知育×スマートデバイス市場を開拓してきたパイオニアーースマートエデュケーションが次に目指す先

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スマートフォン、タブレット型端末の世帯への普及率が年々上昇している。TechCrunchに掲載された記事では、英国情報通信庁(Office of Communications, Ofcom)が行った調査によれば、子どもたちによるタブレットの利用が増加しており、とりわけ、ますます多くの低年齢児童が、タブレットでビデオを見たりゲームをプレイしたりインターネットにアクセスするようになっていることが紹介されていた。

ベネッセ教育総合研究所のサイトに掲載されていた「子どもの探究力を伸ばすタブレット端末の可能性」 という識者インタビューでは、紙やPCと比較して、スマホやタブレットのユーザーインターフェイスの違いが学習効果に影響を与えることについて触れられている。曰く、形がイメージしやすい、写真が数えやすい、写真を思い出しやすい、写真のイメージを思い出しやすい、色を思い出しやすい、退屈しないといった効果が期待されるそうだ。

スマートエデュケーション・池谷氏

今後、伸びが期待されるこのマーケットにおいて、いち早く取り組みをはじめていたスタートアップが、スマートデバイスで幼児向けに知育アプリを展開するスマートエデュケーションだ。本誌でも何度か取り上げてきたスマートエデュケーションについて、同社の代表取締役社長池谷大吾氏に話を伺った。

スマートエデュケーションのこれまで

スマートエデュケーションは2011年6月に創業、今年の6月にシリーズBの資金調達を実施しており、シリーズBでの調達総額は3.5億円となっている。同社の経営陣は元シーエー・モバイルのメンバー。なぜ、この分野の事業に取り組もうと考えたのだろうか。

まず起業したいという想いが先にあり、ガラケーからスマホへシフトすることを予測していたタイミングでした。スマホの領域で何か新しいことにトライしようと考えていて、ソーシャルゲームの事業も候補に上がったのですが、現在はない市場を作ることが面白いのでは、という話になり、教育というキーワードに着目しました。

教育というフィールドを選んだ池谷氏、その中でも幼児向けの知育を選んだ理由については、以下のように語ってくれた。

「教育」はガラケーではなかったテーマでしたが、スマホでしたら十分にユーザーは学習することが可能です。私自身にも子どもがおり、よくiPhoneを触っている様子を見ていました。スマホはインタラクティブ性が高く、幼児や高齢者などこれまでITに弱かった人々向けのデバイスです。そのため、幼児に向けたサービスを提供しようと考えました。北米ではすでにプレイヤーがいたこともあり、この分野に決めました」

親子で共に遊ぶというライフスタイルを提案

smarteducation

こうした経緯でスタートしたスマートエデュケーションのアプリ「おやこでリズムえほん」は大ヒットを記録する。

これは音に合わせて、楽器を鳴らして遊ぶことができるアプリだ。子どもだけが遊ぶのではなく、親子で一緒に遊ぶことができるアプリとなっており、スマートエデュケーションはこれにより親子で共に遊ぶというライフスタイルを提案した。

さらに当時教育アプリにはほとんどなかったフリーミアムモデル。無料でアプリをダウンロードしてもらい、その後有料の音楽などで課金するというモデルをとっていたこともあり、多くのユーザーが同アプリをダウンロードした。

今では、同社がリリースしたアプリの累計ダウンロード数は440万に達している。

コンテンツ課金から月額課金へのシフト

スマートエデュケーションがリリースしているアプリは、高い月間のアクティブユーザー数を誇っている。80万人の月間アクティブユーザー数を誇り、ダウンロードしたアプリを翌月にプレイする人数も60%を超えるという。スマートエデュケーションではこのMAUを高く評価している。

スマートエデュケーションのビジネスはこれまで、アプリをダウンロードしてもらい、その中でコンテンツを購入してもらうコマース的なビジネスだった。これではビジネス的な広がりを持つことは難しい。

この課題を解決するために、同社は現在月額課金制へのシフトを図っている。ベネッセなどをみればわかるように、教育系サービスは月額課金が向いている。さらに、Google Playではキャリア決済に対応しており、クレジットカードの登録がなくとも月額課金が可能になる。キャリア決済は、ガラケーでも使われていた仕組みでもあり、アプリを子どもに使わせようと考える母親層にとっても馴染みのあるものだ。

以前まで、アプリの平均単価は1000円ほど。月額500円ですべての楽曲を使用可能にし、ユーザーが2ヶ月以上アプリを利用してくれれば良い計算だ。高いMAUに、キャリア決済の対応という後押しもあって、月額会員の数を増やしている。

世界での展開

ビジネス面での広がりも見えてきたスマートエデュケーション。その目は海外にも向いている。現在同社は海外マーケットに向けたアプリを開発しているところだという。日本マーケット向けに開発したものではなく、海外に向けたアプリを一から開発しているそうだ。

ビジュアルの面で日本は独特な傾向があることがわかりました。日本の場合、平面的デザインを好みます。海外ではピクサーなどを見ればわかるように、3Dを好む傾向があります。

以前、同社は韓国でのローカライズ展開でもまずまずの成功を収めていると語ってくれたが、現状は北米に狙いを定め、いずれASEAN諸国への展開も考えているという。日本には競合はいないと語る同社も、海外には北欧拠点の「Toca Boca」という競合がいる。Toca Bocaはスマートエデュケーションよりも10倍ほどダウンロード数。だが、その数字が海外マーケットの大きさを証明している。

「会社のモノづくりも、海外を見据えたモノづくりに変えていきます」

と、池谷氏は今後のビジョンを語ってくれた。スマートエデュケーションは、現在取り組んでいる市場をレッドオーシャンだとは考えていない。

世界を見ても、競合が100社もいないような黎明期。差別化するには、先行するのが一番です。きちっとクオリティのプロダクトを、ベンチャーならではのスピード感で提供していきます。

この1年でダウンロード数は1000万の大台を超えたいと考えています。売上に関しても、月1000万〜1500万ほどの数字を、1年以内に月商1億までは持っていきたいと考えています。

スマートエデュケーションは今後、知育のプラットフォームとなるようなアプリのリリースも控えていると語ってくれた。知育×スマートデバイスというマーケットがあることを証明してきた同社は、今後どこまでその市場の広さを示してくれるのだろうか。

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