新経済サミット2013まとめ(後編):日本のスタートアップが克服すべきものと、起業ルネッサンス

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先週、新経済サミットでは、破壊的なイノベーションについてセッションが繰り広げられ、その多くをライブブログでレポートした。ディスカッションの要旨を加えて、その内容を以下にまとめてみた。(後編)

前編からの続き)

政府のアクションを求める

素晴らしい瞬間を終えて、サイバーエージェントの創業者で社長の藤田晋氏は、日本の起業家は生き残るために、暖かく柔らかい以上のものを必要とするようになるだろうと述べた。彼は、政府がより重要な役割を担うようになると述べた。

私たちは、政策の転換など、変化を必要としている。スタートアップは新しいアイデアと、新しい雇用をもたらす。政府は、東京にアジアの起業センターを作るとか、エンジニアを育てる場所を作るとか、そのようなメッセージのもとに行動すべきだ。

起業センターの考えは興味深い。東京には多くのシード・アクセラレータやインキュベータがあるが(この記事で以前、地図上にマッピングした)、真の有名どころは存在しない。渋谷や六本木近くに、そのようなハブを作るのは、難しいことではないだろう。そこは、内外の企業や起業家を魅了する特別なエリアになるだろう。伊藤氏は、シンガポールの事例を挙げ、シンガポールは外国からの人材のビザ発給に極めて前向きであると話した。

規制や法律を克服する

このような形で支援するのに加えて、知事や国会議員は、レガシーなビジネスを守ろうとして規制を設け、将来有望な新しいスタートアップを邪魔するのはやめるべきだ。タクシー業界を守るために不必要で複雑な法律を設け、Uber のような素晴らしいサービスが日本市場に参入できないのは恥ずかしいことだ。サミットでは、Uber の CEO Travis Kalanik は、同社の高級車サービスを日本に持ち込むにあたり、障害があることを嘆いた。

東京では、プライベート・カーのサービス料金が5,540円に固定されている。90のゾーンに、それぞれ最低料金やルールが存在する。我々は世界中の都市に進出しているが、こんな事例は見た事がない。政府は、カー・サービスを使うのは裕福な人だけでよいと言ってきた。このような法律がタクシー業界を保護し、東京をさらに悪い状態にしている。顧客をアプリでカー・サービスに誘導するには、資格を取得した旅行ガイドを雇わなくてはならない。理由は不明だ。ただ、物事を難しくしようとしているだけ。

楽天の三木谷博史氏は、破壊的なインターネット・ビジネスを作る場合、日本では乗り越えなければならない、多くの規制があると指摘した。このカンファレンスで述べられたメッセージに応じて、政府が何かしらのアクションを取るかどうかは要注目だ。サミット前夜に安倍首相が会場に立ち寄ったが、それは単なる写真撮影だけのためだったとは思いたくない。

起業ルネッサンスの始まり

このカンファレンスでは、日本が直面する問題について多くの議論が繰り広げられたが、同時に楽観的な声も多く聞くことができた。日本の可能性について話が及べば、Evernote の CEO Phil Libin 以上に献身的な人物は居ないだろう。彼はなぜ、日本について、前向きに考えられるのかを説明した

私は日本に対して、極めて楽観的だ。だからここに居るし、日本に投資もしている。日本では、国内での見方と国外からの見られ方が、大きくかけ離れている。国外の人は、日本は不思議な場所だと思っている。私が日本に来ると、いつも「日本のどこが悪いのでしょう」という質問を受ける。これは、世界の見方と大きく異なる。例えば中国について話すときは、中国にはいいことも悪いこともあるが、現地に行くと、人々は皆前向きだ。理由は何であれ、他国の人に比べ、日本人は自分たちのことを後ろ向きに捉えている。

私は日本が、起業ルネッサンスの始まりにいると考えている。今日、スタートアップを始めるのに大きなお金は必要ない。最も重要なのはデザインとディテールに注意を払うことで、日本はこういうことに長けている。世界にモノを輸出するハードルは以前に比べ低くなっているし、日本は大きなルネッサンスの始まりに居て、だから我々はここに居て、それに賭けているのだと思う。

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左から:George Kellerman (500 Startups), David Chao (DCM), Derek Collison (Apcera), Josh James (Domo), Phil Libin (Evernote)

しかしながら、日本人はビジネスでパッションを表に出したがらない、とも指摘した。人々を自分たちの冒険に巻き込んで行く上で、これは起業家に求められるスキルの一つだ。彼は笑みを浮かべながら、日本は食べ物やファッション、文化と同様に、パッションを持って起業家精神を扱うべきだと述べた。

George が会場の起業家に拍手を送ったこととあわせて、Phil の意見はサミットの中でも印象深いものだった。しかし、まつもとゆきひろ氏がこの日述べたことも印象深かった。日本人のパネル・ディスカッションで、どうすれば日本は破壊的なイノベーションを創り出せるかを議論していたとき、彼は、その議論の意義そのものを質問に対して投げかけた

日本に破壊的なイノベーションは必要なのだろうか? Google が作った生活をよくしてくれるイノベーションがあれば、それでもいいのではないか? グローバリゼーションについて話すと、どうして日本からそれを起こそうとするのだろう? 愛国心からだろうか?

まつもと氏は、世界的な視点でモノを見ているようだった。国境を越えれば、言葉が変化し、国が変わる。このようなことは彼にはあまり関心がないようだ。彼はインターネットがあらゆることを可能にすると見ていて、私は、場所に関係なく、すべてのボートを浮かべさせる大きな波のうねりがあるという印象を受けた。

この問題の根源は、多くの起業家や企業がグローバルに物事を考えていないか、もしくは、ウェブ上で大きな世界コミュニティの一部と考えているか、のどちらかだ。もしそうだとするなら、このような問題はきっと克服できるだろう。

【原文】

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