「もっとデザイナーもリスクを負うべき」ーー若きデザインフェローが考える、これからのデザイナーの在り方

by Junya Mori Junya Mori on 2013.5.20

筆者は、先週末に開催されたインキュベーションプログラム「インキュベイトキャンプ 5th」にメディアスポンサーとして参加した。その際、インキュベイトファンドにデザインフェローとして携わっている藤原氏に話を伺う機会があった。

インキュベイトファンドは、今年の2月にスタートアップのデザイン面も支援していくことを発表し「Design Fellows Program」をスタートさせている。藤原氏はこのプログラムにおいてデザインメンタリングなどをスタートアップに対して実施している。

先日、WIRED.jpで「デザイン会社の買収増加」に関する記事が掲載されていた。今や、スタートアップだけではなく、経営において、プロダクト開発において、そしてマーケティングにおいて、デザインは重要な役割を担い、注目されるようになってきている。

これから先、起業家やエンジニア、投資家などスタートアップに関わる人たちを中心に、テックビジネスに携わる人間は、デザインとどう向き合っていく必要があるのだろうか。藤原氏へのインタビューから、そのヒントを探ってみたい。

良いモノづくりと良い売り方

Some rights reserved by albyantoniazzi
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大学に入学時は、プロダクトデザインを専攻していました。当時、デザイナーになりたいと思って大学に入学する人は、携帯電話の端末のデザインをしたいと考える人がほとんどでした。

しかし、良いデザインのモノが必ず売れるとは限らない。私はそこに世の中とのギャップを感じていました。売り方や、そのプロダクトの持つ価値をどうやって伝えるか。そもそも人がモノを買うときの判断基準や価値って何なのか。そういったことの重要性が増してきている、そう感じていたのです。

そのため、大学では様々なデザイン手法を学びながら、学外で仕事を通じてブランディングを学んでいました。大学4年の時にアパレルショップのマーケティングやブランド構築など実店舗に関わる仕事を経験し、私は「体験をデザインしたい」と強く思うようになり、楽天に就職しました。

楽天ではサービスの立ち上げやリニューアルを専門に実施するディレクターチームに配属され、グループ全体を俯瞰的に見て、様々な事業担当者と仕事させていただく日々を過ごしました。楽天でiPhoneアプリの初事例化を試みたり、UI関連の特許を発明したり、UXデザインなどの新しい手法の啓蒙や、ガイドラインの策定や仕組み化を図るなど、チャレンジしたテーマは数多くありました。

デザインディレクションと経営の関係

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現在、多くの企業ではデザインのディレクションを行う役割の人と、経営の意思決定を行う人とではポジションが違います。個人的には、そうした状況のために、サービスやプロダクトが売れなかった、受け入れられなかったときに、「自分たちは良いモノを作っているけれど、経営側がわかっていない」といった言い逃れのようなものがうまれやすくなってしまっていると考えています。

もっとデザイナーもリスクと責任を負うべきなのではないか、良いモノを作る自信があるのであれば、自分で事業を立ち上げるぐらい踏み込むべきなのでは、と私は思います。ならば、これから自分は、事業開発とデザインのノウハウを組み合わせて、新しい手法を生み出そう、そう考えました。

これからのデザインは見た目やプロダクトのクオリティだけでなく、作ったプロダクトの売り方や良いプロダクトを作るための体制づくりまで考えないと、本当に価値があるものは生み出せません。デザイナーだから、役割はここからここまで、という垣根はいらない、そう思います。

デザインメンタリングをするときに見るポイント

スタートアップにデザインに関してアドバイスを実施するときは、ナレッジを伝達すること、組織自体が成長することにコミットしています。デザイナーだからこそ予測できる未来を伝えて、事業スキームなどを一緒に考えるようにしています。

また、組織がデザイナーを雇えるフェーズになったら、どういった人材を雇うべきか、どう育成すべきかというサポートもしています。

ユーザ体験を考える上で一番大切なこと

最近、「UX」という言葉をあまり使わなくなりました。大切なことは、ビジネスゴールとユーザの状況などを含めた上で、企業の提供価値は何なのか、サービス提供者としての存在意義について考えぬくことが一番大切なことだと考えています。

誰の、どんな課題を、どうやって解決するのか。シンプルな問いに対して、洗練された解を導き出せるかがスタートアップにとってはとても大事なこと。突き詰めて考えていきたいです。

日本でも注目される「サービスデザイン」という言葉

昨今、固有名詞としてのサービスデザインという言葉がテックシーン、インターネットサービスの近辺でも話題を呼んでいる。このサービスデザインという言葉は、欧米では、数年前に話題になったデザイン思考という概念を具体的にビジネスに落とし込む、という文脈で用いられている。(「This is Service Design Thinking」という本が有名だろう。)こうした言葉に対して、藤原氏はどう捉えているのか伺った。

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これまでサービスデザインという言葉や概念は、オフラインの事を指すことがほとんどでした。しかし最近になって、体験を脳がどのように感じ取り、経験が蓄積されていくのかについての研究に関する知識や情報がオンラインのサービスにおいても注目されるようになってきました。

あと、これだけウェブが自然のものになってくると、オンライン/オフラインを切り分けなくてもよくなってきており、つながっているものとして考えることが必要になってきたのだと思います。

デザインに向き合う姿勢

デザインの審美眼を磨くこと。自分が良いと思うモノ、世の中で受けているものは、なぜ良いのか、なぜこの形なのか、どうしてヒットしているのかを因数分解して考え、仮説を立ててみること。そうすることで、2つのメリットがあります。

  • ・仮説を立てることで引き出しが増える
  • ・仮説を元に勉強すると専門知識が身につきやすい

こうした日々の観察眼、仮説思考の訓練の積み重ねがとても大切です。デザイナーの人も、起業家の人にとっても少しでも参考になれば幸いです。

藤原氏へのインタビューを行った「インキュベイトキャンプ 5th」の初日の様子と、2日目の様子、そして参加していたキャピタリストの方々からのコメントも掲載している。

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