経営学を平たくする:5年間、毎朝8時に「使えるキャリア学」を発信し続けるキャリアプロデューサー田中伶さん【前編】

by Yukari Mitsuhashi Yukari Mitsuhashi on 2014.2.27

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「正しい答えはないかもしれないですけど、経営学は、2つの選択肢がある中で、どちらかを選ぶのではなく、どうすれば両方とれるかを考える学問だと思ったんです。だから、夢か現実か、じゃなくて、夢を現実にするにはどうすれば?を考えるためのヒントがある感じでしょうか。」

5年間、使えるキャリア学を毎朝発信し続けている女性がいる。キャリアプロデューサーの田中伶さん。関西大学在学中に「自分のやりたいこと」を見つけるキャリアスクールを開講し、大学を卒業してからも、さまざまな人のキャリアデザインをサポートする仕事を続けている。

一人一人とコミュニケーションを何度も重ねて、彼や彼女が本当にやりたいことを一緒に探すお手伝いをすることもあれば、経営学の理論を使ったセミナーなどを展開することも。最近手掛けたのは、「Soup Stock」で知られる株式会社スマイルズで働くパートナー(アルバイト)向けのセミナーだった。

人生を変えた経営学との出会い

伶さんが、キャリアカウンセリングやキャリアデザインの仕事を始めるようになったきっかけは、経営学との出会い。関西大学では中国語専攻で、台湾への留学経験を持つ彼女。留学で大学を1年間休学し、仲が良い友達は一足先に就職活動を始めていたが、中国語が母国語のように話せる友人ですら就職が決まらない厳しい現実があった。また、大学を卒業して就職するという決まったレールの上を歩くことを疑う気持ちもあった。

そんな状況に不安を感じていた矢先、テレビでたまたま見かけたのが、兵庫県立大学准教授である川上昌直先生だった。日本で初めて大学のゼミを法人化させ、若くして経営学の第一人者。伶さんは自ら調べて先生に会いにいき、その後、直々に経営学を教えてもらうことになる。

「企業っていうものが、どうすればお金を稼ぎながらミッションを達成できるのかを真剣に考えているのが経営学です。平たくいうと、どうやったら夢を現実にできるのか。お金、情報、人などさまざまな資源がある中で、それをどう活用して、夢に近づくのかを突き詰めるのが経営学なんです。」

進むべき道について悩む今の自分に、何かヒントになるものが得られるかもしれない。そんな期待に胸を膨らませた彼女に、川上先生はこう投げかけた。「君が中国語を勉強して誰が幸せになるの?」彼女はその質問に答えられなかった。これを転機に、経営学の理論を用い、自分に置き換えて考えることで自分を探すようになった。

唯一受けた就職面接で、自分の道を突き進むことを決断

ビジネスマンしか読まないような堅苦しい経営学の本にも、生き方のヒントがたくさんある。それを噛み砕いてあげることで、敬遠されてしまう経営学の敷居を下げて、人がより豊かに生きる手伝いをしたい。そんな想いから、大学卒業して一年が経った頃、関西を離れて東京に上京することを決めた。関西で立ち上げたキャリアを考えるコミュニティは軌道に乗り、今度は東京で自分の力を試したいという思いもあった。

キャリアカウンセリングの仕事を続けるために上京した伶さんだが、大学卒業直前に、人と違う道を進むことに不安を感じ、一社だけ就職面接をした会社があった。人に選択肢と可能性を増やす仕事がしたいと選んだ、子供のための職業体験施設であるキッザニア。新卒は募集してなかったものの、履歴書を送ったところ人事担当者から連絡が来た。その時に言われた言葉がなければ、今の彼女はいないかもしれない。

「人事担当者の女性にいきなり言われたのは、「どうしたの?」でした。送った履歴書に、当時自分で立ち上げた個人事業の活動は2013年3月廃業予定です、と書いていました。

ぜひあなたみたいな人に来てほしいけれど、自分がやってきたことの価値をもう一回見直して。本当にこれまでの活動をやめていいのか考えてみてからもう一度いらっしゃいって言われて。

その言葉で、目が覚めました。自分がやってきたことは大したことないと思っていたけれど、大人の人にそんな風に評価してもらえることだったんだと。単純に自分が不安になって、安定した仕事に就きたいと思っていただけなって。その時、これまでやってきたことを自分はやっぱり続けなくちゃと心が決まりました。」

再現性のある経営学の考え方を発信し続けて5年

何の人脈も仕事もない状態で、ひとまず一ヶ月分暮らせる分だけ貯めて上京した伶さん。自分がやりたいこと、できることを紙にまとめ、あらゆる人材系の会社に送った。女性の社員向けのメルマガを書く依頼をもらったり、ブログを見た読者さんから講師の依頼などが舞い込むようになっていった。

東京に来て出会ったのは、同じようにキャリア支援のための活動をしていた仲間だった。2012年8月に出会い、きちんと事業として継続していくために共に会社を立ち上げた。当時は個人事業主として仕事をしていたものの、徐々に会社の仕事にフルコミットするようになっていった。

As I Am」のブログは、伶さんが経営学について学んだことをアウトプットする場所として誕生したもの。経営学の本を読んではレポートを書いていたが、いつしかそれをブログに公開するようになった。彼女のブログは、学生の頃に始めて5年以上経った今でも毎朝8時に年中無休で更新されている。

ホームレスから社長になった、というような成功談が書籍になって注目を浴びることもあるが、それを読んだ人に再現性があるかというと決してそうではない。一方、例えばドラッカーの本に書かれる理論は根本的で、自分に当てはめて考えられる。

なぜ?を5回繰り返したり、SWOT分析をしたり。本来、企業に向けて書かれた経営学の内容は、個人が自分に置き換えて考えることができる。自分が会社だったらどうするか。そんな経営学の方法論をもっと広めることで、人の自分探しを手助けがしたいと話してくれた。

「経営学にちりばめられたヒントは、いろんな人の役に立つものだから、それを噛み砕いて提供したいと思っています。

正しい答えはないかもしれないですけど、経営学は、2つの選択肢がある中で、どちらかを選ぶのではなく、どうすれば両方とれるかを考える学問だと思ったんです。だから、夢か現実か、じゃなくて、夢を現実にするにはどうすれば?を考えるためのヒントがある感じでしょうか。」

働くってどういうこと?

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スマイルズで講師を勤める田中伶さん

前述の株式会社スマイルズで実施したセミナーは、Soup Stockで働くアルバイトさん向けに、「働くってどういうこと?」という基本的な問いをかけ投げるものだった。具体的な就職活動のテクニックよりも、長期的に自分がどうなりたいのか?というビジョンを明確にするためのヒントを投げかけ進めて行く。今回は学生が対象だったが、これから就職を考える学生だけでなく、キャリアに悩む社会人などが参加するセミナーも多い。

「ただ一方的に発信するよりは、その人の話をいっぱい聞いて、それを掘り下げることがしたいんです。やりたいことが明確な人より、それが見つからない人、そんな人の役に立ちたいと思っています。だからこそ、こちらが伝えるだけでなく、伝えたことに対する“相手の反応”が見えることが一番大事です。」

後編につづく。

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