台湾発の印刷クラウドサービスYouPrint、2年以内に7つの海外市場へ進出を目指す

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現在はデジタル化の時代、どんなビジネスでもEコマースを開発すべきだろう。印刷業界はどうなるのだろうか。電子書籍、電子雑誌の普及によって、液晶スクリーンが紙に取って代わり、デジタル・パブリッシングの波が引き起こされる。印刷業は終焉に向かうと言う人は少なくない。

長年にわたって印刷を生業としてきた、YouPrint 創業者の林殿生(リン・ディエンシャン、英名Dixon)氏には二つの選択肢があった。廃れ行く印刷業を運命だと受け入れるか、インターネットの本質と可能性の理解を深め、昨日までの敵を味方にするかだ。

彼は海外の印刷業の事例を調べ始めた。そして、VistaPrint が成功していることを知り、胸を躍らせた。

VistaPrint は1995年にアメリカで設立され、以来、ビジネスモデルを変更し続け、2000年には名刺印刷サービスに特化。2005年にNASDAQに上場、2007年には年間売上2.5億ドルに達し、2011年には10億ドルを達成。世界の23カ国でサービスを提供している。

アメリカで苦しい状況にある市場で、VistaPrint が大きな成功したのを見て、林氏も迷うことなく、ビジネスモデルを変えることにした。まずは、VistaPrint と同じものを作った。これが台湾でうまく行けば、業務拡大し海外進出も難しいことではない。

2011年、同社は YouPrint という名前で再度創業した。林氏の目に間違いはなかったのだ。2年という短い期間に、台湾を拠点にオンライン印刷市場を立ち上げ、カナダ、アメリカ、香港、中国、マレーシア、日本に打って出る。

クラウドを使い、YouPrint では一人の社員が毎月50万台湾元を売り上げる

(訳注:50万台湾元は、約170万円に相当)

5年間で10億ドルの市場を創出した VistaPrint のビジネスを、林氏は端的にコピーしたのではない。印刷業務をオンライン注文化するにあたって、YouPrint はビジネスモデルに問題はなかったが、基本的なネットワーク技術が欠落していた。クラウド上での印刷市場を作る上で、技術は大変重要な部分であり、彼らは YouPrint が正常に運用できる状態になるまで、研究開発に4年間の歳月を費やした。

準備に要した4年間の彼らの目標は明確だった。すべての印刷受注プロセスを標準化し、慣れていない人も、資材、仕様、印刷する量をステップ・バイ・ステップで指示できるようにすることだった。

YouPrint のクラウド印刷サービスでは、プロのデザイナーが自分で作ったファイルをアップロードして請負印刷を委託できるほか、一般ユーザには組版ツール(フリーフォーム)を提供している。ユーザは入力した内容がオンラインで確認できるようになり、印刷所に担当者を送って校正する必要がなくなるので、移動の労力と時間が省けるわけだ。

YouPrint は、VistaPrint のコピーではないクラウドサービスを作ることを選んだ。林氏は自ら研究に時間を割き、B2C市場を最もよい形で経営するにはクラウドだとの結論に至った。昔ながらの印刷業にある「コストの連鎖」を抑え、少なくない人的要素を簡素化し、社員らの生産性を高めた。そうすることで、YouPrint では、社員一人あたり約50万台湾元の売上をさばいている。従来の電話注文の頃の数倍の金額だ。

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インターネットで成功するのは若者だけか?

YouPrint は、最近世間を賑わせている、30歳周辺の起業家が興したスタートアップとは少し違う。林氏は、昔ながらの印刷会社と広告会社の仕事を5年間経験しているからだ。

2007年 VistaPrint がよい業績を出し始めてから、林氏は VistaPrint のビジネスモデルを研究し始めた。彼は、VistaPrint の成功にはマイクロビジネスの急速な隆盛が影響していて、インターネットはさらに多くのマイクロビジネスを創出しており、VistaPrint の最重要顧客はマイクロビジネスであることがわかった。

一方で、業界で世界最高の売上率を誇っているのは、Google、Apple、Microsoft、Facebook などのインターネット企業に集中しているのを見て、林氏は「皆がインターネットを使うようになった今、自分もインターネットにシフトしないと、いずれ淘汰される」と思うようになった。

2年以内に中国市場へ参入し、その後、英語圏市場を目指す

現在、YouPrint は繁体字版(訳注:主に、台湾・香港など、中国以外の中華圏で使われている漢字)を提供しているが、物流の問題さえ解決できれば、国際的な繁体字市場を作ることができるだろう。台湾で印刷し、世界へと届けるのだ。

中国市場はもちろん見逃すことができない。林氏は、簡体字(訳注:中国で使われる漢字)に対応し言語障壁を克服することで、2年以内に中国市場へ参入することは難しくないと語る。さらに、中国語の市場のみならず、将来、英語圏の市場に参入することも計画している。

4月中旬、林氏と彼のチームは、シンガポールで Google が主催したアジア太平洋会議(訳注:Helping Small Business Think Big)に参加してきた。彼の世界進出の目標は、机上の空論ではないのだ。

林氏がどのように世界進出を果たすのか、知りたくないだろうか。印刷業をインターネット化して、どのようにユーザを集めたのだろうか。50%以上のコンバージョン・レートを維持するにはどうしているのだろうか。林氏はどうやって、デジタルなビジネスモデルのスタートアップ・チームを作ることができたのだろうか。

5月2日(木)に開催される TechOrange Startup Mixer #8 では、林氏と彼のチームが、インターネットのこの〝黄金路〟で、YouPrint がどのようにユーザからの評価を得て、国際市場に進出しようとしているかを共有してくれる予定だ。見逃さないでいただきたい。

【原文】

【via TechOrange】 @TechOrange


著者紹介:鄒家彥(ゾウ・ジァヤン)

人々のため記事を書きたいと思っている。興味深い話、読んでほしい話、見逃せない話を執筆してきた。起きているときはリラックスし、寝ているときは 夢を見るのが好き。最近見た印象的な夢は、俳優・余文楽(Shawn Yue Man-Lok)が TechOrange(科技報橘)で仕事していたシーン。

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