ビッグデータのHapyrusがFlyDataに社名を変更、500Startups等から160万ドルを調達し日本法人を設立

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シリコンバレーを拠点とするビッグデータ・スタートアップのHapyrusは9日、500Startups をはじめとする日米の投資家から160万ドルを資金調達し、社名を FlyData に変更、日本法人の設立を発表した。

FlyData は、電脳隊(2000年に Yahoo Japan に売却)、シンプレクス・テクノロジー(TSE:4340)、シリウステクノロジー(2010年に Yahoo Japan に売却)と、日本の有名スタートアップを渡り歩いた藤川幸一氏が2011年3月に設立したスタートアップだ。

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同社は、2013年2月(以前の我々の取材では2013年4月とある)、ペタバイトサイズにスケールさせることができるデータウェアハウスサービスAmazon Redshiftに自動でデータをアップロードし、移動させるFlyData for Amazon Redshiftと呼ばれるサービスをローンチした。社名を変更したことからもわかるように、同社は今後、この FlyData 事業に特化する意向だ。

この経営判断について、藤川氏は9日都内で開かれた記者会見で、次のように述べている。

もともとは Hadoop のミドルウェアを作っていたが、Amazon Redshift を見て、身体に激震が走ったのを覚えている。ビッグデータは Hadoop でしかできないと考えていたが、Amazon Redshift では、より安く年間1,000ドル位で実現できる。500Startups のオフィスに Amazon のメンタリング・チームが来たとき、Amazon Redshift のアカウントを発行してもらい試してみたら、Hadoop より10〜100倍のパフォーマンスが出た。Hadoop では勝てないと思った。

Amazon Redshift に代表されるように、クラウド上でビッグデータを処理するソリューションは整いつつあるが、一方で、企業は処理すべきデータをオンプレミス環境からクラウド上にアップできていない、という状況がある。この問題の解決の方が需要があると判断し、FlyData に特化することにした。

この判断に至るまでにも、同社は多難な道のりを経験したようだ。経営戦略の相違から共同創業者が次々と藤川氏の元を去った。しかし、ビッグデータの可能性を信じ続けた彼は、日米の投資家から昨年夏に92.5万ドルの資金調達を実施し、ソーシャル・リクルーティング・サービスのWantedly を通じるなどして、優秀な人材を採用することに成功した

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FlyData は オンプレミスの RDBMS から Amazon Redshift に代表されるデータウェアハウスにデータをアップするソリューションなので、RDBMS 側にコンポーネントのインストールが必要になる。同社は現在、MySQL 向けのコンポーネントを提供しており、今後、PostgreSQL、Oracle、Microsoft SQL Server 向けにもコンポーネントを提供する予定だ。

2013年の FlyData for Amazon Redshift のリリース以降、40社以上の企業がサービスを利用し始めており、売上ベースで毎月40%以上の成長を続けている。特に日本からのユーザ増加が著しく、主なユーザセクターは、ソーシャルゲーム、アドテクノロジー、デジタルマーケティングなどだ。代表的な顧客として、藤川氏は BrightrollUpworthyDatalotenishTokyo Otaku Mode の名前を挙げてくれた。

FlyData は Amazon Redshift 向けのソリューションを提供する Amazon Redshift Partner の認定企業の一つだが、同じくこの認定企業に含まれる、InformaticaTalendAttunitySnapLogic などは FlyData にとって競合の存在となる。

競合からの優位性や FlyData の将来性について、藤川氏は次のように説明した。

私の見方では、Informatica や Talend はクラウドへの対応面で課題が多い。Attunity や SnapLogic はまだ日本に来ていない。日本やアジア太平洋地域におけるプレゼンスという点では、FlyData にアドバンテージがあると思う。

また Amazon もクラウドを扱うのは得意だが、オンプレミス環境にある顧客のデータに手を出すのは、得意ではない。その点で Amazon とは相互補完関係にある。現在はクラウドで最大プレーヤーの Amazon 向けのソリューションを提供するわけだが、将来的には、Google Big Query などとの連携も可能性のある選択肢だ。

日本法人の立ち上げに伴って、何より興味深いのが新たにチームに加わるメンバーの顔ぶれだ。リムネットや MySQL 日本法人の創業者の Daniel Saito 氏はバイスプレジデントとしてグローバルセールスを担当、ビッグデータ分析領域で12年以上の経験を持ち、自身も起業家の晴山敬氏は日本のカントリーマネージャーを務める。

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左から:カントリーマネージャー晴山敬氏、ファウンダー藤川幸一氏、バイスプレジデント Daniel Saito 氏

ビジネス・セントリックなサービスを提供し、グローバルに活躍する日本のスタートアップは少ないが、FlyData がその先陣を切って、成功を収めることを期待したい。この分野では、Treasure Dataという別の、ビッグデータソリューションにフォーカスしている日本のスタートアップも、Yahoo!ファウンダーのJerry Yang氏、Rubyの開発者である松本行弘氏らから、2012年に275万ドルのエンジェル投資を受けている。

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