自分だけの“人生のストーリー”を投稿する空間「STORYS.JP」が、iPhoneアプリをリリースした。「名刺にのらないストーリー」というコンセプトのもと、STORYS.JPが登場したのは2013年3月のこと。現在ストーリーの総投稿件数は約7,000件で、人気ストーリーの『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』が書籍化されるなど着々と成長している。1年間の運営を、チームメンバーの大塚雄介さんに振り返ってもらった。
mixi日記やブログ更新が難しくなった人が新たにたどり着く場所
サービスを開始した当初、周囲からは「いまさら長文を投稿するCGMは無理じゃないか」、「コンセプトはいいいが投稿するハードルが高すぎる」といったネガティブな意見も多く聞かれた。しかし、蓋を開けてみると、mixi日記を使っていた層やブログの継続が難しくなってしまった人、またTwitterやFacebookの数行では満足できないといった人が次のプラットフォームにSTORYS.JPを選んでくれている。
起業家や著名人のストーリーは当然目立つものの、主婦やOL、新入社員や学生など、幅広い人々が自らのストーリーを投稿している。こうしたオープンなプラットフォームに思わず投稿したくなるような出来事は普段の生活ではそうそう起こらない。それにも関わらず、人々がSTORYS.JPを使い続ける理由は何なのか。
「単なるツールではなく、ストーリーを書く空間、プラットフォームやコミュニティを作ることにこだわってやってきました。人は自分のストーリーを書く時にどんなことを嬉しく感じるのか?自分たちだったらどうしたらストーリーを書きたくなるのか?膨大な量のUXをチームで議論し、仮説検証し続けています。」
努力して這い上がる姿を描いたストーリーに集まる共感
投稿されるストーリーの中でも一番人気は、どん底から這い上がって頑張る姿を描いたようなストーリーだという。具体的には、『あいりん地区で元ヤクザ幹部に教わった、「○○がない仕事だけはしたらあかん」という話』や、前述の『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』など。努力を美学とする日本人文化、何かに向かって必死に励むピュアな心を感じさせるストーリーに人の心は動かされるようだ。
人間ドラマのようなストーリー以外にも、例えば平日の夜9時から深夜にかけてはもう少しライトなストーリーがよく読まれる。もがきながらも挑戦する20代たち、30代独身男女の恋愛リアルレポート、ダメ男に惚れる女たちといった気軽に読める面白路線のコンテンツも話題を集めている。
STORYS.JPのストーリーの投稿にはFacebookログインを要する。素性を明かした上で、自分の身の上話をすることに抵抗はないのか。むしろ、それを有効に活用する姿勢が増えていると大塚氏はいう。
「企業の看板に頼る時代は終わり、これからは個人の時代。自分の身の上話を伝えることで共感者と出会い、豊かな人生を送りたいと願う人が増えていると感じます。これはキャリアなどを見据えた自己ブランディング欲が強い人だけでなく、自分から発信することで趣味や境遇が同じ人たちと繋がりたいという思いがあるようです。」
トライアンドエラーの中で生まれた成功と失敗
STORYS.JPの機能に関するトライアンドエラーは数えきれない。良かれと思って追加した機能が思うように使われない失敗もあった。例えば、ストーリーリクエストという機能。他のユーザーが、特定の人にストーリーを聞かせてほしいとリクエストできる。しかも、A氏のこんな話が聞きたいという内容を、リクエストする側が自由にタイトルをつけてSNSに投稿できてしまう。ただ、これは機能先行で考えてしまったため、機能を与えられたユーザーがどう使ってよいか迷ってしまい、結局よくわからない機能になってしまった。
反対に、追加した機能で反響が良かったのは「書きかけの次のストーリーを入れる」機能だ。STORYS.JPの使われ方を見ていると、連載のように続けて投稿している人がいることが発覚した。そこで、ストーリーの最後に続きのストーリーを書きかけとして設定できる機能を追加。これによって著者は読者を事前に集めることができ、読み手はストーリー投稿の通知を受けることで読み逃すことがなくなる。
常にストーリーを共有するユーザーの立場に立ってサービスを作り込んでいるチームだが、これほどまでの反響の大きさには驚いているという。
「自分たちが想像していた以上に、STORYS.JPのコンセプトである「名刺にのらないストーリー」ということに共感してくれる人が多いことに驚きました。サービスに共感して、一緒に働きたいと連絡をいただくことも多いんです。また、積極的なプロモーションをしなくても、ユーザーさんたちがSTORYS.JPを広めてくれています。先日は、地方の学校のある先生が、「このストーリーは受験のためになるから読んでおくように」と生徒に薦めているという話を聞きました。」
人生の可能性を広げる世界を作る
今回リリースしたiPhoneアプリでは、ウェブのSTORYS.JPと全く同じことができる上、アプリ限定の機能「トークストーリー」を搭載している。iPhoneでストーリーを書くのは、移動中などちょっとした隙間時間。時間をかけて書く本気のストーリーだけでなく、軽い会話のような内容を気軽に投稿してもらうため、吹き出し式(メッセージ式)のUIを実験的に実装した。PCを持っていないiPhoneオンリーのティーンエイジャーなどにも使ってもらうことを狙う。
STORYS.JPのチームは現在4人チーム。CTO、エンジニア、マーケティングとアライアンス担当、そしてインターン。STORYS.JPを愛し、共に本気で世界を変えようと思ってくれる人材を常に募集している。
STORYS.JPはこれからどこに向かうのか。
「これはサービスリリース時から一貫して変わっていませんが、有名な人や著名な人ではなくても、人生の可能性を広げる世界を作る。このために、これからも多くのストーリーを集めていきたいと思います。」
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