ネット時代のものづくり対談ーーABBALabではじめるプロトタイピング(前編)

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モノが溢れる現代、大量生産・大量消費という大きな潮流だけでは満たされないニーズが出てくるようになった。この世には「雨どい専用のロボット掃除機」というものがあるらしい。面白グッズかと思いきや、意外と海外の大型邸宅ではニーズがあるのだという。

今、「適量生産・大量販売」という概念が生まれつつある。ウェブサービスのようにより低いハードルで試作品を制作し、クラウドファンディングなどの方法でマーケティングと資金調達を実施する。ものづくりの敷居が低くなったことで、逆に小さなニーズを大量に獲得しよう、という考え方だ。

この「適量生産・大量販売」をテーマに、ものづくり系スタートアップを支援するプログラムが「ABBALab」だ。

本企画では「ABBALab」設立者でNOMAD代表取締役の小笠原治氏に、特別対談として同じくスタートアップ支援を展開するMOVIDA JAPAN代表取締役の孫泰蔵氏をお迎えし、お二人のお話からものづくり系スタートアップの方法やノウハウをお伝えしたい。

ものづくりでスタートアップするとは?

SD:MAKERSで話題になったラジコンや3Dプリンターなど、分かりやすい「モノ」の影響でものづくり関連の話題を耳にする機会が増えました。お二人にとってこの「新しいものづくり」のゴールはどういうイメージなのでしょうか?

小笠原:「再発明」がキーワードの一つです。「ゼロからイチ」を生み出すというよりも、現状で100までやってきている状況を1に戻って再考してみる。ネットサービスや3Dプリンターのようなものから作れる自由な造形を加味して新しい流れを「再発明」できるかどうか。そこがゴールでしょうか。

孫:ABBALabの名称は私もアイデアを出させて頂いたんですが、この「ABBA」は「Atom to Bit、Bit to Atom」の略で、この本質は「ブラウザ」という制約で実現できなかったことを、ハードウェア、つまり「Atom」まで作ることで達成しよう、という点に
あります。

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今、ウェブブラウザができること、スマートフォンという限られた枠の中でできることの限界が見えつつあるんです。私たちもまさにそうですが、アプリデベロッパーはもはや新たなイノベーションが起こらないことに悩み、もがいている状況です。

「Bit」というネット的な発想で生まれたアイデアを「Atom」で形にする。ウェブアプリを作っていた人たちがハードウェアまで作れる環境を用意する。この状況を生み出して欲しい。

小笠原:ABBALabはぜひ誰でもものづくりが出来る場所にして頂きたいと思っていますが、例えばコーヒーカップを作りたい、というよりはダイソンを超える画期的な掃除機を発明したい、という方の登場に期待したいですよね。

SD:具体的に新しいものづくりで生み出されるプロダクトとはどういったものになるでしょうか?

小笠原:例えば「sticknfind」などはイメージしやすいものかもしれません。アメリカの老舗クラウドファンディングサイトindiegogoで93万ドルを集めたプロジェクトで、日本でのクラウドファンディング展開はCAMPFIREが実施しています。

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この他にもリープモーションを使ったアイデアやNFCなど、ハードだけで完結しない広がりが持てるものがいいですね。

なぜものづくりでスタートアップが可能になったのか?

SD:インターネットの世界では「オープンソース」「デバイス・チャネル」「クラウド」この三点がリーン・スタートアップを可能にしました。ものづくりではどういう変革があったのでしょうか?

小笠原:例えば大手の製造業がオーケストラであれば、このABBALabが求めるスタイルはバンド。エレキギターが出てきてバンドが生まれたように、3Dプリンターなどのツール類も新しいものづくりのチームが生まれる「きっかけ」のひとつになると考えています。

孫:確かにエレキギターとアンプが生まれてロックが出現しましたよね。道具によって今まで出てこなかったものが出来るようになる。

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でも少し注意したいのは、こういった新しい道具は例えばインターネット創世記に出現したPhotoshopなどのアプリケーションに近くって、確かに価格もこなれて身近な存在にはなりましたが、やはりそこにアイデアがなければイノベーションが起こることはありませんよね。

小笠原:だからこそ、アイデアを生み出すために沢山の人達がまず、新しいものづくりの雰囲気や可能性に触れる状況を作るべきと思っています。

また、通常のものづくりでは自己資金もしくはファイナンスした資金で試作からマーケティング、大量生産、販売まで全て賄うことになり、大変な資金力とリスクが要求されます。

一方で最近話題になっているクラウドファンディングに出品すれば、マーケティングや生産、販売などのリスクはクリアできるようになりました。最低限この試作品を作るために資金さえあればスタートアップできるのです。

(ーー後編へつづく

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