翻訳ブログメディアの作り方と可能性

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2013.10.4

10月7日、来週の月曜日にはこのSD Japanは新しくTHE BRIDGEに変わる。2010年6月のイベント開始から約3年、パートナーたちと本格的に翻訳ブログメディアを始めたのは2011年9月からだ。

先日、私はこのサイトの翻訳をずっと手伝ってくれたConyacの山田氏(エニドア代表取締役の山田尚貴氏)と久しぶりに会う機会があり、そこで新しい翻訳メディアのあり方や方法論、ビジネスについてしばし話をしてきたのでみなさんにも共有したい。

SDとConyacで積み上げてきたノウハウも一部含まれるので、参考になる方は自由に使って欲しい。

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ネイティブな文化と言語の壁

情報がマスメディアという大きな粒度だけの時代から、時間と場所を問わないウェブ、時間軸をもっと細かく刻んだブログやTwitterなどのアップデートにまで細分化され、その情報粒度はどんどん小さくなっている。

さらにソーシャルという関係性で情報が伝播するようになり、個人の「今何食べた」という粒子のような情報が一瞬で世界を駆け巡るインフラができつつあるのが今、という時代だ。

しかし日本に住み、日本語だけで生活をしていると、この多くの情報から自然と隔離されることになる。これが言語の壁だ。

世の中を見渡してみると、まだまだ私たち日本人がスムーズに取得できていない情報が溢れている。例えば世界各国の料理の情報をひとつにまとめたブログネットワークを探すとしよう。日本語で「世界、料理、ブログ」で検索すればなんとなくそれらしきものが出てくる。しかし情報はあくまで「日本人が作った」世界の料理情報がほとんどだ。

一方英語で「world food blog」で検索すると、中には多種多様な国の人々が書いた「各国」の情報に辿り着けることもある。しっかりと現地で生まれた人の言葉を掴む。この差は大きい。

英語でそのまま読める人は別に問題ない。けど、多くはそのままでは読みにくいと感じるはずだ。だから、私たち日本人には翻訳という技術が大切になってくる。

私の考える翻訳ブログメディア

私が以前、TechCrunch Japanの運営チームにいた時、ある翻訳者が「所詮はブログ、気楽にやればいいよ」と声をかけてくれたのを未だに大切にしている。

翻訳というのはどうしても学術的な側面があり、中には厳密な言語解釈を巡って議論が起こることもある。しかし、ブログメディアは書いてる方も読んでいる方も(乱暴に言えば)気楽に読める「日記」の延長だ。

だから、正直翻訳の精度についてはあまり重要視はしていない。もちろん、ファクト箇所や数字(結構間違える)などは正しく翻訳しなければならないが、それ以外の例えばニュアンスだったりする箇所はあくまで「ニュアンス」が伝われば原文と違っていても構わないと思う。

気になる人は原文を当たればいいだけの話だからだ。なので、ポイントを次のように考えている。

– 世界で起こっている現地の情報やライターの雰囲気が「伝わる」
– 日本語として「読める」文章になっている(英語と日本語では表現が異なる)
– 単発ではなく毎日出せる情報量を確保するフローを持つ

従来、翻訳メディアを運営している編集部というのは大きなチームやしっかりとした翻訳者を抱えている所が多かった。しかし、私はほぼ個人運営のような状況でもConyacのようなサービスを使えば、これを運営できることを実際に体験した。次にその具体的な方法を共有してみたい。

Conyac_for_Business_-_クラウドビジネス翻訳サービス

翻訳ブログメディアを運営する4つのステップ

運営に必要なステップは次の4つが重要だ。

1:翻訳する元となるソースを確保する
2:ソーシャル翻訳サービス(※)で翻訳フローを作る
3:ビジネスモデルを作る
4:毎日運営する
※ソーシャル翻訳:クラウドソーシングのひとつで、翻訳を時間の空いてる訳者に依頼できるサービス。Conyacやgengoなどがある。

「1」に関してはもう、該当ブログの運営者にコンタクト取り続けるしかないだろう。大手のブログメディアになれば、有料でライセンスなどを出しているところもあるし、個人なら仲良くなってOKなんていうのもある。今、日本国内で有名になっている海外ブログもスタートはこの程度のきっかけだったりするものもある。

「3」と「4」はさすがに私たちのノウハウを公開できないが、ひとつだけ「PVを捨て去る」というヒントだけ残しておく。

「2」についてはもう少しだけ具体的にお伝えしたい。

ソーシャル翻訳を活用した翻訳フロー

Conyacの山田氏と私たちはこの数年間、どうやったらプロの翻訳者に依頼するのと同じような品質をこのソーシャル翻訳で実現できるか考えてきた。でも結論は違っていた。ソーシャル翻訳だけで完結させず、フローの一部に使うのが正しいと考えている。すなわち次の通りだ。

1:ソーシャル翻訳で「下訳」を実施する
2:専門用語をチェックする
3:読みやすい日本語に編集する

まず、原文というのをおおまかにソーシャル翻訳で訳して、ひとまず日本語として「読める」状態にする。この時点で誤字脱字はあまり気にしない。次に専門用語や独特の言い回しのチェックだ。例えば「〜nabs $1M」というタイトルがあったとして、そのまま訳せば「100万ドルを獲得(というよりぶんどる、かな)」となってしまう。

でもスタートアップ系ニュースでは「あ、これは100万ドルを結構強引に調達したな」と分かる(もちろん本文も確認するが)ので、その表現に変更した方が何かイベントで賞金を獲得したのか、調達したのか明確に分かってよい。

そして最後に重要なのが「読みやすい日本語にする」という作業だ。しばしば英語表現では直接的に書かれることが多く、日本語で読んだとき固く感じてしまうことが多い。

重要なのは意図を汲んで日本語の読み物として読みやすく、場合によっては表現を変えて伝えることが必要だ。(よくあるのがこの過程で原文と違う表現になり、違いを指摘されることがある)

工程を分けるメリット

つまり「1」はソーシャル翻訳、「2」と「3」は編集人がひとりいれば毎日数本は配信ができるようになる。

プロに依頼すればこの全工程をやってくれるがもちろん専門翻訳になるのでコストが高い。

しかし「1」は英語ができなければ実施できないが、「2」と「3」は英語がそこまで得意でなくても(もちろん読めないレベルはアウト)実施できる。

ここがポイントで具体的な数字は公開できないが、私はこのフローのおかげでコストを抑え、個人運営時でも毎日翻訳記事を配信することができた。

翻訳ブログメディアの可能性

冒頭にも書いた通り、この世にはまだ日本人がリーチしきれてない(正確には読みづらい)英語圏の情報、ブログがごまんとある。さらにブログ運営に関するコストも下がり、オウンドメディアを取り入れるプレーヤーも増えてきた。スタートアップでもブログひとつ作って情報を配信できる時代だ。

もし、書けるネタが少ないのなら、海外で面白い情報を配信しているブログを見つけて交渉し、この翻訳フローを使って配信してみてもいいかもしれない。自分で書けるタイミングは少なくても、翻訳記事と合わせるとそれなりのボリュームになるはずだ。

山田氏とよく話をすることがある。「この世にある情報が本当にすべて読みやすくなれば、絶対に人生が変わるよね」と。読む側が語学を勉強することも大切だが、同時にこういうアプローチで沢山の翻訳ブログメディアが生まれれば、情報が人をつなぎ、世界に出ていくきっかけを作ることになるかもしれない。

そういう意味も込めて、二人の会話と私の体験をここに残しておく。

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