メディア化するECが変える「発見」と「体験」

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2013.2.22

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「10万店舗を超えたときに面白いことが起こると思うんです」ーーある会食でBASE代表取締役の鶴岡裕太氏と家入一真氏にたまたま出会い、最近の状況を聞いたらこんなことを話してくれた。

リリースして約3カ月、勢いはそのままに2月20日現在の店舗数は1万5000店舗を超えたそうだ。毎月5,000店舗を積み重ねるとして、この「面白いこと」は17カ月後に起こることになる。

ここ数カ月だろうか、ECのような、ソーシャルネットワークのような、それでいてメディアのような形態をいくつか複合したサービスが好調だという話を耳にする機会が増えた。ビジネスモデルもマーケティングやシステム課金、ECの手数料やアフィエイトなど様々で、これも複合している場合が多い。

海外では、EtsyやFab、Fancyといったマーケットプレースぽいもの、ソーシャルネットワーク上で公開したコンテンツに課金ができるPheedも一時期少し話題になったし、ECではないけれど送客機関としてのPinterestやTumblrは華麗なコンテンツ製造装置として大きくユーザーを獲得した。

国内でも大型の調達をしたiQONや、スマートフォンとマーケットプレースの複合的なフリルは注目されているし、前述のBASEやStores.jpなども単純なショッピングカートとは少し雰囲気が違う。何よりこれだけサービスが溢れる中、彼らが支持を集めて成長している事実は注目すべきだろう。

一見すると多種多様なカテゴリのようだが、私はこれらのサービスにある共通点があるのではと考えるようになった。それが「発見」と「体験」に関するものだ。そのことについて具体的なサービスを挙げて考察してみた。

型番商品「以外」の発見方法ーーMONOCOの「コンシェルジュ」的発想

Fabが伸びている。総額で1億7,100万ドルを調達し、TechCrunchが昨年6月にCEOのJason Goldbergへインタビューした内容をみると、2012年の販売商品点数は180万点予想、売上は1億4000万ドルを目標にしているのだという。

そして日本国内で同様の手法を展開するのが、MONOCOを運営するフラッタースケープ代表取締役の柿山丈博氏だ。

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MONOCOはFab同様、刺激的な商品を毎日「イベント」という手法で販売する。柿山氏みずから足を運んで交渉し、見つけてきた数百人のデザイナーからもたらされる商品は、大量生産の既製品ではない。しかしながら一品物のような敷居の高さもない、丁度いいポイントを狙っている。Fabと手法は同じでも商品は国内デザイナーのテイストが生きたものになっている。

彼らはこの商品をコンテンツにまとめ、クローズド会員に向けてメールやサイトを通じて毎日「お勧め」する。

世の中は物にあふれている。「突き刺さる位にエッジが立ってなければ勝てない」ーーそう語る柿山氏が重要なポイントと考えるのがバイヤーの存在だ。ほぼ外国人で組織されたMONOCOのメンバーは毎日ヘッドホンで大音量をかけながら、自分がイケてると信じる商品をイベントに仕上げ、クローズドの会員に向けて販売する。現在は毎日6〜7イベントを開催し、常時500〜1000点の商品がサイトに並ぶようになった。

柿山氏は彼らのことを「コンシェルジュ」的な存在とみる。ただ物を探してきて整理してまとめる人ではなく、自信を持ってお勧めする人。結果、彼らの売上は順調に成長し、1日に100万円以上を売上げる日も出てきた。

ファッションは文字では探せないーーiQONのファッションディスカバリー

iQONを公開直後に見たとき、私は女性誌を思い浮かべてそれに関する質問ーー例えばiPadに対応させるのかとか、女性誌のマーケットを狙うのかとかーーそういう話をした覚えがある。そして今、彼らが提供するiPhoneアプリは雑誌の体験性を「再現」していると思っている。

パラパラと女性誌(私は男性なので男性誌だが)をめくった時に発見できる体験や感動。iQONにはPC版に小さなキーワード検索窓がついているが、スマートフォンアプリには見当たらない。あくまでイメージをタッチすることで自然と絞り込みができるようなフローになっている。

