【投資家・起業家対談】「最初は猜疑心しかありませんでした」ーーサムライインキュベート榊原氏×エニドア山田氏(1/3)

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2013.11.15

投資家と起業家の関係は興味深い。特にシード期の投資家と起業家は共同で経営にあたり、資金だけでない特別な関係を結ぶことが多い。そこにはどのようなやり取りや葛藤があるのだろうか。このインタビュー・シリーズでは、投資家と起業家のお二人に対談形式で「二人だから語れる」内情に迫る。

今回は日本の独立系インキュベーターの草分け的存在、サムライインキュベート(以下、サムライ)から代表取締役の榊原健太郎氏と、同インキュベーターの運営ファンド一期生で、ソーシャル翻訳サービス「Conyac」を運営するエニドア代表取締役の山田尚貴氏が対談する。

エニドアの創業は2009年2月。以前務めていた企業で、留学経験のある山田氏に短いメールなどの翻訳依頼が多かったことからConyacの原型となるアイデアは生まれる。ビジネスコンテストでシード資金を獲得した山田氏は友人の小沼氏(小沼智博氏、旧姓は菊池)とスタートアップし、サムライインキュベートとの出会いで本格的な事業への道のりを切り開いた。

2011年12月にユナイテッド(旧ngi group)から、2013年10月にはユナイテッド、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルから資金調達を実施している。(文中敬称略)

話題は二人の出会いから始まった

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会社口座残高は1万円ーー出会いはファーストフード店

山田:2010年にタリーズですよね。新宿三丁目の。

榊原:ノボット(※1)は新橋のケンタッキーなんですよ。サムライの第一世代と出会ってるのは大体ファーストフードですよね。当時口座に5000円しかなかったんでしたっけ?

山田:もうちょっとありましたよ。確か…1万円ちょっと。

榊原:自分のじゃなくて会社の口座残高ですよね。

山田:前の週の金曜日とかにTechCrunchJapanのイベントがあって、そうそう、それ平野さんがやってたヤツ(※2)ですよ。

榊原:あれなかったら会ってなかったですよね。

山田:その後に榊原さんからサムライインキュベートですってメールが届いて「怪しいな」って削除した。

榊原:ちょ(笑。元々「翻訳こんにゃく作りたい」って前から言っていたら「榊原さんTechCrunchJapanにこんな記事載ってますよ」って教えてもらって。僕からアプローチしたのは唯一、山田さんだけですね。

山田:ええ!そうなんですか?

榊原:そう。唯一ですよ。

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山田:僕がサービスのこといろいろ話してるんだけど、あんまり興味なさそうでしたよ。でも、口座残高の話になってほとんど残ってないって言ったとたん「投資する!」って急に言われて(笑。

榊原:そうでしたっけ(笑。

山田:ちょっと検討させてください、って一回会社に帰って二人で「悪い人じゃないと思うんだけど、サムライインキュベートって知ってる?」って小沼に聞いたら「いや、俺知らん」って返ってきて。

一番最初に投資してもらってた担当者の方に調べてもらったんです。そしたらその方が太河さん(EastVenturesの松山太河氏)と知り合いで、太河さんが榊原さんのこと知ってて、それで信頼してお願いすることになったんですよ。

榊原:そうなんですね。

山田:その段階で口座の残高は数千円でしたけどね。翌週の月曜日に振り込まれて「ああ、助かった!」ってなってました(笑。

榊原:消費者金融みたいですよね。

山田:ちょ(笑。

榊原:でも口座あったからすぐ振り込めてよかったですよね。最近は個人でアプリ作ってる人とか、間違って個人の口座に振り込んじゃって「戻して!」ってなったりすることあるんですよ。

山田:その当時はずっとバイトしてましたからね。

榊原:そうでしたよね。絨毯屋さんでしたっけ?

山田:いや、絨毯屋は間借りです。ペルシャ絨毯屋で、たまに絨毯売るの手伝ってました(笑。それがオフィスで、昼間はカフェ、夜は運送会社の仕分けやりながら空いた時間でConyacを作ってましたね。一年目はずっとそんな感じ。一番最初にスカイライト(スカイライトコンサルティング)に出してもらったお金は給料には使わないって決めてましたから。

でも前の会社辞めた段階で貯金が10万円しかなかったので、お金なかったですね。

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VC25社に断られた後に現れた「エンジェル」

TB:山田さんの最初の印象は?

