7人のキャピタリストの言葉

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「起業家と投資家の利益は相反する」ーー。私の友人がアドバイスしてくれる、味わい深い言葉のひとつだ。それでも両者はお互いを求め合う。

SD JapanではMOVIDA JAPANの協力で毎週開催されているMOVIDA SCHOOLに登場する業界キーマンの語録をレポートしている。本稿ではその中からスタートアップの現場に詳しい7人のキャピタリストをピックアップしてみた。それぞれ国内第一線で牽引するまさしく「キーマン」たちだ。

起業家の方には将来のパートナー候補として、キャピタリストを目指す方には最前線の情報として、彼らの言葉から何かヒントが見つかれば幸いだ。

グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー/高宮慎一氏

日本のIPO環境は大きく開かれているーー高宮慎一氏が語るスタートアップ事業戦略 11のヒント

常々投資家と起業家は男女関係に似ていると思っている。投資家(アクセレーターにせよVCにせよ)は一度入れるとなかなか離婚できないという話は前述の通り。

その点、その投資家はお金以外何を提供してくれるのかを見極めるのが大事。戦略・組織を一緒につくってくれるのか、ネットワークなのか、勉強会なのか、売り上げを付けてくれるのか。

出会って直ぐにいきなり結婚=投資とはいかないし、それではうまくいかない。まずは、起業家と投資家が個人と個人での信頼関係がなければ、投資後数年に及ぶ結婚生活を一緒に過ごすことはできない。

なので、お勧めなのは、資金調達を実際に実行する大分前から「この人なら!」と思える投資家を見つけ、飲みにいって仲良くなること。

ユナイテッド代表取締役社長COO/金子陽三氏

ファイナンスに正しい答えはない--モーションビートの金子陽三氏が語るファイナンスで意識すべき8つの考え

自分の思いが大切なのか、事業を大きくすることが大切なのか。自身のエゴを守りたいのであれば、人のお金をいれてはいけない。

自分の自由なことができなくなる可能性があるからだ。逆に、上場や売却を意識して経営をしていくのであれば調達をおこなうことはいい選択肢だ。

しかし、調達をおこなうということは、経営の所有権が株式保有者になることは忘れてはいけない。

株主が応援してくれるか反対してくれるか。企業の経営を中心として、なにを重点的に進めていくか、株主とともに考えていくことが大切になってくる。経営者は、株主とやりとりをしながら事業を進めるエージェントだ、という意識をもつ必要性がある。

インキュベイトファンド 代表パートナー/和田圭祐氏

キャピタリストは起業家のサポーター-インキュベイトファンド和田氏が語るパートナーシップにおける5つの考え

キャピタリストとの関係では、資本政策における最低限のルールを理解すべきだ。そして、あくまで交渉というやりとりにおいては、駆け引きのみに終始することなく、交渉の基本的マナーを大事にしてほしい。

もちろんキャピタリスト側にも同様にマナーは求められている。交渉とはつまり、何を出して何を引くか。なにをとってなにを相手に提示するかという譲り合いであるということだ。自分の要求だけを押してもよい関係は築けない。

また、交渉が長引くことが時にあるが、それは本来はあまり望ましいものではない。事業の成長を第一に考えることが大事であり、これに集中することは忘れてはいけない。

GREE Ventures パートナー/堤達生氏

大切なのは、アイデアをエグゼキューションする力 ー GREE Ventures 堤達生氏が語る投資で外せない8つのポイント

アイデアだけに価値はない。自分が考えたことは大体ほかにも100人くらい考えている人がいると思っていい。

エグゼキューションする力があるかは「アイデアを形にする業務フローがイメージできているか」「フローのイメージを可視化、数値化できているか」「フローを各メンバーに分担できるか」「退屈なことを厭わないチームか」といったことから判断できる。

つまらないこと、地味なことでも真面目にやり切れるかどうかがとても重要。思うこととやることは違う、エグゼキューションにこだわること。

インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナー/小野裕史氏

アクションがなければ何も始まらない-インフィニティ・ベンチャー・パートナーズ小野氏が語る「起業家の精神」

僕は個人的にマラソンをしている。南極100キロマラソンや北極マラソン、ゴビ砂漠マラソンに参加したところ、多くの仲間との出会いや、辛い経験から得られた感動があった。

けれども、最初にランニングを始めたのはほんの数年前。ダイエットしよう、と思ったのがきっかけだった。はじめは5キロが限界だった。やっていくうちに10キロ、20キロ、フルマラソンと走れる距離が伸びてきた。それに応じて、もっとチャレンジしてみようと思うようになった。

最初から100キロマラソンを走ろうと思うと心が折れそうになるが、つねに目の前の小さなマイルストーンを目標にやっていくことで成長ができた。

最初から自分がマラソンを走ることを想像していたわけじゃない。けれども、小さなきっかけでもいいから何かチャレンジをすることで見えてくるものは多い。アクションがなければ、待っていても何も始まらない。

Open Network Lab取締役/前田紘典氏

カルチャーこそが組織を支える--Open Network Lab前田氏が語る「成長するスタートアップに必要な基盤」

創業チームは会社のカルチャーを作り上げる。組織にとってカルチャーは必要不可欠であると同時に、メンバーとの整合性は最も気をつけたい要素だ。カルチャーに合わない人物を採用したばかりに、組織が崩壊するのをこれまで何度も目撃してきた。

もちろん頭の良さやスキルの高さは大事な要素だが、それよりもカルチャーへの整合性こそ優先すべきものだ。カルチャーに整合していない人物が一人でも組織にいると、組織全体に取って悪影響を及ぼす。

GitHubでは、一緒にビールを飲んでまた次も一緒に飲みたいかを考える「ビアテスト」をもとに採用する。他にも、シリコンバレーの会社の多くも一緒にいて楽しいか、カルチャーに馴染めるかを重要視するところは多い。整合性は、組織全体の環境構築の上で最も重視すべきだと認識しよう。

小泉文明氏

事業を作るCFOを目指せ--元mixi小泉氏が語る「事業創造に必要なファイナンスとCFOの役割」

しかし、そうした能力以外にCFOに求めるものは、いかに企業価値を最大化し、継続的に評価される環境を作るかだ。そのためには、IRやPRによるコミュニケーションを通じて期待値をコントロールすることが重要。

期待値は、上げすぎて痛い目にあうこともある。期待値のバランスを保ち、継続的なコミュニケーションによって信頼を獲得し、次につなげることが重要だ。

受け身のCFOではなく、事業を創造していく積極的なCFOであるべきだ。そのためには、事業を作れる人がCFOを担うことで事業全体が活きてくる。

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