Facebook、Google、Twitterが中国ではなくベトナムに進出した理由

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【原文】

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ベトナムと中国を比較したがる人は多い。両国には明らかに似ている点があるとも言える。中国の王朝はベトナムを1000年間支配していたことがある。ベトナム人は旧正月を祝い、名前には中国のルーツがある。だが、オンラインサービスとテック業界においては、両国の状況はとても異なるようだ。

アジアには、中国、ベトナム、ラオス、北朝鮮という4つの共産主義国がある。ラオスと北朝鮮はあまりにも国が小さすぎて、テック産業の業界図には載っていない(たとえ、北朝鮮が遂にモバイルインターネットを利用し始めているとしても)。

だから、北朝鮮とラオスを除けば、中国とベトナムが残る。中国では、Baidu、Tencent、Sina Weiboが検索およびソーシャルメディア大手のサービスだ。一方、ベトナムでは、GoogleとFacebookが主要トップのサービスで、Twitterはブロックされていない。この背景には、何があったのだろう?

検索サービス

中国は2010年、Googleの検索サービスに干渉し始め、同サービスの利用にあたっては、読み込みができないことが頻繁にあるが、完全にはブロックされていない。これは、中国人口の大多数がアクセスするコンテンツを監視しようと中国政府が取り組んでいるからだ。

そして、GoogleやFacebook、Twitterの代わりとなるBaiduやSina Weiboを保護して成功させるという大きな役割を果たすためでもあると言われている。現在、Baidu上では1日に平均50億件の検索が行われる一方で、Googleの月間検索件数は1000億件を越える

だが、Googleのサービスが中国で制限されていることから(それでも、Googleは中国で5番目によく利用されている検索エンジンである)、実質的にはBaiduが世界で最も大きな市場である中国でほぼ独占的なアクセスを手中にしている。

ベトナムでは、Google.com.vnがナンバーワンの検索サイトで、Googole.comは3番目に人気のサイトだ。ベトナムには、Wada.vnCocCocなど、国内企業が提供する新しいサイトがあるが、これらのサービスはGoogleの独占的な支配に対抗するのに苦戦するだろう。

2000年代中頃、Googleは既にベトナム市場で徐々に広まりつつあった。Youtubeは以前からベトナムで最も利用・閲覧されているウェブサイトで、そういう状況から、Googleもサービスを徐々に広げることができた。

ベトナムについて興味深いことは、Googleが正式にオフィスを開設しなかったことだ。Googleは今でもベトナムにオフィスを構えていない。同社は、ゆっくりとベトナム市場に参入し、同サービスの価値はユーザによって評価され、徐々に優位性を高めていった。ところで、もしGoogleがベトナムでブロックされていたとしたら、ベトナムのサイバースペースには巨大なブラックホールができていただろう。

ベトナムでの傾向はこうだ。サービスを参入させ、それらが政治的にどれくらいの害を及ぼすかを査定するのだが、排除するには遅すぎると気付く。ソーシャルメディアに関しては、検索サービスよりも少し複雑だ。だが、これと同じ原則があてはまる。

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ソーシャルメディア

中国は2008年にFacebookを、2009年にはTwitterをブロックし始めた。中国では、グレート・ファイアウォールをくぐり抜けるのが非常に難しいために、中国のユーザはSina Weiboなどの国内のソーシャルサービスに集まっている(1)。とは言うものの、外国のサービスがブロックされていなかったとしても、中国のサイトにはより多くのユーザが集まると言う人も多い。

だが、私はそうは思わない。Facebookが中国でブロックされていなかったら、Zuckerberg氏は中国にオフィスを開き、そして、もしくは、Weiboが今集めているユーザに関するデータと同じくらい豊かな量のデータを集めていることだろう。現在、Sina Weiboには5億人のユーザがいると言われている。これは、Twitterの2億人よりも多く、Facebookの10億人より少ない数だ。

