スタートアップ・エリート達へのメッセージ——任天堂 岩田聡社長が語るイノベーション追求の重要性 #bdash

Rick Martin by Rick Martin on 2013.10.8

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任天堂株式会社 代表取締役社長 岩田聡氏

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

本稿は、B Dash Camp 2013 in 大阪の取材の一部だ。

B Dash Camp in 大阪1日目のハイライトは、任天堂の岩田聡社長を迎えた最後のセッションだった。彼がこのようなオープンイベントに姿を現すのは稀だが、午後のソーシャル・ゲームのセッションに続いて、特別な計らいによるものだ。

岩田氏はスライドを使って話を始めた。任天堂は1889年花札の会社としてスタートした。そこから、どのようにテレビゲーム、コンソールゲームへ移行して行ったかを話した。任天堂は歴史のある会社だが、常に新しいものを作り出そうとしていると、岩田氏は強調した。

任天堂について語るなら、最近亡くなった山内溥前社長の存在を無視できない。失敗しても気にするなと、彼は常々言っていた。いいことも悪いこともあるが、それが任天堂の歴史に反映されている。[1]

モバイル業界出身の聴衆が期待したように、岩田氏は、任天堂が長命な会社で、イノベーションがあり、新しいもので世界を驚かす文化があることについて言及した。

他の人と同じことをやっていたら疲れてしまう。任天堂は競争が得意な会社ではないので、既存の市場で競争するのではなく、常に新しいものを作りチャレンジする必要があるのだ。

任天堂社長・岩田聡氏(肥左)、一橋大学大学院教授 佐山展生氏

任天堂代表取締役社長 岩田聡氏(左)、
一橋大学大学院教授 佐山展生氏(右)

任天堂のファンが、セガのようにモバイルデバイス向けのゲームを作ってほしいと声を挙げる中、任天堂は以前から態度を変えていない。Q&Aセッションで、聴衆から寄せられた最後の質問は、岩田氏の話す間、皆が気になっていた話、すなわち、任天堂はハードウェア向けのゲーム開発を断り続けるのかどうか、というものだった。岩田氏の反応は、予想通り素っ気の無いものだった。

誰も将来のことはわからない。しかし、私は任天堂でそれをやらないと思う。

私は数週間前、近い将来、任天堂が DS Phone を作ってくれるのを夢見ていると書いた。岩田氏のコメントによれば、それはあり得るシナリオではなさそうだが、その可能性について完全には否定しなかった。

私は、任天堂復活への望みを諦めざるを得なかった。しかし同時に、岩田氏の話を聞いて、任天堂は完全に新しい何かを求めていることがわかった。それは私のような、昔ながらのゲーム好きにとっては楽しみな話だし、これまでに任天堂が3回に渡って [2] 世間を魅了してきたようなものだ。任天堂が再びホームランを打つことを楽しみにしているが、任天堂がもはやそのようなことができるのか、私は懐疑的に思っている。

岩田氏は話を続けた。おかしな話ではなかった。

誰もがやっていない事業に着手することをブルーオーシャン戦略と言いますよね。DSを作ったとき、人々はデュアル・ディスプレイ(二画面)なんておかしい、高齢者はゲームなんてしない、と言った。しかし実際には、彼らはゲームをしている。最初のドアを開けることこそ、最も面白いことなのだ。

岩田氏は、ポケモンを海外に出すときに直面した挑戦について、話を続けた。

アメリカで、カワイイモンスターが受け入れられるか、と言われた。ピカチュウを筋肉隆々のキャラクタにすることを勧める人もいた。もし彼らのアドバイスに従っていたら、ポケモンは成功しなかっただろう。脳トレは日本でヒットしたが、私が世界で販売することを提案したら、誰も話を聞いてくれなかった。社長が言っているのに。

しかし実際には、脳トレは、世界のどこよりもヨーロッパで売れている。岩田氏はグラフを見せて説明した。

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岩田氏は、任天堂の社員のヤル気を引き合いに出し、任天堂を賞賛した。

社員に、自分の仕事がもたらす利益を見せることは簡単だ。社員がヤル気でいてくれれば、それは会社にとって最良の状態だと思う。

スマートフォン革命に直面する中で、任天堂の頑固さ(訳注:DS Phone を作らないこと)で任天堂を非難するのはたやすい。私はこれまでもそうしてきたし、今後もその姿勢を続けるだろう。しかし、任天堂がゲーム業界を変える奇跡を起こすことを望んでいないのかと言えば、そうではない。

任天堂という巨人は、今や業界では負けの立場にある。どうしてかはわからないが、私は今も任天堂を応援している。


  1. 本稿における発言の引用は同時通訳によるもので、岩田氏の発言は日本語で行われた。したがって、引用は正確ではない可能性があるが、概ね確かだと考えている。
  2. ここで言う三回とは、任天堂エンターテイメントシステム、ゲームボーイ、Nintendo DS のことだ。私は Wii は買わなかったので、その波には乗り遅れたことになる。

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Rick Martin

Rick Martin

東京在住。日本、中国、アジアのテクノロジーについて、Tech in Asia、Japan TImes などの出版物に寄稿。彼のウェブサイト 1Rick.com も要チェック。

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