経営を持続させる三つのアドバイスーードリコム内藤氏、CROOZ小渕氏、セプテーニ・ホールディングス佐藤氏が語る #bdash

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本稿は、現在大阪で開催中の招待制カンファレンス「B Dash Camp 2013 in 大阪」の取材の一部だ。

近年の日本のスタートアップ環境は支援プレーヤーの増加や、有力プレーヤーの出現によってインフラが構築されつつあり、資本金が1000万円必要だった過去の「脱サラ起業」とは全く違うステージに辿り着きつつある。最近、私が出会ったスタートアップも10代から60代と幅が広い。

一方で数年で消えていってしまうプレーヤーも多い。中小企業白書(2011年版)には10年後には3割、20年後には5割の企業が退出するというデータもある。スタートアップの敷居が低くなっても、それを継続することは当然難しい。

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そういう意味で「事業を継続する」という実体験は後続の経営者にとって参考になるだろう。ドリコム代表取締役社長の内藤裕紀氏とCROOZ代表取締役の小渕宏二氏、セプテーニ・ホールディングス代表取締役社長の佐藤光紀氏がセッションで語った内容をポイントにまとめた。

事業継続の気持ちが売却に「揺れる時」

佐藤氏は「日本のイグジットも増えてきた。M&Aが増える一方で会社を存続発展させてIPOさせる例は減っている」と登壇者二人に最近増えている事業売却の話題について意見を求めた。

小渕氏は会社を売却するということがスタートアップのエコシステムに必要であるとしつつ、「社員の顔をみて僕が裏切ることはできないなと。和製の自分にとってはバイアウトができない」と”カネに目がくらんだ”安易な売却に否定的だ。

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一方、内藤氏は事業意欲にポイントがあるという。「会社を売ってしまってやることなくなったら暇ですよね。何をして過ごしたらいいかわからない」。

また、最近話題になるスタートアップの売却金額が低いことにも触れて「売却の金額が5億円や10億円が多いじゃないですか。買いやすい金額ですよね。例えば創業者のシェアが半分で5億円とか手にするとして、使ったらなくなっちゃう金額じゃないですか。やりたくて始めた会社がなくなって、やることもなくなる。しかもそんなに使えるわけじゃない」と静かに語る。また「どうして売っちゃうのかな」とも。

辛いけど「継続しなければならない時」

続いて話題は経営で一番辛かった時期に及ぶ。

「上場して1年後は赤字。13億円ぐらいで買収した会社があって、市場がライブドアショックの影響を受けてデットで借りた。決算みると短期の借入が20億円ぐらいあって、銀行から借入した人はわかるんだけど、2期連続赤字だと担保とられて個人に取り立てがくる」(内藤氏)。

20代の内藤氏は会社の黒字化も迫られる中、個人的に会社に貸付をする事態を経験し精神的にも追いつめられたと話す。当時、楽天からの出資を受け入れるのだが、100%買収という話題もあったそうだ。しかし、それでは事業意欲がなくなるとその話を断る。

小渕氏は7つの事業転換を経て現在のソーシャルゲーム事業を成長させている。この転換期に社内のざわつきがあったかという質問に対し、「変化に対応できる文化があった」と振り返る。

事業転換というコーポレートカルチャーが社内に根付いたことに関して「生き残るために変わるのは当たり前だ」という言葉は重い。

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また、内藤氏は何事も早めに決断することも重要と語る。「例えばガラケー(関連事業)が厳しくなるのが分かって手をつけられない。赤字になって初めて着手する。そういう意味では余力がある時に手を打つ」。

人員の配置のA/Bテスト

セッションで一番印象的だったのは、両社とも人員配置が重要であることを理解しながら、小渕氏が「これはヘタこたいな、と思ったのは事業を決断したのにそこに優秀な人を異動させなかったとき」とその難しさを語っていたことだ。

会社がもっとも大切と考える「要所」にエースを投入しなければならない。一方で、その人材が配置されている箇所は既に事業の中枢であることも多い。佐藤氏はこのジレンマとも言える場面に「人員配置のA/Bテスト」というアドバイスを送っていた。

「小さな成果の積み重ねでA事業からB事業に異動したらこういう結果がでた。そういうA/Bテストのようなことを小さくやって、最初は反対派が多い現場から同意形成をつくり、トップ判断を下す」(佐藤氏)。

この助言には登壇の両者もなるほどとうなずいていた。

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