【ネット時代のものづくり対談】企業から飛び出してハードウェアスタートアップする方法ーーABBALab小笠原氏×岩淵技術商事 岡島氏

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2013.11.1

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モノが溢れる現代、大量生産・大量消費という大きな潮流だけでは満たされないニーズが出てくるようになった。この世には「雨どい専用のロボット掃除機」というものがあるらしい。面白グッズかと思いきや、意外と海外の大型邸宅ではニーズがあるのだという。

今、「適量生産・大量販売」という概念が生まれつつある。ウェブサービスのようにより低いハードルで試作品を制作し、クラウドファンディングなどの方法でマーケティングと資金調達を実施する。ものづくりの敷居が低くなったことで、逆に小さなニーズを大量に獲得しよう、という考え方だ。

この「適量生産・大量販売」をテーマに、ものづくり系スタートアップを支援するプログラムが「ABBALab」だ。

本企画では「ABBALab」設立者でNOMAD代表取締役の小笠原治氏と、ものづくりに携わるゲストのお二人に対談形式でその仕組みやノウハウを語って頂く。前回の孫泰蔵氏、岩佐琢磨氏にひきつづき、今回のゲストはGugenなどの電子工作関連コミュニティを展開中の岩淵技術商事、岡島康憲氏。

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メーカー勤務の経験から起業のハードル

TB:岡島さんは元NECビッグローブでネット接続家電などを開発されていました。大手から起業するにあたっての課題は?

岡島:起業にあたってメーカー勤務の人たちってやっぱり収入を気にしますよね。たとえ面白いことが出来たとしても。私の課題感だとこの(ABBALab)スキームに入ってきて欲しいメーカーの人物像って、40代中盤の一人で機構設計出来て、製造に入ったことのある人なんですね。でも、そういう世代って基本的に家族がいたり、それまでの収入が高いわけです。

元々プロジェクトがあってこういうスキルがないから大手メーカーから引っ張ってこよう、となると報酬の問題が立ちはだかるでしょうね。ただメーカーの人員整理などがある場合は、本人が望まない部署にいくよりかは、自分をわくわくさせてくれるプロジェクトには協力したいと考えてくれる人はいると思います。

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本人が本当にやりたいこと、作りたいものがあってこの枠組みを使う場合は、逆にそういう方は蓄えがあったりするので問題は小さくなるかもしれません。

小笠原:別に会社単位でもいいんですよ。創業30年の町工場が新製品作りたいけどそこに投資する資金がない。株式でなくとも商品ライセンスのシェアリングなどで契約することもできます。

TB:メーカーには現実的な方は多いですか

岡島:やはり上場企業の方が多いですからね。変な話、私たち世代(団塊ジュニア世代、30代から40代)はまだ会社に残っていれば「ギリギリ」ゴールにいけると思っている人がいるかもしれません。だから、外に出ようとする時は足場を固めてからという方が多いでしょうね。

副業でのスタートアップは可能か?

小笠原:例えばメーカーに在籍しながらの副業っていうのはアリなんですかね?

岡島:副業をどう定義するかによるし、元企業在籍者としてはコメントしづらいですね。会社によっても違いますし。ただ、かなり複雑だということは言えると思います。

小笠原:メーカーに在籍している方でもこのスキームでチャレンジできるならそれが一番いいんですよね。このスキームで手にする資金は全て開発資金に回すことができるし、その多くは人件費や外注費だったりするわけじゃないですか。会社に投資する、となるとそこに張り付きになるイメージあるかもしれませんが、あくまでフォーカスはプロダクトですからね。

今の仕事をしながらプロトタイプを開発し、クラウドファンディングに出してテストマーケティングしてみる。成立したら独立して成長を目指すし、もし全て失敗してしまっても、他のチームを手伝うなどして再チャレンジを目指す。そういう流れができればいいなと思っているんですが。

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岡島:会社にいながら資金協力を得てプロダクトが作れる。そういうチャレンジができれば最高なんですけどね。

小笠原:一方で中小企業は縛りが緩いのが多いですね。

岡島:メーカー在籍時に色々な方とお話しましたが、40代後半の方ってスキルあるんですよね。例えばパソコンをひとりで設計できてしまったり。でもその下の世代になるとひとつのモジュールしか設計できなくなってしまう。そういう方って何かを作ろうとしても、誰かに相談しなければならないんです。

小笠原:大企業の技術者の方はすごいすごいと聞くんですが、埋もれてしまっているのでそのすごさが分からない。もったいないですよね。

メーカーとの連携

TB:大企業にこのスキームを持っていって社内ベンチャーのような取組みを一緒にやることってできないんですかね?

