クラウドソーシングは働き方の選択肢となるのかーランサーズとクラウドワークスに聞く(前編)

Takeshi Hirano by Takeshi Hirano on 2013.4.1

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ランサーズ代表取締役 秋好陽介氏

企業の「終身雇用」が神話になりつつある今、私たちは就職以外に、フリーランスやパートタイムといった様々な働き方を学び、状況に合わせて柔軟に選択する必要が出てきている。スタートアップも選択肢の一つかもしれない。

国の統計情報を紐解くと、国内の企業の数は約448万。その内単一事業所(事業所が1カ所だけの企業)は全体の約94%を占める。逆に支店などを10カ所以上持っている大企業は全体の0.4%だ。

しかしこれが従業者数の割合となると話が反転して、この「0.4%の大企業」に務める従業者数が全体の約31%に上る。一方、日本で働いている就業者数は6228万人で、その内雇用されている人は5502万人、自営業や家族経営者は702万人となっている。(※1)

数字を改めて眺めると、就労人口における「勤め人」の多さや大企業への人材集中が理解できる。

この構造が今日明日に変化することは考えにくい。一方でふんわりとした不安感は確実に存在している。労働者は将来に備えて何を考えるべきなのだろうか。

クラウドソーシングという働き方がある。オンライン上で依頼とワーカーをマッチングさせるプラットフォームで、米国のoDeskElanceが先行事例として存在している。私たちSD Japanも記事翻訳にクラウドソーシングのConyacを使い続けてメディア運営を成立させている。

そして最近、このクラウドソーシングだけで生活を成立させる人たちも出現し始めているという。この働き方は就職や起業とは違った新たな選択肢なのか、単なる副業なのか。プラットフォーマーとして国内市場を牽引するランサーズ代表取締役の秋好陽介氏、クラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏に「クラウドソーシングの今」を聞いてきた。(前半)※後半はこちらから

クラウドソーシングで生活をする人たち

「ランサーズで700万円とか800万円っていう金額を稼ぐような方も出てきたんです」ーークラウドソーシングといえば、どうしても「小さな作業」を手のあいている遠方の誰かが低料金でやってくれる、というイメージがあった。

副業だけでなく主収入も

もちろんそれは大きく外れている訳ではなく、秋好氏に現在の状況を聞くと12万人ほど登録ランサー(ランサーズで働く人の呼称)の内、月間で5万円ほど稼いでいる人が1000人ほどで、7割が地方で働いているのだという。一方、300万円以上を稼いでここだけで「生活」している人も出てきているという。

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全体的にも伸びていて、現在1万件ほどある案件数は去年に比較して3倍に伸びているそうだ。「2011年あたりから急に伸びました。運営体制も2008年に2人で始めて以来、2011年には11人、現在は30人ほどに成長しています」。好きな場所でやろう、とランサーズは現在鎌倉に本社を構える。秋好氏も「開発に集中できる」とその利点を語る。

「エンジニア系への依頼は伸びています。ライティングやウェブデザイン、営業代行や企画書作成なんていうのもあります。私たちランサーズとしてもウェブサイトやコンテンツ取材、記事化を依頼したりして、実際に作ってもらっているんです」。秋好氏はクラウドソーシングという方法で、人々がよい仕事と出会い、生活ができる世界づくりを目指している。

みんな平等に仕事ができる世界

一方、クラウドワークスでもここで仕事をしている人たちの声が載っている。実際、いくつかのスタートアップがこのクラウドワークスで案件を見つけてそれなりに売上を立てているという話も聞く。

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吉田氏にクラウドソーシングという働き方はスタンダードになるのかと尋ねると、ある一人の働き手の声を紹介してくれた

色々自分の知らなかった世界や、若い世代の人々のセンスや興味に触れられるのはとても嬉しいです。また、みんな平等に、そして全国一律に扱って頂けるこのシステムはとても素敵です。現役を退職してから田舎に引き上げ、こういう刺激はなかなか無いので有り難いです

