時間を彼らはサイト制作などで繋いでいたという。

ただ、サービス開始から2年程経過したころ、喜氏は当時の技術者と仲違いを経験する。突如として取り残された喜氏は、自分が触ることすらできない15台のサーバーに不安を覚えつつ「もう人任せにはできない」とある決断をした。それがプログラミングの本格的な勉強だ。ここから約2年に渡り、知人がやっている会社にインターンとして参加するなどして開発のノウハウを学んだそうだ。

Lang-8がユーザー数を伸ばした時期と、彼が成長した期間が重なっているのが興味深かった。

資金調達の壁

彼が今直面しているのが次の成長への手がかりとなる資金調達の壁だ。Lang-8は2009年にネットエイジの西川潔氏など4人の個人投資家から約1000万円のエンジェル投資を受けている。次の調達をするためには、ここからの大きな成長を証明しなければならない。

そしてその鍵となるのがスマートフォンへの対応だ。競合となるbusuuはiPhoneアプリで一気に成長し、1900万人というユーザーを獲得している。一方Lang-8はユーザー数では大きく及ばないものの、ソーシャルネットワークとしての立ち位置は独特で、ここにスマートフォン対応が加われば十分に対抗できると考えているのだそうだ。

またもう一つ重要なポイントがマネタイズだ。喜氏はサービスの中心となる添削をうまくコントロールするアイデアをいくつか教えてくれた。例えばユーザー同士であれば添削してくれるかどうかはユーザー次第ということになってしまう。英語の添削で6割、他の言語で8割は添削してくれるというのだが、これを有料で確実に添削する、というものだ。シンプルな方法だがユーザーがそれを求めている以上、堅実な方法ではないだろうか。

やり続ける

学生起業に始まって約6年、50万人というコミュニティを育てた喜氏の歩んだ道のりは決して派手ではなく、どちらかというと地味なものだろう。成長スピードも、近年大きく爆発しているソーシャルゲームやチャットに比較すれば、投資家にとって魅力に欠ける部分もあるかもしれない。

ユーザー獲得の推移をみても、途中いくらでも諦めておかしくない時期があったはずだ。喜氏は「可能性を感じてるんです。だからやり続けられるんです」と粘り強くサービスを続ける理由をこう語る。またそんな彼を気に入って、現在数人の起業家がメンターとしてサポートしており、メンバーもこれから数人に増える予定なのだという。

可能性を信じてやり続けるーーこのシンプルな意識の先に、サービスの大きな成長が待っていることを期待したい。

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