プロジェクトとプラットフォームの相互作用でクラウドファンディングは成長する、CAMPFIREのこれまでの軌跡

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新たなオフィスFLAGの一角にて、ハイパーインターネッツのみなさん。
ハイパーインターネッツのみなさん。新たなオフィスFLAGの一角にて。

クラウドファンディングサービスが日本に上陸して、2年ほどの月日が経過した。それだけの時間が経過しても、いまだクラウドファンディング関連の話題が尽きることはなく、最近でもいくつものサービスがローンチしている。

世界でも日本でも拡大を続けるクラウドファンディングについて、先月6月に設立2周年を迎え、オフィスを移転したばかりのクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」を運営するハイパーインターネッツの石田光平氏に、この2年を振り返っての話を伺った。

なお、今回これまでのCAMPFIREの話を伺うにあたって、CAMPFIREにおけるプロジェクトの成功例である「co-ba」や「co-ba library」の運営者であり、CAMPFIREでキュレーターも務めるツクルバ創業者の村上浩輝氏と中村真広氏にも話を伺った。

クラウドファンディングの日本上陸

CAMPFIREがローンチしたのは、2011年6月。当時、いくつかクラウドファンディングに分類されるサービスが登場していたが、まだ、プロジェクトの実現のために少額資金をクラウドで募るということが多くの人にとって聞きなれないものだった頃のことだ。

campfire top

CAMPFIREは、リリース後すぐに東日本大震災被災地復興のための「元気玉プロジェクト」 など、外部とのコラボレーションを積極的にしかけ、その知名度を向上させると同時に、「クラウドファンディング」というサービス形態の知名度向上の役割も担っていった。

個人のクリエイターの作品や、個人のプロジェクトを形にしていくための後押しとなるサービスとして注目を集めていたCAMPFIREに着目したのが、コワーキングスペース「co-ba」の立ち上げを計画していたツクルバの2人。

彼らがクラウドファンディングと同様に、まだ日本では新しい存在だった「コワーキングスペース」を、渋谷の街で立ち上げたいと考えていた折、共通の友人からCAMPFIREの石田氏を紹介してもらい、話を聞いたことがきっかけだったという。ちなみに、共通の友人とは「ユビレジ」を運営する若手起業家の木戸啓太氏だ。

ツクルバは、当時CAMPFIREと同じようにクリエイター支援をしたいという想いを持っており、「石田さんと最初に会ったときは競合になるかもしれませんね、なんて話をしていたんですよ。」と、村上氏は当時のことを笑いながら話してくれた。この出会いもきっかけとなり、co-baのプロジェクトを掲載することになる。以下は当時のプロジェクト紹介映像。


今では、プラットフォームとしてサービス提供しているCAMPFIREだが、当時はキュレーターが各プロジェクトを掲載するまでのサポートに柔軟に対応していたという。ツクルバも、キュレーターの助けを借りながら、資金を集めていった。

石田氏「当時はまだサービスがローンチして半年も経たない頃。プロジェクトの進め方、資金の集め方も今ほどわかってはいませんでした。ノウハウがまだ溜まってなかったので、柔軟にサポートすることで知見をためていっていました。」

キュレーターの助力もあり、2011年10月にツクルバはco-ba プロジェクトを成功させる。目標金額の30万円を2倍以上も上回る成功だった。同時期には、最近100万ドルを調達した新世代の電動モビリティ「WHILL」が、プロジェクトをサクセスさせていた。

注目の成功プロジェクトが続々と出始めたことで、メディア掲載も増え、CAMPFIREというプラットフォームはその存在を世に広めていった。

プロジェクトの成功とプラットフォームの成長

少し時は進んで、2012年の3月。co-baの運営がうまくいっていたツクルバは次のプロジェクトを仕込んでいた。シェアライブラリー、「co-ba library」だ。

ツクルバは、今回も資金を集めるために、プロジェクトを多くの人に知ってもらうために、CAMPFIRE上でプロジェクトを立ち上げた。驚くべきことに、このプロジェクトは掲載から1日を待たずしてサクセスし、期間終了までに200万円近くを集めた。

co-ba-library

「co-ba library」のコンセプトが共感を呼んだことはもちろんだが、co-baがコミュニティとして成長していたこと。CAMPFIREのメディアとしての側面が成長していたことなどがこのスピードサクセスの要因として考えられる。

