Osakan Spaceが作る、大阪ならではのサービス開発とベンチャーコミュニティ

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2012年1月にオープンしたOsakan Space。コワーキングとして、大阪にいるベンチャーやフリーランスのデザイナーやエンジニアなどが集い、現在では120名以上を超える会員が所属して日々新しいプロジェクトやサービスを立ち上げている。Osakan Sapaceの設立当初から、大阪発のサービスを東京や世界に発信していきたいという思いが、代表取締役兼管理人の大崎弘子氏にあった。そんな思いから「大阪の今を届け、大阪の面白いものを発信する場」として、Shoot from Osaka(n)の第一回が2012年4月に開催された。

これまでに4回開催され、先週末に第5回目が開催された。筆者は第1回から欠かさず参加しているが、回を重ねるごとに、プレゼンの質や発表されるサービスの内容もレベルが上がってきた。今回のプレゼンでも、8つのサービスがプレゼンされた。その一部を紹介したい。

お天気APIを公開し、新しい気象サービスの開発を支援する

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日本気象株式会社は、大阪に拠点を構えつつ、全国の気象情報をもとにした気象予測や環境大気調査、気象情報の発信などを行なっている。

そんな日本気象が、8月中旬にお天気APIを公開すると、同社情報システム課サブリーダーの寺田浩之氏がプレゼンした。お天気APIとは、つまり「気象情報のAPI」だ。10分毎の降水量、風速、気温などの統計分析のパラメータ、無料では公開されていない最小5km間隔の気象情報、また、独自データとして日射量予測なども公開するという。

私たちが普段目にしている無料天気とは違い、有料の天気情報になると1時間毎に細かな情報が分析できる。しかし、こうした有料お天気アプリを開発する際に必要な気象情報は、従来だとCSVデータとして全国分の情報を日々入手する必要があり、月額のコストが大きくかかってしまう。そこで、日本気象はお天気APIを公開し、全国のお天気情報ではなく必要なものを必要なものだけ入手し、スモールスタートで新しいお天気情報サービスが生まれることを期待してAPI公開へと取り組み始めた。

「これまで、特定の地域や特定の時間だけの情報を引っ張りたいという意見が多く、API公開の要望を多くいただいていた。そこで、今回からAPIを公開し、多くの人に気象に関するサービスなどを支援していければ考えて、8月からスタートすることにした」

10万回のAPIの呼び出しで1万円とし、それ未満は無料にするという。8月中旬にベータ版をリリースし、現在協業パートナーを募集している。またお天気APIを活用するため、Earth Communication Award2013というアワードを設立。ハッカソン、アイデアソンなどを防災の日である9月1日以降から順次開催し、仙台や石巻、大阪、東京などの4都市でイベントを行なっていく。

今後は、スタートアップや気象関係とは違った業種とのコラボレーション、例えばゲーム業界やアパレル業界などと連携し、今まで自分たちでは発想できなかった天気情報を使ったサービスを作れたら、とプレゼンした。

女性の体のことを考えた女性用インナーランジェリー

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女性の生理用品マーケットは約990億円だと言われている。その中でも、布生理用品は肌に合わないという認識から、多くの女性が市販の紙製品を使用しているという。

そこで、ecLaの武末麻子氏は、紙ではなく布製品としての製品を追求し、肌への優しさや心地よさなどを軸に、ランジェリーとしての高級路線をもとにした製品を作りたいという思いから、ブランドを立ち上げた。ブランド開発にあたり、和歌山県のガーゼ生地工場や大阪府の縫製工場などと一緒に制作を開始。こだわりをかけて約1年の時間をかけてecLaを開発した。

「第一子の平均出産年齢が上がっている現在、女性自身が出産も含めて自分の体と向き合うことが必要不可欠。そのためには、自身が使う製品の1つ1つにこだわりを持ったものを使ってもらうきっかけになればと考えた」 

