「現時点でアドテクはメディア側にメリットが薄いですよ」ーー多様化するメディアのマネタイズを読み解く #bdash

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スマートフォンシフトが起こる今、ゲーム、アプリ、小さなサービス全てが「メディア化」していく時代に突入している。サービスが多様化する一方、マネタイズの手法はあまり変わっていない。どこかのサードパーティーを引っ張ってきて「とりあえず広告回せばなんとかなるかなという」状態も多い。

このセッションではこのなかなか複雑でブラックボックス化しやすいアドテクノロジーを、バイサイド、セルサイド双方からビジネスの視点で読み解こうと試みたものだ。

登壇したのは代理店側としてアイレップ代表取締役社長の紺野俊介氏、メディアとしてアイスタイル取締役兼COOの高松雄康氏、DSP/SSPなどのプラットフォーム側としてプラットフォーム・ワン 代表取締役兼デジタルアドバタイジング・コンソーシアム(DAC)の徳久昭彦氏。モデレートはmedibaのCMOも務めるスケールアウト取締役CTOの菅原健一氏が務めた。こちらもいくつかのポイントにまとめてお伝えする。

メディアマネタイズの今

まず、ネット系メディアの現状について高松氏から簡潔な説明があった。いわゆる「枠」と呼ばれるプレミアム広告にタイアップ、三つ目がDSPなどのサードパーティーを使ったものが分類となる。

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10年前「枠売り」がほとんどだったネット広告は徐々に「運用」広告へと移行し、さらに最近ではDMPなど「データ」を使った広告が主流に近づいてきている。

広告主や代理店などのバイサイドはこのデータを上手く活用して仕入れなどを効率化できているが、一方でメディアサイド(セルサイド)はこの活用が上手くいってないのではないかと徳久氏は指摘する。「アドテクノロジーは基本的に(広告を)買う側主導ですよね」と高松氏も続く。

アドテクノロジーを採用するメリット

ではバイサイド、セルサイドにとってアドテクノロジーを活用するメリットはどこにあるのか。

高松氏の回答はまたも簡潔だ。「営業工数を減らせることにかぎる。メディアの本質はユーザーと向き合うこと。いかにしてそこに経営資源を向けるか。その意味での貢献度という価値はある」。

ただ「バイサイドのメリットで成り立っているモデルなので、例えばインプレッション単価0.01円ですと言われても困っちゃいますよね(苦笑」と現時点でアドテクはメディア側にメリットが薄いとも指摘する。

メディアは自社のマネタイズをもっと自分で考えよ

スマートフォンアプリやサービスが増え、このメディア・マネタイズにやはりサードパーティー配信を活用しているスタートアップは多いはずだ。しかしスマホにはPC時代とは違った画面による問題が発生する。

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「PCはプレミアムっていう枠があるんですよね。でもスマートフォンはそれが作りにくい。それで結局”運用系”に向かってしまう。でもプレミアム的な運用方法を自社で作って考えないと結局最終的にはマネタイズが出来なくなる。だからこそメディアはアドテクノロジーを研究しなければいけない。なんでもかんでもサードパーティニーに頼ってというのではビジネスが崩壊してしまう」(高松氏)。

規模と価値

この話題もなかなか興味深い。メディアビジネスは規模を追うべきか、価値を追うべきか。

高松氏が言及していたが、ニッチなサービスが多い現状、規模を追えないから価値を作っている、というのが本音かもしれない。ただその価値を何らかの形で指標化できてなければ、やはりわかりやすいインプレッションでコントロールしたくなるのも理解できる。そこから規模追求への道のりが開く。

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紺野氏も「マーケティングやってない会社が多いですよね。『コンテンツ is キング』という言葉がありますが、Googleのインデクスが変わったから下方修正しますって良質なコンテンツあればそんなの関係ないじゃないですか」と指摘していた。

メディアはどのようなパートナーを選ぶべきか

このセッションの話題はメディアのマネタイズにある指針を見いだすことだった。ではメディア(私たちのような小さなブログも含めて)はどうすべきなのか。一言でいえば「メディアを理解してくれるバイサイドパートナーを見つけること」となりそうだ。

「裏側も含めてメディアという立場を理解してくれるパートナーが必要。ただ単に枠をくださいと言ってくる人たちは残らない」(高松氏)。

高松氏はさらに代理店側が広告主についてる時代は終わったと続けていた。メディアが多様化し、アドテクノロジーが複雑化している今だからこそ代理店はメディア側に入って一緒にやっていくことが重要と語る。「スタートアップに入り込んで、メディアが大きくなったらそれこそ一生付いていきますよ」(高松氏)。

これは本当にそう思う。

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