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雑誌の再開発が電子書籍を示す場合もあるが、本当の意味で「雑誌の体験性」を再現しているのは、このiQONのような「イメージによる発見」を実現しているサービスだと思う。そしてさらにスマートフォンというモバイル環境の制約も大いに考慮すべきだろう。文字よりもタッチするだけでイメージと出会える世界観の方が圧倒的に有利だからだ。

ここから導線を貼った店舗では月間で2000万円を売り上げた店も出てきているというから、おそらくここでの偶然の出会いはより雑誌のそれに近づいているのだろう。しかも雑誌をみて、店舗に足を運んで、というのではない。その場で買ってしまうのだ。文字で検索して価格を比較して、店舗で手にとってネットで買う。そんな導線設計もよく語られていたが、ここの流れはそうではない。きわめて直感的な動き方だ。

そういう視点で周りを見渡すと、文字で検索できない商品はごまんとある。ファッションだけでない、イメージからものを見つけて(イメージ検索ではない)自分の趣味にあった物との出会いを作り出す。ここには大きなビジネスチャンスがまだまだ潜んでいると思っていいだろう。

BASEが売っているものは商品ではなく「体験」

現在、楽天に出店している店舗数は約3万9000店舗(※1)、ショッピングカート大手のカラーミーショップを導入している店舗は3万6800店舗(※2)だという。前述の通り、昨年11月末に立上がったBASEは1万5000店舗にまで伸びている。しかしこの比較は正しいだろうか。

BASEというサービスをどうみるか、色んな意見があって面白い。安い(というかタダなんだけど)ショッピングカートという人もいるし、ホームページ作成サービスの亜流のような捉え方、Gumroadのようなコンテンツ指向もあるし、Etsyのようなマーケットプレースかもという話もある。

私はTumblrに近いと思っている。楽天やショッピングカートとの比較に違和感はあるけど、Tumblrのようなプラットフォームと比較すればあまりおかしく感じない。なぜか。彼らが作っているのがショッピングページというよりはコンテンツに近いからだ。彼らは同じくポータルを持たない。

以前私はこのような記事を書いた。彼らに近しい友人が「エビストラップ」や「自画像」を販売している。ひとつは手渡しで、ひとつは売ってるにも関わらず、ダウンロードが可能だった。真面目に文章で書くのもアレだが、このことに関連して家入氏が「モノというネタを通じてコミュニケーションを楽しんでいる」と話していたのが印象的だった。

彼らはポータルを持っていないので、BASEで売っている商品を探すことは出来ない。探す必要がないからだ。全く文脈を知らない人がいきなり似顔絵を出されても訳が分からないし、購入なんてしないだろう。あくまで購入という行為は販売者と近い関係にある人から広がった「輪」に存在する。

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そうやって小さい輪から口コミで広がり、例えばこの「自分の名前を入れた和歌を作ってくれる」ショップは数十件の注文が入って現在注文を止めているそうだし、「月間で数百万を売上げるショップも出てきている」(鶴岡氏)という結果につながっている。

友人のTumblrを眺めているとたまに感動的なモノに出会うことがある。コメントをしたりリブログしたりリアクションする。BASEはこの体験の上に「買える」というアクションが追加されたものではないだろうか。

ーーーこれらのサービスは文字で商品を検索させ、値段という数字で比較をさせない。イメージを駆使し、自分の価値観を人に勧める。モノによるコミュニケーション、買ったことへの話題づくりという体験を付加価値にビジネスしようとしている。このような「メディア化するEC」サービスはこれからも出てくるのではないだろうか。

※1:※2012年度実績 出店店舗数 約39,000店舗
※2:導入店舗数3万6,800店舗。国内主要ショッピングカートASPサービス中首位。(2012年3月末時点「主要ショッピングカート利用状況調査」)
出典:(株)日本流通産業新聞社「日本ネット経済新聞2012年5月24日号」/カラーミーショップサイトより

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