ベトナムは2009年にFacebookをブロックし始めた。しかし、ブロックの程度は比較的軽かった。ほとんどのユーザはDNSを調整したりHotSpotShieldを使用することで、何の問題もなくアクセスできる。この原因がベトナムにおける爆発的な成長(1年で2倍になった)によるものだと私たちは考えている。現在、Facebookが世界で最も急速に成長している国であり、ベトナム国内トップのソーシャルサイトとしてZingを上回っている。

ベトナムはFacebookを受け入れ、手遅れになるまで成長を許してしまった。最近、ある情報筋から聞いたところによると、すでにFacebookは、おそらく1500~2000万人のユーザをベトナムに持つ。だからもし当局がFacebookへの接続をブロックすれば、国内のユーザは大きな打撃を受けることになる。ベトナムに店を構えている多くの企業が、Facebookにページや広告を持っている。

政治的情勢によりブロックは強化されているものの、それはFacebookの使用抑止よりも、国民に自己検閲を教育する方へと向けられている。今日では、ブロックはこれまでと同じように軽い。そしてこのおかげで、ベトナムは事実上、自国でWeiboを構築する必要性を回避してきた。

それから、Twitterに関して言えば、ベトナムではマイクロブログはまだ流行っていない。それがおそらくブロックされていない理由だ。

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これらのことが何を意味するのか

ベトナムと中国は、お互いに隣接する社会主義共和国であり共産主義の同志であるが、インターネットに関しては政治的に大きく異なる立場をとってきた。中国はインターネットを戦場、ビジネスの宝庫、社会的安定への脅威などさまざまなものとして捉えてきた。

例えれば中国は、世界最大の人口を支配し最終的には世界の先頭に立つ大帝国だ。そのためには情報は不可欠で厳しく管理する必要があり、それを行うのは中国でなければならない。先日、中国工業情報化部(MIIT)がAndroidに対して不快感を示したことにより、これが明確なものとなった。

ベトナムの人口(9200万人)は、中国で最も人口の多い広東省(1億400万人)よりも少ない。ベトナムのアレゴリーは理解され慣れ親しまれ、世界的規模の議題も存在しない。こういう状況によって、ベトナムのユーザは2つの巨大なテック集団 ——シリコンバレーと中国のウェブ企業—— の恩恵を受けることができた。

だが、それによる代償はベトナムに独自の大手サービスがないことだ。ベトナム独自のソーシャルメディアと検索サービスのスタートアップは、政府による保護政策、助成金、推進政策もなく、FacebookやGoogleとの競争に苦戦している。

この話には2つの側面がある。中国には、スタートアップやBaiduのような巨大企業が国内ユーザのためにサービスを構築するための余地がたくさんある。だが、彼らは世界とのつながりを犠牲にしている。一方、ベトナムでは、スタートアップは国外のサービスと競争しなければならないが、中国よりは世界とのつながりが大きい ——とは言っても、ベトナム人はなおも非常に孤立しているという人は多いだろう。

中国テック企業のいくつかが成功し繁栄しているのは、中国には国境を越えた「本当の」競合サービスがないからで、ベトナムスタートアップの成長が阻まれているのは、外国の大手サービス、もしくはベトナムに進出する周辺地域のスタートアップに勝るサービスをベトナム企業が構築できないから、というのが最終的な結論なのかもしれない。

だが、本当のところ、中国とベトナムの比較は非常に難しい。両国は比較的同じような政府が国を動かしているが、規模からしてすべてが不釣り合いな比較になる。中国企業は、数多くの国内企業と競争しながらも、即座に膨大な人口にアクセスできる。私にとって本当に興味深いことは、中国企業がこれらの有利な条件を誇らしげに思っていることだ。

1.グレートファイアウォールがそれらのサイトの成長を助けたのかどうか、もしくは、よりよいローカライズ版があるだけで海外のサービスが勝てたのかどうかは、議論の余地がある。例えば、Renrenは、Facebookがブロックされる前に、すでに中国で同サービスを打ち負かしていた。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

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