ツクルバは、クラウドファンディングにおける自分たちの成功体験を活かして、CAMPFIRE内でキュレーションチャンネルを開設することになる。支援される側から支援する側へ、「SAKELIFE」「Cinematch」「トラ男一家」など、彼らのキュレーションによって数々のプロジェクトを成功へと導いていった。

成功するプロジェクトが増えるほど、CAMPFIREはプラットフォームとしても成長していった。

クラウドファンディングで成功するために

ツクルバの2人は、クラウドファンディングにおいてプロジェクトを成功させるための要件をこう語る。

「アイデアがユニークであることはもちろん重要なのですが、大きな時流を捉えているプロジェクトであることが大切です。何かに対して課題意識をいだき、その実現に向けての熱意が感じられる。大きなストーリーと、その人がプロジェクトを行う必然性が感じられるものであることが大切ですね。」

「選挙に近いのかもしれない」と語ってくれたのはツクルバの中村氏。掲示板としてのCAMPFIREにメッセージを掲げて立候補し、そのメッセージが強く、かつ支持母体があるプロジェクト、つまりプロジェクトオーナーを応援してくれる人たちのコミュニティが存在しているプロジェクトは成功しやすいという。

石田氏は、プロジェクトにとって大切な要件として、以下のことを語ってくれた。

「自分の友達が応援してくれるようなプロジェクトじゃないと、誰かにお金を出してもらうことなんてできないと思います。プロジェクトを立ち上げたらまずは、自分の友達に「よかったら広げて」とお願いしてみる。それで応援してもらえたら、コアなファンになってもらうことができます。コアなファンの基盤があると資金が集まりやすくなる。普通に物を買ってもらうのとはやはり、少し勝手が違うんですよね。」

CAMPFIREにプロジェクトを掲載した経験を持つ、というつながりも生まれた、とツクルバの村上氏は語る。CAMPFIREはクラウドファンディングのプラットフォームとしてだけではなく、コミュニティとしても成長を続けている。これがさらにプロジェクトが成功しやすい土壌を作っていっているのだろう。

プロジェクトの発射台に

ツクルバの2人@FLAG
ツクルバの2人@FLAG

村上氏「ぼくたちは、CAMPFIREでプロジェクトが成功したことで、おもしろい会社だなという印象を持ってもらうことができたし、知名度も上がりました。クラウドファンディングは、起業の新しい形として自分たちの名前を知ってもらうのにも一役買っていると思います。最初、CAMPFIREにco-baのプロジェクトを掲載していなかったら、今のような仕事はしていないでしょうね。

プロジェクトの起案者の人にアドバイスをしたいのは、短期的にプロジェクトをサクセスさせることだけを目的にするのではなく、中長期で支援してくれた人たちと関係性を築いていくことを目的にできるようになってもらいたい、ということですね。」

中村氏「音楽アーティストにとってのパフォーマンスができるステージのような存在ですね、CAMPFIREは。アーティストがステージで良い演奏をしていたらデビューのチャンスがあるように、良いプロジェクトが掲載できていたら、チャンスがある。ライブハウスのような存在。」

石田氏「ライブハウスであるなら、多くの人が入れるような箱を作らないといけないですよね。その箱に対するファンも作っていかないといけない。そして、これからもクリエイターやアーティスト、その他多くの人たちにとっての発射台になっていければいいなと思っています。」

CAMPFIREで、打ち上げに成功したツクルバは、最近原宿のFLAGという複合施設を手がけた。ここにはハイパーインターネッツのチームも入居している。筆者も見学させてもらったが、とても良いオフィスだ。

現段階で、CAMPFIREを通じて集まった資金は約980万円が最高金額となっており、そろそろ1000万円超えのプロジェクトが出てきてもおかしくない状態となっている。

「これだけの金額になってくると、簡単に集められる金額じゃなくなってきます。これだけの額が数十日で集まるというのは革命的だと思うんですよね。」

と石田氏は語ってくれる。打ち上がるプロジェクトの規模も数も大きくなっていく。その発射台を整備、改良する仕事に携わる彼は、見ているこちらが羨ましく思えてしまうほど、楽しそうだった。

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