榊原:茶髪だなって…

山田:ちょ(笑。

榊原:いや、似てるなって思って。サムライではザワットの原田さん(ザワット代表取締役の原田大作氏)と僕と山田さんが茶髪なんですよね。あと、すごい謙虚だなって思いました。メディアに載ってるから、もっといばってるかなと思ったら、本当にお金がない感じで…。

山田:お金がない感じはちょっと嫌ですね(笑。最初会ったとき、結構年上の人が来るのかなって思ってたら、なんか「ラフな感じの気前がよさそうなお兄ちゃん」が来たなって覚えがありますね。その時スーツでしたもんね。ネクタイもしてて。

榊原:でも茶髪でしたよ。

山田:榊原さんに出会う前、結構VC回ったんですよ。25社ぐらい。でも全部断られてて。今考えたら聞いたことないようなとこもありましたね。そんな時にノリがいい投資家でしょ。猜疑心しかなくって。しかも「サムライ」とか言ってるしこれはヤバいなと。でもいろいろ話してると人柄がすごいよくって。それに惹かれてお願いしたのが大きいですね。

榊原:僕からアプローチすることは本当になかったので、どうやったら一緒に翻訳こんにゃくが作れるのかなってずっと考えてました。

山田:メディアで結構検索したんですけどね。サムライで検索したらウィキペディアしか出てこなくって。

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榊原:あの当時はすでに結構投資してたんですけどね。小林さん(元ノボット代表取締役の小林清剛氏)は3社目かな。一番最初はSynclogue(シンクローグ)。

山田:3月末が期末だったので「今期超せないな」って思ってました。ギリギリでした。

元祖スタートアップの聖地「サムライハウス」

榊原:でもめっちゃ最近ですよね。なんだかもう6年前ぐらいのイメージになってました。そっからサムライハウス(※3)に入るんですよね。

山田:もうありましたっけ?

榊原:2009年はもう作ってましたよ。

山田:3月に投資してもらったタイミングではまだペルシャ絨毯屋がオフィスでしたから、「(サムライハウスに)来る?」って言われて見てみたんですよね。そしたら「ここはマズいな」って(笑。でも結構天秤にかけたんですよ。ペルシャ絨毯屋かこの小汚い部屋にするか

榊原:おいおい!(笑。

山田:ここはマズいって思いながら、でも榊原さんがいつもいてて、ミーティングするのには便利だし、しかもペルシャ絨毯屋のお客さんに邪魔されなくなるからいいかなって。

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榊原:小竹向原ですよね。楽しかった。

山田:毎週会ってサムライハウスの時は上の階にいるわけですから、週に2、3ぐらいで会ってましたよね。和室の重鎮みたいになってた。

榊原:それこそお昼ご飯とか一緒に行ってましたよね。サムライハウスから5分ぐらいの江古田に。寂しくなると山田さんの部屋に行って。

山田:なんかこう、こっちに来る時は疲れてるのかなって思ってました。

榊原:最大で20人ぐらいいましたよね。住んでたのは5人ぐらい。クーラーない部屋とかありましたからね。

山田:一番キツかったのはサムライの投資先の春木さん(Joy代表取締役の春木世覇氏)。いびきがすごかったですよね。

榊原:ハンパなかったですよね(笑。

山田:仕事できないぐらいの威力でしたもんね。ヘッドホンを超えて聞こえてくる(笑。

TB:今はその人たちは

榊原:他の会社の立上げメンバーになったり、会社を作り直して新しくサービスをやったり。ええ、全員なんらかで残ったりしてますよ。

山田:SSI(サムライスタートアップアイランド)ができるまでのタイミングまでいましたよね。そうそう、地震だ。震災の後に小沼と話し合って、このまま小竹向原にいると災害時に帰れなくなるので引越しを決意したんですよ。それで神田に。2年前なんですよね。サムライハウスに住んでたってことが信じられないんですけどね。

ーーインキュベートの「サムライ」と山田氏の二人は二人三脚でソーシャル翻訳サービスConyacの育成を始める。二人の歩んだ道のりを語った次回は明日公開です。


※1:ノボットはサムライインキュベートの運営する一号ファンドの投資先だった。
※2:TC時代に筆者が企画したTokyoCampというイベントで二人は出会っている。
※3:サムライインキュベートが小竹向原に設立したインキュベーションオフィスという名の一軒家。

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