「ゲーム開発畑で5年間、グローバルな環境「エレクトロニック・アーツ」を次に選んだ村上咲さん」の後編をお届けします。【前編】はこちらをどうぞ。
スマホという小さいスクリーンで、全体の雰囲気を踏襲しながらFIFAの臨場感を伝えるにはどうしたらいいか。この辺は日本の得意分野なんじゃないかと思っています。
FIFAの臨場感をモバイルスクリーンで再現
EAに入社する前は、 小規模のベンチャー企業で広く浅くさまざまな業務をこなしてきた。デザイナーとして入社した会社でゲームのシナリオを書いたり 、キャラクターのセリフを書いたり。求められればコーディングをすることも。今後EAでは、これまでの幅広い知識や経験を活かしながら、UIやUXという専門性をもっと突き詰めていくことを目指してる。
そもそもEAという企業にとっても、モバイルはまだまだ未知の分野。モバイルゲームに関しては、ジャパンスタジオのナレッジから学ぼうという姿勢がある。日本発でモバイルアプリに関するガイドラインを発信していきたいと話す。
「日本市場、特にモバイル市場については海外スタジオも興味津々です。日本人って、もともと箱庭とか、ちっちゃいものを作るのがすごく好きな文化じゃないですか。手先も器用だし。手の中に収まるたまごっちとか、そういう流れを考えた時に、スマホっていうのはいろいろ工夫をこらして考えやすいツールだと思って。
例えばFIFAの公式ゲームも、海外は巨大スクリーンに派手な演出をすることは得意で、かっこいいものを仕上げる。でも、スマホという小さいスクリーンで、全体の雰囲気を踏襲しながらFIFAの臨場感を伝えるにはどうしたらいいか。この辺は日本の得意分野なんじゃないかと思っています」。
メリハリをつけるのも仕事のうち
EAの中のベンチャー企業のようなジャパンスタジオに入社して1年5ヶ月。EAに入って一番驚いたのは、その意思決定の潔さ。各開発プロジェクトには必ずおしりのリリース日が決まっていて、そこは絶対死守される。
万が一、リリースが間に合わないようなことが判明すれば、思い切って実装予定の機能をごそっと削る。これは、もともとコンソールをルーツに持つ企業だからこそできるモバイル開発のあり方なのかもしれない。期日の他にも、各ゲームには必ず売り上げ目標が定められていてその達成にはどこまでもシビア。
「プロジェクトに関わっているチーム全員を定期的に集めて、今の進捗を全員で確認することを徹底しています。リーダーが持ち帰って他のメンバーに知らせるやり方もあると思うんですが、絶対に全員が直接聞きます。メンバー各々に自覚させるように。でもサポートやフォローもしてくれるため、無理な残業はせず、うまく息抜きしながら仕事できる」。
遅すぎる変化はないという母の教え
咲さんが就職する前に両親が離婚したため、東京に出てくる咲さんと共に50才の母親も東京に上京。心機一転、東京で仕事まで見つけて新たな人生を歩んでる。咲さんがそんな母親から受ける影響は大きい。何が起こるかわからないのが人生。でもだからこそ、本当に楽しめることや学べることを真剣にやることを強く意識するようになった。
「専業主婦だった母は50歳という年齢で東京に来て、仕事を見つけて頑張っています。いくつになってもそうできる、ってすごい。私は結婚はまだですが、しても仕事を辞めようとは思ってないです。
会社でも趣味でも、自分だけの世界をちゃんと持ってそこで活き活きしているからこそ、家庭もうまく行くのかなって。そんな生き方がしたいです」。
遊びとデザインの交差点
外資系ならではなのか、仕事と私生活の両立が推奨されるEAの企業文化。結婚したり、奥さんが出産したメンバーなどもたくさんいて、すごく忙しい時期でも平気で休みがとれる。仕事と家庭プライベートは両立させるものだから。
少し前に開かれたカナダのワークショプには、普段から海外と仕事することを希望する咲さんに参加の声がかかった。
「仕事に対しては、肉食系かもしれないです(笑)手を挙げることが近道になる。もし、EAの他のスタジオに来てみない?なんて誘われたら、たぶん行くと思います。彼氏は日本に置いていって、でも母親は来るかもしれないですね(笑)」
以前よりも絵を描いたり、英会話を勉強したりしてプライベートの時間も充実してきたと話す咲さん。大好きなティム・バートンを思わせる世界観を描き続けていて、いつか小さなギャラリーを開くことが小さな目標なんだそう。
「ゲームには全然こだわってないんですけど、遊びとデザインがリンクする何かで仕事はしていきたいです。
他のアーティストやデザイナーと違う私の強みは、海外の色んな人とやり取りしながら仕事をしてきたことだったり、広く色んなことをやってきた経験値です。今後はそんな経験を活かして何かもっと大きいことをしたいです」。
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