受託開発から生まれたBacklogとCacoo。そして彼らは受託開発を卒業した

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ヌーラボ取締役の三人。左:取締役の田端辰輔氏(主にBacklog担当)中央:取締役の縣俊貴氏(主にCacoo担当)右:代表取締役の橋本正徳氏

福岡を拠点にオンライン・コラボレーションツールを提供するヌーラボは6月4日、同社が提供するオンライン図表作成ツール「Cacoo」を自社サービスに組込めるSDKの提供開始を発表した

クリエイターズマッチが提供する広告クリエイティブ作成サービス「ADFlow」が利用第一号となり、同サービス上に組込まれたCacooで図を使った指示が可能となっている。Cacooについてはこちらの記事を参照して欲しい。

福岡から世界へーー。彼らに会うといつもこの言葉を口にする。

ヌーラボのスタイルは強烈なスケールを追いかける「ベンチャー」とは少し違う。どちらかといえば積み上げ型のスモールビジネスに近く、一見すると地味かもしれない。

しかし彼らが生み出すサービスは素敵で、発表にあったCacooもログ管理ツールのBacklogも世界中にファンがいる。代表取締役の橋本正徳氏と話す機会があったので、彼らの歩みを少しお伝えしたい。(文中敬称略)

受託開発から生まれたBacklog

ヌーラボの主力事業は受託開発だ。ここから最初のサービス「Backlog」が生まれる。

橋本:2004年創業で、最初は受託開発からスタートしました。福岡にある事業者のサイト制作だったり、証券会社のシステム開発とか。コンサルティングみたいなこともやってましたね。開発のバグ・トラッキングに適当なツールがなかったので縣さんと一緒に自前で用意しました。それがBacklogの前身になるものです。

自分たちの使うツールを公開してビジネスにしよう、そこから商用サービスに向けての開発が始まる。

橋本:オープンソースを使って後継バージョンを開発したりして三回目のトライで商用版が完成しました。2006年頃の話です。最初は無料、というか野放しのような状況でした(笑。そしたら勝手にユーザーが付いてくれたんです。

有償版については現在と同じく平均して1契約あたり8,000円ほど。しかしこれがなかなか売れてくれない。そこで彼らは考え方を変える。

橋本:最初は技術的なアプローチだったのですが、デザイナーとかウェブ制作側が使いやすい方向性に変えたら、有料版でも売れるようになったんです。

結果、地元はもとより他の地域でも「工程管理ならBacklog」と支持されるツールに成長した。

Backlogの弟分、Cacooの誕生

そしてBacklogの兄弟サービス「Cacoo」が生まれる。オンライン上でユーザー同士がコミュニケーションしながら同時にひとつの図を操作してイメージを作ることができる。サービスはたちまちヒットした。

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広告バナー制作ツールADFlowに組込まれたCacoo

橋本:Cacooを公開したのは2010年のことです。やはり受託開発で仕様などのやりとりにWikiを使う際、その中に埋め込まれている設計図などのイメージがそのまま編集できればいいのに、という発想が最初でした。

しかしこのCacooもまた公開されるまでの道のりは長かった。受託開発を請け負う中、限られたリソースを切り詰めて地味に開発を進め、リリースにこぎ着けるまで2年の時間を要したのだという。

「3月で受託開発の部門を卒業しました」

ヌーラボ取締役の三人には役割分担がある。橋本氏は二つのサービスが順調に成長しているのを背景に、自分が担当していた受託開発の部門を閉じることを決定する。

橋本:田端さんがBacklog、縣さんがCacoo。私は受託開発担当。サービスが拡大しているので、今年3月に自分が担当している受託開発の部門を閉じました。

受託開発は自分の担当だったけれど、正直将来性はあまりないと感じていて。ただ、サービス一本に絞れるかというと、そんなにすぐに移れない。3年ぐらいかけてリソースを受託開発から成長する二つのサービスに移していきました。

徐々に利益構造を変更させた結果、少しだけ売上には影響もあるけれど上手く移行に成功したのだという。ちなみに今回リリースされたSDKは、受託開発をやめた代わりに、カスタマイズや今回の組み込みなどを他の開発会社でも取り組めるようにと用意されたものなのだそうだ。

株式公開と次の目標

橋本氏に株式の公開について興味があるか聞いてみたら、ちょっと興味深い話をしてくれた。

橋本:株式公開した会社って公共事業みたいなものじゃないですか。そういう事業になるのなら、公開すればいいとは思います。けど盲目的に目指すものじゃないと思ってます。

あと、世代交代する意味ではいいのかなと。組織の新陳代謝で自分が使い物にならなくなった時に「おいオマエ使えねぇぞ」って肩叩いてくれる仕組みがIPOだって理解してます(笑。

「世界のヌーラボになるのが次の目標かな」ーーそう締めくくる橋本氏。

ヌーラボは現在海外にも拠点を持ち、田端氏は移住して事業を展開中だ。福岡の小さなチームの大きなチャレンジは今も続いている。

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