スタートアップという働き方を選択した私が、今人生で最も幸せだと感じている理由

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最近経験したいくつかの出来事から、筆者はこの記事を書くことにした。国内の大学を卒業するという人生の節目に差し掛かっている友人たち。就職・仕事ということが、現実の問題として浮上した。この問題は先延ばしにできるようなものではない。

友人が就職の面接や大きな多国籍企業で望んだ仕事に就けるかと悩んでいるのを見て、ふと疑問が浮かんだ。「なんで自分たちはこんなことをしているんだろう?」「企業は大きいほどいい、という時代は終わっていないのか?」「自分たちは個性を持って育った世代じゃなかったのか?」「なぜストイックな文化を持つ巨大な企業に自ら就職しようとしているのか?」と。

これが揺るぎない事実だ。スタートアップで働きたいと思うハーバード大学の卒業生は13%にも満たない。言うまでもないが、アジアではこの数字はさらに少なくなるだろう。私はかつて、この87%の中の一人であり、多国籍企業数社で働いたことがある。多国籍企業で働くことがすべての人にとって良いことではないと、はっきり言うことができる。確かなことは、私にとってはそうではなかったということだ。

変化が遅くなる

1万人以上の従業員を抱える組織では変化が遅い。仕事のほとんどは前任者から引き継ついだプロセスを中心に回っており、イノベーションは研究部門で行われているものに限られている。企業内起業家などというものはおとぎ話のようなものだ。そんなものは存在しない。もちろんすべての企業がそうだというわけではないのだが。

私は今でもGoogleで働くことを夢見ているが、ほとんどの会社生活が私の以前までの経験と同じようなものだろうと確信を持って言うことができる。それを踏まえた上で、スタートアップで働くことの最大の利点を3つ、お伝えしようと思う。私たちのスタートアップでの経験を説明するにあたり、Dan Pink氏の考えを参考にしている

1. 自主性

私は自由がいかに素晴らしいかについては強調しすぎることはないと考えている。Start Nowは共同設立者2人だけでスタートし現在は優秀な7人のチームとなったが、自主性という同じカルチャーを持ち続けている。

Start Nowには正式な勤務時間、厳格な服装規定はなく、業績管理表(訳注:MCsに該当する適切な訳が不明でした)に記入するといったルールもない。実際、同僚の1人は今アフリカの広大なサバンナを探検しながらタンザニアからの遠隔勤務をしている。

これはスタートアップで働く重要な利点だ。個人的な用事をする時間を多く取れることや、混んでいないOrchard Roadでのんびりとショッピングを楽しむことができるということではなく、仕事をする時間を自分の好みに合わせて調整することができる。

私たちの開発チームは真夜中から朝の8時の間に最も効率が上がる。一方、私は朝早く起きて必ずメールをチェックする。時には月曜の朝よりも日曜の午後に仕事がはかどることもある。私たちにとっては月曜が憂鬱だということもない。

そして、自分のチームが成長するにつれ、会社そしてスタートアップ人生の支柱を戦ってでも保持したいと思うだろう。それは、会社が大きな企業には成長しないということかもしれないが、そんなことはどうでもいい。私たちは、それぞれが好きな時に好きな場所で働くことができる。幸せだし、最高の環境で働いている。そういうことが、企業の全体的な生産性をはるかに高めることにつながる。

2.さまざまなスキルをマスターする

スタートアップの仕事には、企業で行われるほとんどの仕事とは全く異なるスキルを要する。事実、極端ではあるが、私たちのほとんどが企業のプロセス志向型のワークフローを嫌っていると言ってもいいだろう。考えてみてほしい。あなたは若い頃、コピーの列に並ぶのを楽しんだことがあるだろうか?

正直言うと、スタートアップの仕事にも作業はたくさんある。例えば、ウェブサイトのコード化や提案書の作成など。だが、スタートアップと企業の違いは、作業によって自分の仕事が型にはめられることがないということ。むしろそれは、すでに自分が持っているスキルに新たなスキルを習得し、さまざまなスキルをマスターするということだ。

人間として、私たちは絶えず自分の持つスキルを向上させたいという願望を心に抱いている。スタートアップの環境では、毎日何かしら対処しなければいけない危機に直面する。ある日には激怒するクライアントになんとか対応しなくてはならず、別の日には長いミーティングで互いにアイデアをぶつけあい、プロジェクトの計画を練り出さなくてはならない。

さらに、こうした危機を乗り切ることに完全に集中しなくてはならなくなるのもよくあることだ。こうした経験のすべてがスキルセットの開発向上に役立ち、経験を通してスキルを効率良く習得できる。

3.目的

最後に、そしておそらく最も大きな動機となるのは、目的だ。かなり幸運なことだったが、私はシンガポールでソーシャル部門に特化するスタートアップで働き、日常業務を通じて、社会に実際に変化と影響をもたらすことができた。

しかし、私が所属していた会社だけではなく、持続するスタートアップはすべて、各社それぞれの目的を持って、社会への影響をもたらすものだ。そうした会社をリストアップして紹介することもできるが、もうすでに読者のみなさんも友人の誰かが経営する小さくても素晴らしい会社について思い起こしていることだろう。その会社は、誰かの生活に何かしらの変化をもたらしている。

目的がなければ、スタートアップで働くのも、大きな企業で働くのにも大した違いはない。上場企業の唯一の目的は、株主利益を最大にすることだ。そして、すべての社員がこの目的に沿って働いていると感じられるわけではない。多くの場合、結局は給料によって働き方が決まることになる。しかしスタートアップの世界において、目的はあらゆるところに存在する。

これを感じるには、設立者にならなくても大丈夫だ。小さくて献身的なチームに身を置けば、今後発生してくる生活上の問題を解決するためのグループに参加することで興奮を感じ、原動力を得ることができるだろう。

だが、スタートアップでの仕事はすべての人に適したものではない。従来の一般的なキャリアと比較すると、収入が少なくとも20%減ることは間違いない。リスクと職の不安定さが要因となって、費用と便益を分析するとさらに悪い結果が出る。しかしこれらすべてにもかかわらず、私はあえて次のように言おう。これら3つの要因のうちのいずれか1つでも、そこからもたらされる全体的な利益について考えるなら、多くの人々が選ばない道を行くという決断を下す、十分な理由となるのだ。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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