グロースハック事業のKAIZENが500万ドルを調達、米国展開を本格化へ

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planBCD___あなたのサイトをA_Bテストで素早く最適化

ウェブサービスのUI改良を通じてオンラインキャンペーンなどの効果を高めることのできるA/Bテスト管理プラットフォーム「PlanBCD」を運営するKAIZEN platform Inc.(以下、KAIZEN)は3月31日、Fidelity Growth Partners Japanおよびグリーベンチャーズの2社に対し第三者割当増資を実施したと発表した。金額は米ドルで500万ドル(1ドル100円換算で約5億円)。払込日や出資比率などについては公開されていない。

KAIZENでは今回の調達でPlanBCDのプラットフォーム開発をさらに強化、それに伴う人員拡充およびインフラの強化に務める。また、同時に米国での展開を本格化させるため、共同創業者兼CEOの須藤憲司氏が海外事業の立ち上げにシフト、サンフランシスコおよびニューヨークに設置される拠点のマーケティング強化を推進するとしている。

今回の調達を前に独特の方法で人員強化、特にエグゼクティブクラスの獲得に成功しているKAIZENは、現在40名を超える布陣になっている。彼らが狙うのは「国内での開発強化」と「米国起点の世界展開」のふたつだ。

「今回の調達でPlanBCDはA/Bテストからさらに企業のオンライン事業成長を助ける領域に拡大させるべく、開発を進めます。さらに小川さん(元グーグルの小川淳氏)と瀧野さん(元グリーの瀧野論吾氏)に来てもらったので、国内はお任せして私は本格的に米国展開にシフトします」(須藤氏)。

PlanBCDがA/Bテストから「総合的な改善プラットフォーム」へ進化

PlanBCDの特徴とも言える「ツール+クラウドソーシング」を活用した手法は企業側に受け入れられ、2013年8月のサービス提供開始以降に30社を超える企業への導入が完了、より幅広いユーザーへの提供を目的としたオンライン版は提供開始後4カ月で世界15カ国、500社への導入に成功している。須藤氏によれば、クライアントの多くは元々オフラインでのビジネスが主で、グロース領域の経験が浅く後手に回っている企業が多いのだそうだ。

こういった専門知識が浅い企業であってもオンラインキャンペーンの改善を実施し、売上や会員獲得の改善を可能にするのが須藤氏らの狙いだ。PlanBCDもそれにあわせて改良が予定されている。

「いくら広告キャンペーンが効率よくてもランディングするクリエイティブが改善されてなければ最後のコンバージョンは望めません。今後は改善すべき箇所を数値化し、ここを修正すると売上改善などに効きますよ、というレコメンドを可能にするダッシュボードなどを準備しようと計画しています」(須藤氏)。

私は実際にダッシュボードのイメージを見せてもらったが、改善すべきポイントが数値化されて並んでおり、担当者はボタンを押すだけで改善依頼がクラウドソーシング先であるグロースハッカーに流れ、改善が進むとその数値が上下して効果が分かる、といったような内容だった。

通常、改善のプロジェクトというのは大きなゴール設定から細分化してKPIを設定、例えばコンテンツの改善で回遊性を2%改善する、といったような小さなプロジェクトを短期間で大量にいくつも回していくことになる。プロジェクトが大量になればなるほど工程の管理は難しくなるので、ここをPlanBCDが効率化してくれるのは大変理にかなっていると感じた。

グロースハッカーを地方から「クラウドソーシング」する計画も

順風満帆にみえるKAIZENだが課題もある。グロースハッカーの数だ。数カ国に散らばるクラウドソーシング可能なPlanBCD登録グロースハッカーの数は約400名で、全く足りていない状況なのだという。そこで彼らが考えているのが「地方」での人材育成だ。

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「地方自治体に協力を仰ぎながら、地域で勉強している学生などの育成も視野に実践の場所を提供したいと考えてます」(須藤氏)。

つまり福岡や沖縄、東北といった地域に対して改善案件をクラウドソーシングのスタイルで提供、実際に取り組んでもらうことで人的リソース不足の解消と育成を一気にやってしまおう、というわけだ。PlanBCDの場合、複数人のグロースハッカーが改善に取り組んだとして、最も効果が上がったものが採用されるので、この方法は理想的かもしれない。

「テクノロジー+人的リソース」のハイブリッドで海外展開へ

ウェブキャンペーンはシーズン毎、企業の製品サイクル毎にあり無尽蔵ともいえる。ツールの改良により、さらに多くの改善プロジェクトを効率的に回せるようになり、さらにそれを支えるグロースハッカーを教育含めて全国から集める。この「テクノロジーと人的リソース」のハイブリッド展開こそKAIZENの強みであり、これがしっかりとワークすればあとは世界に面を拡大していけば可能性はさらに広がる。

国内ウェブ業界のベテランたちの動きから目が離せない。

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