ユーザとの対話に真摯に応えること−−Zaim閑歳氏が語る「サービスのファンを増やすためのコミュニケーションと設計思想」

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技術的な視点よりも、いかにユーザに使ってもらえるデザインにするかを考えることが大事だ。サービスのファンを増やすためにも、ユーザ視点のサービス設計を心がけなければいけない。

家計簿サービスZaimを運営する閑歳孝子氏は、会社員時代に作ったサービスをもとに起業し、クックパッドから資金調達を行った。現在では100万ダウンロードを越え、サービスを拡充し、ユーザ数を伸ばしながらお金に関する新しい価値を提供している人物だ。

同氏が語った、サービスのファンを増やすためのコミュニケーションと設計思想についてまとめた。

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会社に所属しながらサービスを開発

2011年当時、ユーザローカルというアクセス解析の会社に所属し、BtoB向けの開発やディレクションをやっていた。そこで個人向けのアクセス解析という視点で、お金を管理をする家計簿に注目した。すでにある家計簿アプリは見た目が難しかったりと誰もが気軽に使えるものになっておらず、もっと簡単で便利にしたいと思ったのが開発のきっかけだ。リリース当時は会社員の傍ら開発を進め、2012年9月に法人化し、現在ではダウンロード件数も100万以上を超えるサービスとなった。

自分にとって、ちょうどよい問題を見つけること

何かを作るためには、思いがなければ続かない。自身の中で、お金は生まれてから死ぬまで関わる問題であり、自分のテーマとして飽きずにやれるちょうどよいものだった。アプリやサービスを作る場合は、自分が熱中できて解決したいと思えるちょうどよい問題を見つけ、取り組んだほうが良い。

開発前に、一般の人たちに意見を聞く

自分が作るならば、家族が気軽に使えるものにしたいという設計思想があった。そこで、ウェブ業界の人たちではなく、家族や主婦の友だちなど周りにいる一般の人たちにヒアリングをし、アプリ開発を行った。2011年当時、スマートフォンを持っている人はまだ少なかったが、今後スマートフォンが一般的に普及するだろうと考え、できるだけ一般の人目線のアプリを作ろうと意識した。当たり前に使われるサービスを目指すためには、開発のヒアリング段階では一般の人たちに意見を聞くようにしたほうが、結果的に良いものが生まれやすい。

メディアで注目されるためのひと工夫

多くはないが、すでに似たような家計簿アプリは存在しており、普通の家計簿アプリではリリースしても注目されにくいと考えた。そこで、「ソーシャル家計簿」と名づけてリリースをし、メディアで注目されるポイントを作った。機能として、自身のプロフィールに似た人の平均支出が分かる仕様にし、平均に比べて交際費は多めに使っているな、ということを分かるようにした。家計簿を一人で行うものから、ソーシャルで比較するものという特徴を持たせ、メディアに注目されるポイントを作った。

ユーザとの対話を心がけること

一番力を入れたのは、ユーザからの問い合わせに素早く真摯に答えることだ。リリース当時から、一日数十件程度の機能要望や不具合の指摘といった問い合わせがあり、そうしたユーザのコメントにはすべて回答するようにし、真摯に受け答えするように心がけた。その際に意識したのは「テンプレートではない回答をすること」だ。そうすることで、ユーザに対して真剣に対応していることが相手に伝わる。

いかにファンを増やす仕掛けを作るか

直接の対面ではないからこそ、ユーザとのコミュニケーションに重点を置いている。ユーザは、金額を入力するという機械的な作業を行うため、サービスから人の匂いや温もりを感じにくい。だからこそ、気軽に問い合わせができる環境を作り、コミュニケーションを通じて人の匂いが伝わるような要素を作ることで、ユーザに親しみやすいサービス設計にした。そうすることで、次第にサービスのファンが増え、口コミ効果で広がっていった。コミュニケーションを通じた人間的な体験を提供することが、ファンを増やす一つの仕組みだ。

デフォルトアプリに近い感覚のデザインを目指した

ユーザ層は初期は男性が多かったが、今では女性ユーザが多い。ユーザ数の上昇に伴い、必ずしもユーザリテラシーが高くないユーザも増えてしまう傾向にある。そのため、誰でも使えるような画面設計を心がけた。きれいすぎるアプリは、見た目は派手だが継続して自然と使ってもらうものにはならない。華美な装飾をせず、スマートフォンのデフォルトアプリのような仕様にした。ちょっと不格好なくらいのほうが、親しみやすさを持ちやすい。普段に溶けこむようなものを目指すならば、自然なデザインを意識しよう。

エンジニアは、最適解となる技術を選ぶ力を持とう

家計簿サービスは、複雑な技術を必要としない。エンジニアに問われるのは、人間力や仕様を読み解く力だ。ユーザのニーズに応え、そこに最も最適な技術を導き出す力こそがエンジニアには求められる。複雑な技術ではなく、最適解の技術を選ぶ力を持とう。

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