2014.1.2

【インタビュー】家入一真が「dropout」をやるべき理由ーー弱者とマイノリティとLivertyと

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先日、家入一真氏の新プロジェクト、動画メディア「dropout」の反響についてお知らせさせていただいた。実はここ数カ月で同様のバイラル系動画メディアの計画をいくつか聞いていたのもあって、興味を持たれた方も多かったようだ。

なぜ家入氏はこのプロジェクトをやるべきなのか。

本稿では、家入氏に立ち上げメンバーの高木新平氏を加え、対談形式でその経緯と目的をお伝えすることにする。(開示情報:私もこのプロジェクトに参加するひとりである)

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ーー試しに「Upworthyのコピー」やろうよって家入さんに言ったのこのインタビューの時でした。

家入:上っ面の希望を語るのではなく、絶望から見える風景というものがあるんじゃないかとは常々思ってて、普段人が目を背けてしまう様な事象や問題にフォーカスしたメディアをやりたいと考えていたんですよね。「ほぼ日刊ぜつぼう新聞」とかどう?なんて冗談半分に話しながら(笑。

そんな中、キゴヤマ(注:筆者のペンネーム)から Upworthyを教えてもらい、「これは家入さんがやるべきだよ」と言われた時に、「これしかない!」と。

高木:「ほぼ日刊ギリギリ新聞」じゃなかったでしたっけ?(笑。

さておき、自分たちだけでは想像できないような絶望的な生活や価値観を1日1つ客観的に紹介していくようなメディアができたらいいなと考えてましたね。

ただイメージはあってもなかなか実際の企画運営に落とすのが難しく、どうしようかなと思っていたところ、動画のキュレーションメディアというフォーマットに出会い、これがいいんじゃないかってことで始まったんですよね。

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ーーテーマも合ってましたもんね。マイノリティというか、社会問題というか。

家入:コンビニの雑誌売り場に行っても、ネットのメディアサイトを見ても「成功する10の方法」とか「恋愛がうまくいくコツ」とか、希望を見せて消費を煽るものばかりの様な気がしてるんです。

まあそういうもんだし、それを否定するつもりは無いけど、普段みんなが目を背けている事象や問題、少数派や弱者にフォーカスするメディアがあってもいいのでは無いか、と。

高木:日本では、マイノリティって見えづらいと思う。無いわけじゃなくて人種や肌の色、目の色と比べて、わかりづらい。

でも多様化すればするほど、実際の比較した数字とかじゃなくて、マイノリティの意識を感じる人は多いはず。だけどそれが表面化され、何か物事を良い方向に動かした経験(いわゆるポリティカルコレクトの獲得など)が少ないから誰も言わないまま、そして社会のシステムも変わること無く生きづらさばかりが増していく。

家入:あらゆる市場が飽和し、少子高齢化などの問題を抱えシュリンクしていく先進国では、これからは弱者や少数派がゆるく繋がり合うなかで強さを持ち始めるのではないか、と思ってるんです。

高木:とにかくぼくらは「こんなこともあるんだ」「あんな人もいるんだ」という発見を、新鮮な驚きとともに差し出していくことができたらいいんでしょうね。そういうイメージをひっくり返したり、ずらしたり、傾けたり、そういうことをシリアスになりすぎずに楽しみながらやっていけたらいいなと。あくまでポップに、ね。

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ーーLivertyやリバ邸やってたから、あ、これは家入さんたちがやるべきだなって思ったのは確かです。

家入:そうなんですよね。Livertyや「現代の駆け込み寺」リバ邸もそこに通じる部分があります。

僕らは普段から「なぜ僕らがそれをやる意味があるのか」ということを重視してるんですよね。そこに物語がないものは誰の心にも刺さらないから。共感されて初めて、twitterやfacebookといったソーシャルメディアでその共感がシェア(おすそわけ)されます。そういった意味でやはり、この様なバイラルメディアは「誰がやっているのか」が重視されると思ってます。

高木:家入さんはどう思っているかわかんないけど、少なくとも僕は家入さんは根源的にはビジネスマンよりはアーティストだなと。それも暗いところに光を当てることで大衆化することがうまいアーティストだと思うんです。

それは家入さんの生い立ちや人格がマイノリティ感に根づいていながら、一方でアウトプットの仕方は非常にポップなんです。だから良くわかんない人からすれば、何が根源にあって動いているのか理解不能だし、やり方は今どきすぎるし、それが気持ち悪いというか不快に感じる人も多いかもしれないんだけど、僕にはそれが面白いなぁと。

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ーー運営してて面白かったのは、ただ投稿してもウンともスンともいわない。けど、家入さんや高木さんが共有するとサイトが息をしはじめる。アクセスが動きだすんですよね。

家入:dropoutの記事を僕がシェアしたとき、いつもより早くフォロワーのみんなが反応してくれるんですよ。フォローしている子達と、dropoutの属性がかみあっているということなんでしょうね。僕のフォロワーには(もちろんみんながみんなそうでは無いけど)弱い子たちが多いです。そんな子たちの心に刺ささってるって思ってます。

