目が見えない人のための、未来のデバイス「ミミミル」を作りたい−−大阪発のスタートアップの挑戦

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大阪のオオサカンスペースで定期的に開催されているピッチイベントのShoot(以前の、Shoot from Osaka(n)から名称変更)が、2月7日に第7回が開催され、今回も関西に拠点を構える企業やスタートアップが5分間のピッチが行われた。毎回趣向を凝らしたサービスや取り組みが紹介され、関西の盛り上がりを感じるイベントとしても注目されている。

筆者は、第一回から毎回取材をさせてもらっているが、回を重ねるたびにプレゼンスキルやサービスのコンセプトなどがブラッシュアップされ、質の高いプレゼンターが登壇している。イベント開催前にプレゼンのリハーサルを行なうなど、関西の企業が、日本だけでかからわず世界にも通じるプレゼンを行おうと支援している様子が伺える。

視覚障害者のためのデバイスを作りたい

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今回は9組のピッチが行われたが、その中でも注目だったのは、視覚障害者のためのウェアラブルデバイス「ミミミル」だ。ミミミルは、デバイスで撮影した画像データを解析し、画像に映っている情報をテキストデータにし、音声で通知してくれるというサービスだ。

ミミミルを開発しているアナザーブレインの久田智之氏は、ソフトウェアを開発するエンジニアとして活動している。友人の視覚障害者のために、ITを通じて何かサポートできないかと考えていた。そんな時に、Google Glassなどのウェアラブルデバイスが登場したことをきっかけに、ミミミルのアイディアを着想した。

「ウェアラブルデバイスを見てすぐに思ったのは、健常者ではなく障害者を支援するツールになれると考えた。

例えば、目が見えない人に目の前にあるモノを音声で教えることができれば、視覚障害者の人はもっと生活しやすくなる。安心して誰もが幸せに暮らせるような、そんなサービスを作りたいと思っている」

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2013年10月のMA9 Mashup Camp 大阪で初めて発表した「ミミミル」は最優秀賞を受賞し、MA9 2nd Stageへと出場。NTTドコモ賞, KDDIウェブコミュニケーションズ賞, TechWave賞を受賞した。12月に行なわれた Docomo Wearable Hackathon では優秀賞を受賞し、現在はdocomoが持っている文字認識APIを活用してプロトタイプの開発を進めている。

しかし、カメラに映った画像データを文字認識APIで読み上げる技術はまだまだ開発段階にあり、実用化として活用できるまでにはまだ数年はかかると言われれているという。文字認識APIの開発を待っていては意味がないと考え、久田氏は現在の技術で代替できるものを模索。そこで活用したのが、ソーシャルメディアを活用したクラウドソーシングだ。

「ウェアラブルデバイスのカメラで撮影したら、それを自動でTwitterに投稿します。写真付きで投稿された画像に映っているものを教えて欲しい、と書かれた内容を見たフォロワーさんは、映っているものをリプライで返信。返信された内容を音声で読み上げることで、問題を解決をすることができます。

Twitterを通じて5秒でできるちょっとしたボランティアを通じて、少しでも目の見えない人の助けになればと考えている」

全盲の人が安心して暮らせるために、全盲の人をフォロワーして助ける日本全国の “Mashup ボランティア” の方々の力を借りる。社会福祉法人やNPOなどの支援団体が、全盲者リストをつくって運用したり、迷惑な行為をする人をBlockしたりするという仕組みを通じて、Twitterの機能を活用した健全な仕組み化も考えているという。企業のCSRの一貫としても、これらの取り組みを支援できるのではと久田氏は考えている。

ウェアラブルは、義手や義足といった活用法として馴染みが深いものでもある。こうしたデバイスがネットワークと接続されることで、日々の生活をより豊かにするアイディアは、まだまだ可能性を秘めているだろう。大阪から生まれた新しい挑戦の次の動きに期待したい。

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