ウェディング業界に風穴を開けるアウトサイダー、「crazy wedding」の山川咲さん【後編】

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「ウェディング業界に風穴を開けるアウトサイダー、「crazy wedding」の山川咲さん」の後編をお届けします。【前編】はこちらをどうぞ。

Saki-Yamakawa

一番大事なことは、人が幸せに働くってことを普通に考えるってことかもしれないです。

右も左もわからないまま新しいウェディング業界に飛び込んで、自らの志をまっとうする素晴らしい人生を送っている咲さん。そんな咲さんを突き動かすものについて聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「うーん、なんだろう。昔はモチベーションとかあったんですけど、今はモチベーションがない世界っていう感じです。本当に毎日幸せだし。昔はモチベーションをあげなきゃって思ってました。でも今は自分の人生をかけて、自分がやりたいことをやっているから。」

提案やチャレンジが評価されなくなった前職時代

でもそんな彼女にも、自分の存在価値を疑い、自信を喪失していた時期があった。人材コンサルティングの職場にいた頃のこと。新しいことへのチャレンジ精神が賞賛される20人規模だった企業が大きくなるにつれて、変化=和を乱すことと捉える風潮が生まれ、身動きがとれなくなった。

もっと新しいことをしようという提案をすればするほど、慎重さを重んじて守りに入る姿勢が強まる。自分の存在価値を疑問に思いながら働き続けたものの、組織の枠組みの中の出来上がった人事評価制度の中で評価されることはなかった。

「実は流産をきっかけに、人事評価のことで会社と折り合わない部分があって。そのとき、人生をかけてがむしゃらに働いてきたのに、今の自分って何なんだろうとか、私って会社にとって価値がない人間なのかなって思う瞬間がありました。

大好きな会社で、大好きな仲間がいて、それだけで頑張る理由になるだけの大きな存在だったけど、もう前のようには働けない自分がいました。結局今から考えると従業員として会社に翻弄されて働く生き方自体に、限界を感じたのだと思います。」

ボロボロになって旅立ったオーストラリア

当時は、自分で決めたものの大好きな会社を辞めるという自分の決断に、心も体もボロボロだった。どこかに逃げなきゃ。そう思い立ってオーストラリアに飛び立ったのがその3日後。1ヶ月くらいオーストラリアを旅していくうちに、どんどん傷が癒されていった。オーストラリアの現地人、それはカフェで働いて生計を立てる人もサーフィンをしている人も、みんなそれぞれの人生を謳歌している。

そんな姿を見ているうちに、人生に怖いものなんてないと思えるようになっていった。心の中のしこりがとれて、とめどない自分への疑問や人生への不安も徐々に薄れていった。

「旅をしている1ヶ月間、自分がやってきたことをひらすら振り返っていました。それこそ、自分がどれだけ両親に愛されてきたのか。周りの人たちにどれだけ支えてもらってきたか。

自分の価値を疑いながら生きてきたけれど、5年間がむしゃらに働いて、量も内容もとんでもないことをやってきたなって自分を認めることができたんです。それがストンと落ちたら、自分って今のままで素晴らしい人間じゃない。別に失敗を恐れることもないなって思えるようになりました」

超絶理想主義で運営するチーム

晴れの舞台を迎えるカップルに引っ張りだこのcrazy wedding。でも、チームの歩みはまだまだ始まったばかり。企業としての拡大、また今のやり方を仕組み化して量産し、ビジネスにしていくこと。

その一環として、プロデューサーズと呼ばれる、フリーランスのウェディングプロデューサーを外に排出する取り組みを始める。最低限の面会時間は必要になるものの、子育てをしながら、また専業主婦の女性などが新しい働き方を見つけるきっかけにしたいと話す咲さん。

咲さんのチャレンジを支えるのは、会社の代表であり夫の森山さん、そしてUNITED STYLEという会社の仲間たち。この会社もまた、常識にとらわれる事無く、組織という新しい概念を生み出すために咲さんが育てて来た、彼女の宝物のような存在だ。

「自立した個人がスタイルを持って集い、偉大な仕事をしよう」毎日自然食を全員で食べて、高い目標に向かって、お互い屈託の無い意見を交わして家族のように生きている、新しい組織のあり方がそこにはある。

「今まで、チームって「管理する」というイメージだったと思います。人は怠けるものだという前提で、どうマネージするのか。でも、私たちには超絶理想主義と名付けたポリシーがあって。まず理想を考えて、そこから判断するんです。

それはもちろん社内の制度や文化にも反映されていて、会社に雇われている人は一人もいないし、利益が出たらそれをみんなに配分する。望めば会社を1ヶ月休めるような制度も設けています。一番大事なことは、人が幸せに働くってことを普通に考えるってことかもしれないです。」

チーム全員が世界旅行へ、最後はパタゴニアの地に

Crazy-Wedding-Patagonia

crazy weddingを運営するUNITED STYLEのチームは、2013年終わりからそれぞれ世界一周の一人旅に出た。そして1月3日に南米のパタゴニアで集合。パタゴニアは、代表の森山さんが創業の判断軸を決めた思い入れのある場所。素敵な仲間たちと共に、crazy weddingを始め、世界的な事業を育て、「Style for Earth」という理念をもとに今後2000社を創出していく決意を新たにした。

「会社員として働いていた頃は、夢が叶うとかって言っている人のことを「へー」って、どこか遠い事のように見ていました。でも今、自分が一つの夢を叶えることができた。人生って本当に自由だし、夢は絶対に叶う。というか、世の中にできないことなんてそうそうないよって思えるようになった」

そんな咲さんの思いは、近々一冊の本になって登場する予定。これからもウェディングに絞ることなく、チャレンジを続けていく。パワフルでハッピー。活躍している女性を表現するときにありがちな言葉だけれど、山川咲さんはそれを実写化したような女性。そして苦しい時は苦しんで、強がらず、ちゃんと助けを求められる人。そして彼女を助けたいという人がたくさん集まる人。

世の中、社会、女性のためにこんなことがしたいと提言するまでもなく、彼女が自らの心に素直に従っていれば、自ずとそれが周囲のためになる。そんな不思議な力が、彼女にはある気がする。

*山川咲さん(crazy weddingブランドマネージャー)のプロフィール*

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