素晴らしい製品を輝かせるのが仕事−−日本エイサー砂流氏が語るPR戦略を考える上で必要な「PR思考とコミュニケーション」

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どんなに製品が良くても、ふさわしいユーザに届けられなければ意味が無い。製品の利用シーンや使う層へのアプローチを考えるPR戦略は、大企業からスタートアップまですべての企業が意識しておきたい要素だ。

日本エイサー宣伝・広報担当の砂流恵介氏は、新卒で秋葉原のPCショップに入社。販売員として働きながら、どうやって顧客視点で商品を届けるかを考えていた。そうした経験をもとに2007年から日本エイサーに勤務。日々広告メッセージやメディアについて考えている人物だ。

砂流氏がMOVIDA SCHOOLで語った、企業に必要なPR戦略に関してまとめた。

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PRを意識した企画立案を立てる

企業は、日々企画を立てて製品プロモーションを実施しているが、企画の段階でPRを意識しているかどうかでその広告効果が大きく変わってくる。PR戦略のないプロモーションは、企業に対して「やった感」しか生まれない。

例えば同じ芸能人を起用したA社とB社のプロモーションを比較しても、PRの組み立て方で注目度の差が大きく異なる。同じ芸能人の素材を使っても、素材と売り出したい製品の組み立て方によって変わってくる。

中川淳一郎氏が著書『ウェブはバカと暇人のもの』の中で使われていた公式に当てはめると、「素材の人気度×ギャップ(面白さ)×時流」でそのPR戦略の面白さを導き出すことができる。こうした発想をもって街を見ると、面白いかもしれない。

メッセージを「自分ごと」と感じてもらう

好きな雑誌やネットニュースに書かれている記事を読むと、自分自身に対するメッセージとして受け取りやすい。各メディアがターゲットを定め、そこに訴求しやすい文脈を作っているからそう受け取る人が多い。PRは、そうした文脈に乗っかることで「これ、わたしへのメッセージだ」と思わせる戦略を考えなければいけない。

雑誌を例にすると、広告は枠を買って読者に訴求する手法で、PRは雑誌の編集者を通して雑誌の文脈に沿って読者に商品を紹介していただく手法だ。広告は商品を売るのが目的だが、PRは製品やサービスの理解や認知を高めることが狙いになる。雑誌やネットニュースの文脈に乗ることで、ただの広告やメッセージから「自分ごと」へと昇華させ、認知拡大を図る手法だと考えてもらいたい。

多面体で見せるように発想する

尊敬する博報堂ケトルの嶋浩一郎氏が語った「そぎ落とすのが広告、多面体に見せるのがPR」を日々参考にしている。広告は、コピーとグラフィックをもとに最小限の情報でいかに訴求するかだが、PRは多面的な要素をもとに情報を組み合わせて製品を引き立たせるものだ。

例をいくつかあげてみる。行列ができる超有名ラーメン店の新メニューとして、ラーメンのプロモーションを考えるとする。PRの発想では、他にどういった情報があるかを考えて露出させる。1つには「朝ラーメン×美容にいい×ダイエット」があるかもしれない。そこでは、女性誌のターゲットを中心とした顧客へリーチできる。

他には現象に沿った方法もある。「お一人様消費」という現象が取り上げられている時だったら「お一人様消費×個室ラーメン」の切り口から、現象の1つの事例としてラーメン店を紹介することもできる。

PRを考える上で大事なのは、ニュートラルな発想だ。フラットな視点で製品や他社、世の中の時流などのいくつも情報を組み合わせ、その商品の認知度や理解を深めてもらうためのPR思考を持つことが重要になる。

プランニング設計により、広告効果を高める

実際に製品を広めていくためには、いかにプランニング設計をするかということが大切になる。そのためには、関係者と一緒にPR戦略を考えていかなければいけない。

PR戦略の流れとして、例えば以下の項目が考えられる。

1)製品担当者より情報を共有
2)訴求方向決定し、広告コピーとグラフィックを作成
3)要素を洗い出し、ファクト・シートを編プロと作成
4)PR会社と活用シーンを作成
5)メディアへ商品紹介のアポイントメント
6)プレスリリース
7)製品発売&広告展開開始
8)ファクトシートと活用シーンを販促へ応用
9)メディアキャラバン

まず広告代理店と協力し、製品担当者と交えながら訴求方向を決めていく。訴求を最大化するために編集プロダクションとともにファクト・シートを作成し、製品ユーザ層を分類し、訴求ポイントを属性ごとに分解していく。また、それらの属性に応じた利用シーンを冊子にするなどし、具体的なイメージをもってもらう手法も考えられる。

また、メディアは読者属性に応じて分類する。メディアによって読者層が変わるため、メディアの読者層と訴求したい属性を理解し、ファクト・シートをもとにメディアに応じて最も訴求しやすい説明ポイントを用いて説明する。

製品発売前後は、社内の広告展開に合わせてメディアへのアプローチを実施し広告展開による効果を最大限に引き出す。一般的に、バナーなどの通常の広告は出稿しても広告効果は薄い。

だからこそ、1つのリリースや広告で多くの注目を引き出せるよう、事前のPRを万全にすることにより広告効果を高めていく。広告から報道へといった流れではなく、報道によって広告を引き立てることが限られた予算以上の効果を得られる方法だ。

素晴らしい製品を輝かせるのがPR

PRはプロモーションや広告の前から仕込むべき。そのためには、関係各所への日頃のコミュニケーションをどれだけ取れているかが大事になってくる。PRは一人では何もできない仕事なのだ。

製品やサービスを輝かせることはできるが、そこには製品が素晴らしいという前提がなければならない。経営者は小手先のPRではなく、製品を磨き上げる意識を第一に持ってもらいたい。

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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