大好きを仕事にする。東大の海洋研究所からバルーンアーティストを目指す須原三加さん【前編】

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Mika-Suhara

私は本当に支えてくれる人に、出会いに、恵まれていると思います。好きを仕事にすることには別の辛さもありますが、好きだから耐えられることもある。好きなことがあるんだから、人生は一度切りだしやってみようと思えました。

大好きを仕事にしようとする女性がいる。現在26歳の須原三加さん。静岡大学の農学部で学び、その後修士課程で東京大学の大気海洋研究所に所属。魚の研究で博士課程に進むことはせず、ずっと好きだったバルーンの世界に飛び込んだ。平日は独立行政法人の研究所で働き、週末はバルーンアーティストとして活動する日々。そして今年の4月からは、バルーンアート一本で生きて行くことを決めている。

大好きな「海」と「バルーン」

海とバルーン。一見、何の関係もないように思える2つのこと。でも三加さんにとっては、どちらも昔から好きなもの。タコがすごく好きだったことをきっかけに生態学に興味を持ち、たまたま足を運んだ大学のオープンキャンパスで出会った教授に惚れ込んで進路を決めた。一方、彼女の強烈なバルーン好きは幼少時代からずっと続き、今でも家族の間で語り継がれるほど。

「家族旅行で海に行った時、船の上で案内のお兄さんがバルーンを作ってくれて。渡されたのは一本のバルーンで作った子馬でした。でも、帰りの飛行機の手荷物検査場で引っかかってしまい、子馬はどこへやら、ただの長いバルーンとなって手元に戻ってきてしまって。すごく大事だったので号泣しました。ずっと記録していたバルーンのアルバムにもその時のことが書いてありますね。10歳くらいだったかな。」

子どもなら誰でも風船は好きだし、風船を見つければ手を伸ばして欲しがる。でも、バルーン専用のアルバムをつけていたという人はなかなかいないんじゃないかと思う。それくらい三加さんにとってバルーンは特別なもの。

バルーンアーティストという職業との出会い

彼女がバルーンアーティストという職業に出会ったのは、小学生の頃に見たTVチャンピオンのバルーンアート選手権。そこに登場していたのが、今では世界的に有名なバルーンアーティストの家泉あづささん。本格的にバルーンアーティストを目指すと決めた今でも、家泉さんは三加さんが目指す憧れの人。

そもそもバルーンアーティストという職業に就く人はどう生計を立てているのか。教室やセミナーなどで講師をしたり、子ども相手のショーに呼ばれたり、またショールームやイベントなどの装飾を主に手掛ける人もいる。バルーンアートの事業で実店舗を持つところは少なく、バルーン電報やギフトショップのほとんどはオンラインショップという形態をとっているものの、その市場は既に飽和状態なんだとか。

修士課程を終えた3年前、バルーンの道を志すことを決めた三加さんがまず通ったのが、バルーンアートのビジネススクール。そして、バルーンのコンテストで同時開催されるセミナーに積極的に参加した。コンテストは年数回開催されるが、そこで世界チャンピオンのバルーンアートの講師などに習い、技術を習得していった。

Suhara-Mika-balloon

東京大学のオープンキャンパスで手掛けた作品

バルーンをはじめて半年後、コンテストのファイナルパーティの場では憧れの家泉さんとお姉さんの柴田あかねさんに出会う機会にも恵まれた。勇気を振り絞って話しかけたところ、以降も連絡を取り続け、最終的にはアメリカで開かれたバルーンの大会を手伝うことに。他にも、大学のオープンキャンパスのバルーンデコレーションを手掛けるなどして個人で活動してきた。

後編につづく。

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