ネットが変えるリアルビジネスーーネット宅配クリーニング「リネット」がジャフコから3億円調達

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クリーニングの宅配なら24時間出せるリネットクリーニング

以前、本誌ではクラウド化するリアルビジネスという話題をお届けしたことがあった。宅配弁当のごちクルや個人レッスンのCyta.jp、印刷のラクスル、クラウドキッチンの宅麺といった「リアルビジネス」をネット活用で効率化し、新たなビジネス構造で勝負しているプレーヤーたちだ。

そして今日、またここにひとつ新たなプレーヤーが追加されることになる。

ネットで宅配クリーニングを注文できる「リネット」を運営するホワイトプラスは8月28日、ジャフコが運営する投資事業有限責任組合を引受先とした第三者割当増資の実施を発表する。調達金額は総額で3億円、払込日などの詳細については非公開としている。

サービス三年目、ステルスで臨んだ「クリーニング」のネット化

ホワイトプラスの創業は2009年。運営するネットクリーニングの「リネット」は、ネット予約すると最短2時間で宅配事業者が衣類などを自宅に受け取り、同社と提携する特定工場でクリーニングして届け返してくれるサービス。ふとんや靴など派生したサービスも展開している。

ありそうでなかったこのサービス、なぜいままでなかったのだろうか。ホワイトプラス代表取締役の井下孝之氏に立ち上げの経緯などを聞いたが、確かにおいそれと手を出せる代物ではなさそうだった。

「相当怒られましたよ(笑。ネットで注文するクリーニングをやろうと決めて、クリーニング工場に足を運んで相談してみるわけです。そしたらネットで売れるわけないだろうって。クリーニングってクレーム産業で、受け付ける人の技術でその比率が全然違うんです」(井下氏)。

三年かかった受付の「効率化」ーー会員数は三万人に

最も肝心なクレームを減らすべき「検品」箇所をネット化して逆に増やしてしまってはたまらない。あまりにも泥臭いビジネスの現場があるからこそ、今まで誰もやらなかった。ーーこういう背景が分かったホワイトプラスのメンバーは、諦めるのではなくここで「自前のクリーニング店」を持ってしまう。

「自分たちでお店をやって検品したんです。受付が一番大変で、発送梱包をどうしたら一番しわにならないか、そういうのを三年間かけて経験しました」(同社取締役兼CMOの斎藤亮介氏)。

井下氏はこの経緯で実際にクリーニング師の国家試験も取得してしまう。結果、接客検品という人的なノウハウで運営されていた受付のネット化は順調に進み、効率化に成功したというわけだ。現在では宅配事業社と連携し、注文を受けてから最短で2時間後は受け取り、検品する管理システムも構築を終えている。

「現在、会員数は三万人の規模になりました。これまでは、価格帯的にワイシャツ350円ほどのブランド品を中心とした層を狙っていましたが、工場との直接取引などにより、もう少し下の価格帯でも利益がでる構造になっています」(井下氏)。

2009年に三人でスタートアップしたホワイトプラス。スマートフォンなどの登場で常にネットに繋がる世界がやってくることを想像し、三人はリアルな生活サービスとネットを繋げることにチャレンジした。

泥臭いビジネスだからこそ、おいそれと誰でもやってこれる現場ではないだけに、三年間地道に積み上げたノウハウとシステムは堅牢な印象を持たせてくれる。

全国の中小印刷工場を仮想的にひとつの「クラウド印刷工場」として見立て、受付や発注を効率化したラクスルとモデルは似ているが、クリーニング工場については同じように仮想化することはまだ難しく、特定の提携工場での運営となっている。しかし、今後会員数が伸びれば、稼働率の落ちている工場への拡大も可能性は十分に考えられる。そうなれば市場は大きい。

これまでステルス気味にメディア露出も控えていたという同社だが、オペレーションなどの足回りが固まった今、調達した資金を背景に会員数100万人獲得を目指すそうだ。

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