【投資家・起業家対談】「コンテンツにはお金が払われてなかった説を持ってるんです」ーーグロービス・キャピタル・パートナーズ高宮氏×nanapi古川氏(3/4)

Takeshi Hirano by Takeshi Hirano on 2013.12.29

投資家と起業家の関係は興味深い。特にシード期の投資家と起業家は共同で経営にあたり、資金だけでない特別な関係を結ぶことが多い。そこにはどのようなやり取りや葛藤があるのだろうか。このインタビュー・シリーズでは、投資家と起業家のお二人に対談形式で「二人だから語れる」内情に迫る。これまでの掲載:1回目2回目3回目最終回

(文中敬称略、聞き手は筆者)

nanapiの道のり

2007/12 ロケットスタート設立
2009/06 代表取締役古川健介、取締役CTO和田修一の2名で本格始動
2009/09 ライフレシピ共有サイト「nanapi」をリリース
2010/11 グロービス・キャピタル・パートナーズから3.3億円の資金調達
2012/04 株式会社nanapiに商号変更
2013/07 KOIF、グロービス・キャピタル・パートナーズから2.7億円の資金調達
2013/12 東京都渋谷区道玄坂に移転

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インターネットの変化

古川:ここ半年ぐらいで「インターネットが変化した」という実感をすごく感じるんです。この半年で変わったというより、実感として感じられるようになったのが最近という感じなんですけど。たとえば、CGMからのメディアが、スマホアプリ時代には成り立たなくなったというのがあります。

今までは「ユーザーさんが何かを投稿する→それがコンテンツになり貯まっていく→貯まったコンテンツが検索エンジンに引っかかる→またそのユーザーさんが投稿してくれる」という、うまく回る仕組みがあったんですよね。とにかくユーザーを集めれば伸びていくという方程式です。

一方で、アプリ内だけで完結するものだったら、「アプリで投稿→アプリに閉じる→(検索を含めた)外部からの流入がない」となってしまいます。なので、PC-Web時代の方程式が崩れてしまってるような気がしてて、考え方を変えなきゃなぁって。

高宮:アプリ生態系の中だけだとおっしゃる通りって感じなんですけど、一方でインターネット全体の話だと、これまでのフィーチャーフォンとPCで分離していたのが融合しつつあると思うんですよね。

アプリとウェブでデータベースが共有化されて繋がってて、例えばウェブ側=ブラウザでユーザー獲得して、アプリに流し込むというようなこともあるわけです。ネイティブアプリだけが将来のインターネットって考えるのは危険かもしれませんね。

古川:おっしゃる通りです。よく見ている情報サイトのアプリについて、ダウンロードするかっていうアンケート取ったんです。そしたら「毎日見ているサイトのアプリがあったとしても、ダウンロードしない」という人の方が多かった。ブラウザで十分だと。僕らが思っているほどは、アプリが必要とされていないみたいですね。

一方で、アプリ化だけの問題ではないとも思っています。たとえば、動画や写真など、テキストではない投稿が今後は主流になっていくでしょう。検索エンジン観点でいうと、テキストから取得している情報がほとんどなので、普通にやればマッチング精度が低いんじゃないかなっていうのはあります。

なので、インターネット上でのコンテンツの作り方は、「プロが投稿するようなハイクオリティ」の方向に向かうか、もしく「まるばつnanapi」のように、簡単なお題に対するアクションの集積で成立していくのかのどちらかかな、っていうのが個人的な考え方です。

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コンテンツやメディアに求められる価値

TB:メディアに求められるものって変わるんですかね。例えばPV(ページビュー)を指標とする構造とか。

古川: そうですね。PVは重要な指標ではなくなる可能性は高いと思います。

高宮:結局、PVが重要な指標って、広告単価が大体一定だからそうなるんですよね。でも、例えば今後、アプリがメディア化しても、クライアント側がの支払える単価が下がってしまうとPVが指標としてあまり意味なくなってしまう。

ただそれって、にわとりとタマゴの問題で、現時点でアプリ内の広告枠が少ないから立上がりきってないだけっていうのもありますよね。もしくは広告よりもゲームの課金の方が爆発的なマネタイズ力があるのでそちらに意識がいってしまってるというのもあると思います。

よく、スマートフォンになると色々変わるって言われますけど、フィーチャーフォンだろうがスマートフォンだろうがPCだろうが、ユーザーや顧客の根源的なニーズは変わらないんです。ただそれをスマホコンテキストみたいに、正しくデバイスやそのデバイスの使われ方みたいなコンテキストに当てはめていくことが肝だと思うんですよね。

古川:その通りです。求められるコンテンツは変わっていないと思います。

ちなみに、この前、nanapiでコンテンツを整理した時に、「!(潜在的問題と気付き)」と「?(顕在化した疑問)」にざっくりと分けれることに気づきました。今まで、nanapiは「?」のずっと問題の解決をやってきていたんですね。たとえば「にんじんを切りたい時に調べて解決する」というものです。

しかし、見た時に「ああ、これを知りたかった」といったような、潜在的な問題に対してメディアのようなな気づきは提供できてませんでした。ここがないと、常に着地点としてのコンテンツになってしまう。

そもそも、顕在化している問題をふたつぐらいの単語に集約して検索エンジンにぶち込んで10件の結果から取捨選択できる人って実はすごく少ないんですよね。にんじんの切り方だったらすぐ検索できますけど、なんかもやもやしている時とかに、検索で解決はできない。

これもアンケート取ったんですけど、どういう時に検索を使うか?と聞くと、やはりほとんどの方はサイト名を検索するか、「芸能人、誕生日」ぐらいの検索しかやってないんです。一方でQAアプリで試してみると、やはり多くの人たちは自分が何に悩んでいるかわからないけど悩んでいるっていう状況なんですよね。

なので、これからは「!」のコンテンツを作って、気付きを提供できるようなものも増やしていきたいなと考えてます。

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コンテンツとディストリビューターの関係

TB:メディアのビジネスの部分はどうですか?