また、商品だけでなく女性けにランジェリーなどに関する情報交換などを行うシークレットのイベントも開催。これまで5回のイベントを開催し、のべ70名以上の参加者が集い、普段なかなか話をすることができない体の問題に関しての話ができるコミュニティ作りにも力を入れている。現在は関西を中心に活動しているが、8月1日からは東京ランジェリープロジェクトをスタート予定だ。クラウドファンディングを利用して、製品販売のみならず関心の高いユーザとのコミュニティを形成し、次なる製品を作って行きたいという。秋には、次のアイテムも販売予定だ。

作家とデザイナーをつなぐMyCover

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誰でも出版できるオンデマンド出版「MyISBN」をリリースしたデザインエッグの佐田幸宏氏。三省堂と連携してエスプレッソブックマシーンで注文した書籍をその場で印刷製本することも可能とするなど、オンデマンド出版の取り組みを広げている。しかし、MyISBNでは原稿作成はできるが、本の表紙は作家が用意しなければいけない。一般の書店と違い、Amazonで一覧される書籍では、表紙のデザインで大きく売上に影響するという。

そこで、オンデマンド出版をしたい人がデザイナーに表紙をデザイン発注をするため、作家が書籍の情報を入力しデザイナーに表紙制作できるのがMyCoverだ。作家は書籍の内容、表紙デザインイメージ、そして発注価格をサイト内で記載する。デザイナーは自身のポートフォリオをプロフィールに登録し、過去の実績などをもとに発注者に受注価格などを提示し、受注申請をする。作家が、受注申請をしたデザイナーの中から一人を選択し、そこからコミュニケーションを行ないデザインを完成していく。

「従来のクラウドソーシングのようなコンペ形式ではなく、受注者も自身に案件の値段をつける。予算を仮にオーバーしても、発注側と受注側とでしっかりとコミュニケーションをし、制作を完成していくことができれば、継続的な関係性も築くことができる。コンペではなく、互いの顔が見える関係性の中から、デザインの受発注ができる仕組みとして提供していきたい」

手数料などの細かな部分は現在調整中という。8月に登録するデザイナーの募集をかけ、サービスをリリースしていく。

ニッチでも全国に届くサービスを作っていく

Osakan Space 代表取締役の大崎弘子氏
Osakan Space 代表取締役の大崎弘子氏

これまで過去5回のプレゼンを見て感じたものとして、始めから世界を視野に入れてサービスなどを開発するようなものではなく、ニッチだが確実に顧客のいる層や、しっかりとニーズに応えるためのサービスが多く見受けられた。

「ただのサービスでは、すぐにつぶれてしまう可能性ある。しかし、100円でも確実に利益が出せるサービスを作ることで、次への足がかりとなる。届く人にしっかりと届くサービスを展開していこうと考えることが、ベンチャーには大事だと思っています」

Osakan Spaceの大崎氏は語った。サービスリリース当初から、マネタイズを意識することでビジネスとしての基盤を構築することができるという。Osakan Space発のサービス「さのもの」も、個人発でニッチなサービスながら着実に売上を伸ばしているサービスの1つだ。

さのもの

「さのもの」は、電気機器部品を加工してアクセサリーなどを開発するブランドで、個人ECプラットフォームのBASE上で販売を展開している。前回のShoot from Osaka(n)のプレゼン後から注目を浴びているという。最近では、渋谷パルコの LOGOS GALLERY にて期間限定イベント「PRINT UP-CYCLING STORE」で「さのもの」の商品が並ぶなど、大阪発で全国に商品が展開されるなどの動きを見せている。

大阪発のサービスを、をこうした継続した場を通じて発信していくことで、地元メディアも注目するイベントとなったという。また、プレゼンター同士もライバルという認識でははなく、互いに大阪を盛り上げていくパートナーという考えをもっており、事前にプレゼンのリハーサルをやり、互いにプレゼンのアドバイスをするなどの取り組みもされるなど、共創意識を高めている。

福岡におけるスタートアップの盛り上がりと同様に、大阪からも福岡とは違った形で起業やサービス開発としてのコミュニティが醸成されている。大阪という地域だからこそ、互いの顔が見える関係の中から、必要な情報やアイデアをうまく活用していきながら、新しいサービスを作り出そうという文化がでてきている。地方としてやれること、地方だからこそできることはまだまだ存在するのではないだろうか。引き続き、地方の取り組みについて取材を行なっていきたい。

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