ーーでも動画を選んでいるのはLivertyにいる大学生だったりする。彼らが動画を選んで、高木さんたちとタイトルを決めて、家入さんがシェアをする。

家入:Livertyには過去の辛い出来事やコンプレックスを抱えた子が多いです。その子が選ぶ動画に意味があるのです。ただ「衝撃的だから」ただ「面白そうだから」だけで選ぶ動画に、物語はうまれません。物語のないものは誰も選ばず、シェアもしません。なので彼らと一緒じゃないと、そもそもこのメディアは上手くいかないのです。

高木:ここは家入さんのほうが得意だと思うから譲りたいですが、僕はよくわからないです(笑。いや投げやりじゃなくて、今回のメンバーって20歳とかで若いから、何をしたいとか何が得意とかよくわからないし、そもそも無いと思うんです。

だけど彼らはこの企画運営をモチベーションもってちゃんと続けている。だってなんだって最初の立ち上げは、決めなきゃならないことやらなきゃならないことが多すぎてしんどいです。だからアイデアはみんな持っているしつぶやくけどやらない。Livertyでも特に最初は「やるやる詐欺」が多くて。

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ーーまあ、立ち上げよりも継続の方が大変ですからね。

高木:実際なにかメディアやろうって話になってもぼくらを含めてこれまでなかなか形にならなかったわけで。でも今はちゃんと続いている。

反応もいいし、体制のバランスもいいのかもしれないけど、彼らが楽しみながらいきいきとできていれば、それはきっと後々彼らしかできない仕事になるはずだから、僕らを置いてどんどんやりまくってほしい(笑。ぼくも家入さんも実践の経験値からしか物事を判断できないタイプなので…。

ーー過去、家入さんが立ち上げてきた事業やプロジェクトって必ず誰かを巻き込んでいますもんね。Livertyにいる彼らって家入さんからみて、どういう人たちですか。

家入:あえてこういった言葉を使わせてもらうと、やはり一般的に言う「弱い子」が多いですね。就活からはみ出してしまった子、昔いじめられた経験がある子、会社に居場所がない子、家庭環境に問題があった子、などなど。社会にはいろんなレイヤーの「網の目」があります。

「会社」「学校」のレイヤー、「家庭」のレイヤー、「友達」のレイヤー、「国、行政」のレイヤー。そんな網の目が無数に重なる社会の中で、どうしても全ての編み目からすり抜けて一番下まで落ちてしまう子がいます。そういった子の居場所がLivertyだったりリバ邸なんじゃないか、と僕は思っています。

高木:Livertyで面白いことやったり成長しているメンバーの顔を思い浮かべてみたら、元々ドロップしたようなダメな子ばかりで、ああそういう奴らのためのコミュニティなんだなと。僕と家入さんと社会学者の宮台真司で鼎談したことがあるんですけど、リバ邸ってなんか『何者でもない者のためのアジールだね』って応援してもらえて、やっぱりそうだなと。

家入:どのレイヤーにも依存しない、独自の共同体。別に慈善をやりたいなんて気持ちはないですよ。中2からずっと引きこもっていた僕が、あったらよかったなあと思う様な居場所をただ作っているだけですね。

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ーーマイノリティとか社会問題ってどう関わればいいんでしょうね。

家入:これは自分自身や他人のコンプレックスと向き合うことと同じなんですが、「目を背けずにちゃんと目を向けて、対峙し、認め合い、許し合い、受け入れあう」ことなんだと思います。

高木:日本ってそもそも社会的にマイノリティーがはっきりと見えづらいからテーマが似たり寄ったりになりがちな気がしてるんです。

一方で家入さんのやり方はその逆張りだなと。まぁ日本だと若者という存在自体がマイノリティだけど、その中にあるないがしろにされている感覚とかコンプレックスみたいな魂の叫びを、ネットを使って超ポップな形で表面化させる。それをいちいち真面目にビジネスとしてやっているんじゃなくて遊びのようにやっている。

なのに実業家としても実績は出しているし捉えどころがない。その屈折した感じというか、社会と人へのベクトルがはみ出しているところに面白さがあると思うんですよね。

ーーさて、今後の運営はどうしましょうかね。事業化するにはいろいろクリアすべき課題も多いですし、まず家入さんの発見方法が1番難しい。まあ、最近は出会えたらラッキーぐらいに思ってます。

家入:(笑。

高木:(笑。でも、なんか色んな人がキュレーションに参加できるような仕組みをつくりたいですよね。けど、情報は多すぎてもお腹いっぱいなので、今くらいの頻度で質を高めるような方向に舵を切れたらと。

そしてもちろんあくまでキュレーションを並べるだけに留まらず、動画クリエイターとうまく連携したり、自主制作につなげるところまでやりたい。そのためには、スポンサーを見つけるなどの形で、軸がぶれない範囲でうまく収益化させていかなければならないですね。

ーーすでにいくつか事業化に興味ある方の話もありましたし。Liverty発のプロジェクトとしてはBASEが大きく成長しましたが、その次になることを期待しています。

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kigoyama

kigoyama

ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現THE BRIDGE)を共同創業。1977年生。(株)THE BRIDGE代表取締役

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