この声の主は徳島県に住む60代の女性なのだという。「制約がどうしても多くなりがちな女性に、新しい働き方を提供できている」ー吉田氏は自信を持ってこう答えてくれた。知らなかった人からオンラインの依頼を通じて「ありがとう」を言われる感動。個人が仕事を通じてやりがいを見つけられる。吉田氏は彼女がいった「みんな平等に扱って貰える世界」というものをひとつ実現したと語る。

「お金」という現実的なものだけでなく、仕事は「生き甲斐」でもある。クラウドソーシングが担うもうひとつの一面を垣間みた。

日本のクラウドソーシングを牽引する「二つの世界」

就職していれば出社や退社があり、上司や部下と一緒に仕事をすることになる。外注には発注書を書くし、月末になれば請求書を発行する。会社というのは様々なルールを持って日々の営業活動をおこなう。

しかし一旦その世界から離れるとルールは自分で作らなければならない。ランサーズとクラウドワークスはそれぞれクラウドソーシングという世界で仕事をするためのいわば「ガイドライン」だ。両社に違いがあるのか、引き続き話を聞いた。

「仕事の最適化」でクラウドソーシングを効率化するランサーズ

「いわゆるセル生産方式(※2)なんですね。これをどうやって数多くマッチング成立させていくか。そこに大切なのは案件を「フォーマット化」することなんです。例えばロゴの制作依頼があるとして、どういうオーダーシートがいいのか、クライアントチェックや納品までの流れがトラブルなくスムーズに流れるにはどういったフローがいいのか」。

ランサーズには現在80を超える仕事のジャンルがあり、それぞれに最適なフローを日々検討してシステムを改善しているのだという。

先行事例のoDeskやElanceといったプロジェクト管理をいきなり輸入するのではなく、コンペから始めているのも国内での「文化」を考えてのことなのだそうだ。「oDeskなどは大変優れているのですが、クラウドソーシングの文化が進み過ぎているので、委託して見積りからプロジェクト管理など全てオンラインで完結する仕組みは、まだ日本では早すぎると思ったんです」。

ロゴのデザインなどを徹底的にマッチングし、口コミやリピーターの増加と共に、キャラクター、イラスト、アイコンと横に展開。結果としてデザイナーやエンジニアといった方々の登録や依頼が多くなったのだという。

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ランサーズがランサーに依頼して運営する社内サイト

秋好氏にクラウドソーシングのプラットフォーマーとしての役割を聞いたところ、「例えば、5万から100万円という価格の幅があったとしして、どうしても現在のクラウドソーシングやオンラインでの依頼となると「5万円」の方にいってしまう。仕事って期待値と信頼値の二つで成立していると思うんです。例えば大手広告代理店にロゴを制作依頼したら、ブランドやいいものを作ってくれるという「期待」で価格が上がる」。

「そこに仕事を必ずやり遂げてくれるという信頼感があるので、さらに価格が安定する。私たちプラットフォーマーの役割というのは、個人に変わってこの期待値と信頼感を作り出すことだと考えています」という答えが返ってきた。

彼らはその期待値と信頼感を作るために、ユーザーランクやスキルテストなどで第三者評価をシステム的に導入したり、電話認証やNDAなどで信頼感を高める努力をしているのだそうだ。

ーーー後半はクラウドワークスの目指す方向性と国内クラウドソーシングの立ち上がりについて

※1:数字の出典は下記より
労働力調査/基本集計(平成25年1月分)
経済センサス‐基礎調査(平成21年)

※2:セル生産方式(せるせいさんほうしき)とは、製造における生産方式である。1人、または少数の作業者チームで製品の組み立て工程を完成(または検査)まで行う。ライン生産方式などの従来の生産方式と比較して、作業者一人が受け持つ範囲が広いのが特徴。(Wikipediaより抜粋

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Takeshi Hirano

Takeshi Hirano

ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現THE BRIDGE)を共同創業。1977年生。(株)THE BRIDGE代表取締役

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