岡島:持ち込むことも、スキームそのものも問題ないけど、多分、発生したお金と法務関連で問題が出てくるでしょうね。

小笠原:権利処理ね。ソフトウェアではよくあるんですが、発注ベースでもいいんじゃないかって思いますけどね。こちらが500万円を出して共同開発のライセンスを例えば10%持たせてもらう。

岡島:ただ、その場合は大手メーカーに数百万円の予算で持ち込むよりも、EMS(Electronics Manufacturing Service)の方がよさそうですね。工場の一部機能を使わせてもらってそのプロダクトをライセンスシェアしましょう、という流れですよね。自分たちでライセンスを持てる製品を欲しがっているEMSもあると思うんです。そこにアイデアをこのスキームと共に持ち込んで、共同で開発をする。

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小笠原:EMSで働いている人が何か新しいものを作りたいというパターンで、工場を稼働させるのに費用がかかるので、このスキームを活用する方法ですね。

既存技術からの再発明でスタートアップを狙う

岡島:大手で新商品開発をしようとすると、革新的なアイデアを求めながら前例を求める、本当にそういう話を聞くんですよね。

小笠原:やはりそこを動かすには外部からの力が必要ですよね。影響力や収益性があればそういった矛盾を無視できる。このスキームはまだ大手と一緒にできるほどのものじゃない。けど、中小企業なら可能性はありそう。そういった企業が持ってる既存技術の再発明とかも興味ありますよね。

岡島:例えばセンサーの値をWifiを使ってWebサーバに送信できるモジュールがあったとしてそれを体重計に組み込めば、5000円ぐらいだった商品が1万円ほどで売ってるネット対応の製品に変わるわけです。そういうのも再発明に近いですよね。

小笠原:「えー?それって本当に売れるの?」っていうのはクラウドファンディングに出してみればいい。最初の支援者が出てきてファーストロットが生まれる、まずはここまでの成功事例を出したい。

岡島:部品商社って組む相手にはいいんじゃないかな。何を作るかにもよるんだけど、例えばiPhoneに繋ぐと便利になるちょっとしたガジェットを作りたいとして、実現するためのどういったセンサーやマイコンが必要か、よく知っている。メーカーが使い道を探している部品をうまく探してマッチングしてくれるというか。長年の経験って大切で、センサーにも癖があったりするんです。そういうのを熟知している。

小笠原:アイデアがあるのでその部品を探してもらう、という流れですよね。

岡島:逆に町工場はあまりデジタルの方向は苦手かもしれない。レンズとか、ウェアラブルのフィッティング部分とかそういうのは得意。

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ものづくり系コミュニティとの連携

TB:全く電子工作すらやったことがない人が、アイデアひとつでものづくりしたいといってできるの?

岡島:設計が出来る人次第。その人はアイデアを聞いて必要な人材を手配してくれる。例えば真っ先に特許事務所に連絡して権利を確認するかもしれない。Gugenとしてはワークショップなどでこういう話題をスタートアップ向けにやりたいと思っているんですよね。技術を持っている方とのマッチングがうまくいけば、その方々にも多少の収入になるだろうし。

小笠原:ABBALabとしても興味があって、Gugenのようなコンテストに出てきたものってあまり沢山の数量を作ることを前提としてなかったりするじゃないですか。

岡島:そうですね。

小笠原:でもここから新しい製品が生まれるかもしれない。ABBALabはGugenで出てきたプロダクトをさらに一段階上のステージに持っていけるんじゃないかなと考えてるんですよ。

岡島:Gugenは単なるアイデアコンテストではなく、日本から世界に向けて価値のある製品を発信することが狙いなんです。そのためにアイデアの種も作るし、製品になるまでのお手伝いも考えてます。ハードウェアってこれで事業になればいいな、と夢を見る人たちが少ないんです。趣味の電子工作を否定はしませんが、目指せイーロン・マスク、という人がもう少し出てきてもいいと思ってるんですよね。

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小笠原:Gugen経由、ABBALabで商売が始まった、というような成功事例が必要ですよね。コミュニティから生まれたアイデアの種を、資金的なスキームに乗っけるという連携ができるといいですよね。

岡島:協力お願いします。

小笠原:スポンサードしますよ(笑。ABBALab賞を作って実際に製品化できる方を探しましょうよ。ウェブ系のサービスって例えば、あのサービスを作ってるあの人に会いたいって思っても、大体2ホップぐらいで繋がれるんですよね。けどハードウェアはなかなかそこが見えにくい。だからこういった場所を応援することが大切なんです。ところでものづくり系のコミュニティってどこが中心なんですか?

岡島:大学のゼミとかですね。そういうところの卒業生が面白いものを作ってたりする。「あなたどの研究室?」っていう会話です。あと、新しい製品が出てくると厳しい意見が多くなるのも特徴です。ハードウェアを作ったことのない小さなスタートアップが新しいものをリリースするとしますよね。作りが悪いとすごい勢いで叩く。ちょっとそういう新参者に厳しいところもあります。そのもやもやしたものは壊したいですよね。

小笠原:もっと影響力のあるコミュニティが必要で、そこからしっかりとした会社が出てくればこういうもやもやしたことは払拭できるんじゃないかって思ってます。

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