古川:そもそも、僕は、個人的には「コンテンツにはお金が払われてなかった」という説を支持しているんです。ユーザーは「コンテンツを運んでくるところ」もしくは「コンテンツを表示する場所」にお金を支払っていたんじゃないかなと思っています。新聞でいうと、宅配と、紙面ですね。新聞は、その2つが強烈なので、今まで収益をあげられてたんじゃないかなあ、と。

逆に、地方の有名な新聞社がネット上にコンテンツをアップしても、100pvも見られないことが多くてショックだ、と記者の人から聞いたことがあります。無料のコンテンツですら、なかなか見られていないんですね。

と考えると、GoogleやGunosyのように、コンテンツがある場所までユーザーを運ぶ人のほうが、ビジネス的には有利なのかなあ、と思っています。

ユーザーさんは、体験にお金を払います。クックパッドもコンテンツそのものに課金をしているわけではなくて、検索をしやすくして、コンテンツまでたどり着きやすくするという「体験」を有料にしています。課金を考えるとしたら、コンテンツではなくて体験ではないか、という整理をしています。

高宮:そうですね。コンテンツ自体は変化してなくて、ユーザーが求めている情報に変わりはないんですよね。ただ、課金のポイントはずれている、もしくは「ずれ方」が変化しているんだと思います。

古川:課金以外、たとえば広告だと以下のように考えています。

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これは、議論の時によく使う図で、もともとは、小澤さんに教わったのです。これまで(図の中心点が)GoogleやYahoo!だったのが、デバイスの変化に伴って変わるかもしれないと。例えばスマートフォンだったらGunosyやSmartNewsなんかもそうですよね。またサービス単体で、真ん中の中心点から、コンテンツの着地点まで実現できているのがクックパッドやPixivだったりします。

クックパッドやPixivは、一回サイトにいってから、レシピやイラストを探します。その状況になったサービスは、かなり強いと考えています。こういったサービスであれば、ブランディング広告がとれたり、記事広告がとれたりするようになってくるので、広告ビジネスでも大きく拡大することができます。逆に着地点だけしかできていないメディアは、Adsenseなどが収益の中心になります。

高宮:これってどこまで垂直統合するかっていう話ですよね。仮にアプリの時代がやってきたとして、横で押さえていた関所が崩されて抜かれてしまう可能性が出てくる。言い換えればコンテンツと運ぶところを両方垂直統合すると一番強いってことだと思います。

古川:真ん中の人たちがコンテンツ作っちゃうと、一気に垂直統合できちゃうので強いです。たとえば、SmartNewsやGunosyがニュース配信し始めたりするのは、戦略的にすごいありですね。そのうちやるんじゃないかな?

TB:LINEニュースの編集チームみたいな。

高宮:逆に言えば、この真ん中の部分、ユーザーが集まる中心点から抑えないと、スマホへのシフトがおこっている今、どんなサービスでもひっくり返される可能性がある、というリスクをはらんでますよね。

古川:その通りです。なので、コンテンツをスマホ向けに考え抜きつつ、ユーザーが集まる中心点も抑えなければいけなくなります。

最近リリースした「アンサー」というQ&Aアプリは、まさにこのユーザーの集まる中心点のところを念頭において作っています。

TB:たとえば、何に困っているのかすらわからない人はアンサーにやってくると。

古川:そうですね。先ほども言いましたが、そもそも悩みが何かわからない人が多いので、雑談レベルでもいいので、質問を投げてもらうと、あとは会話から悩みを引き出すという形ができればいいなと考えています。

また、顕在的な質問でも、アンサーで聞いたものがnanapiにあればbotが自動的に提示する、とかできたらいいな、と考えています。そうすると、コンテンツ資産も活かせますし。

どのみち、「!」のようなコンテンツを創るのも、アンサーのようにユーザーが動くところからやるのも、着地点としてのコンテンツを作り続けるだけでは限界があるのではないか、という観点から作っています。

高宮:ウェブって元々ディレクトリやランクという世の中順とか、そういった軸できれいに構造化されて整理していたものが、ここのところになって情報がセマンティック的に整理されて行く方向に変化してきていて、正しいカテゴライズやタグ付けがなされていないと探しにくくなってきてますよね。

広告業界で起こったアナロジーがメディア業界にもきているんじゃないでしょうか。その感覚はありますよ。

この図って横にするとそのまま広告業界のカオスマップになるじゃないですか。テクノロジーによって広告がターゲティングされて効率がよくなりマネタイズがしやすくなった。今度はその広告でおこったイノベーションが、メディア側に波及してくることで、近い将来メディアのマネタイズモデルにもイノベーションが起こるように思っています。

古川:確かに。広告もコンテンツといえばそうですしね。

高宮:ビジネスになりやすかった広告「コンテンツ」が、全コンテンツの中で先駆けてイノベーションが起こった、という言い方もできますね。

これまでの掲載:1回目2回目3回目最終回

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Takeshi Hirano

Takeshi Hirano

ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現THE BRIDGE)を共同創業。1977年生。(株)THE BRIDGE代表取締役

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