男性経営者には作れないサービスを世に出し続ける女性シリアルアントレプレナー、「iemo」の村田マリさん【前編】

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一つ前に立ち上げた会社のソーシャルゲーム事業を売却し、昨年末に「iemo」をリリースしたシリアルアントレプレナーの村田マリさん。学生時代から、自分自身がユーザーでもあるサービスを次々に世に出してきた。今回新たに手掛けるiemoも、「男性経営者には作れない」サービスだと言う。

起業家としての10年間で培ったサービス作りの極意、母親として決意したシンガポールへの移住、働く女性に向けたアドバイス。自身が歩むシリアルアントレプレナーという道は、意外にも女性にこそおすすめなのだと話してくれた。

3年後の独立を見据えてゼロイチの積み上げたサイバー時代

三橋:今日はよろしくお願いします。改めて、自己紹介をお願いできますか。

村田:今は、2013年末に立ち上げたiemo株式会社のCEOをやっています。「iemo」というスマートフォンで読める住まいや暮らしのメディアを運営しています。インテリア写真、リフォーム情報、暮らしに役立つ独自記事が2,000件以上あって、まるでインテリア雑誌を読むような感覚で読んでいただけます。

三橋:村田さんは常に何か新しいものを作っていらっしゃるイメージですが、一つ前の会社は売却されたんですよね。

村田:事業売却だったので会社自体はまだ残っていて、ちょうど10周年になります。もともとホームページの受託制作の会社としてスタートしました。当時はCGMの口コミメディアの運営などが流行で、2009年にソーシャルゲームに参入して。2年程して株式会社gumiさんにソーシャルゲーム部門を売却しました。全社員がgumiに移動して自分一人になり、新たにiemoを立ち上げたんです。

三橋:新卒で入社したのはサイバーエージェントだったとか。

村田:そうですね、2000年入社で新卒の一期生として入社しました。入社する段階で社員数が100名くらいで、ちょうど上場したタイミングでした。当時はインターネットの広告代理店専業の会社でしたが、わたしはゼロイチの新規事業の立ち上げを集中的にやっていました。

三橋:その頃から起業するというビジョンがありましたか。

村田:ありましたね。もともと学生時代に自分でコミュニティサイトを運営していて。リアルのイベントで収益を上げるビジネスモデルで、スポンサーさんについていただいたり、コンテンツ自体を企業さんにOEMしたり。そのまま独立しようかと思ったんですが、一度会社に入って勉強させてもらおうと思って、25歳の社長がやっている上場を控えたインターネット系のベンチャーに入社したんです。社長面接の時も、3年くらい勉強させてもらって独立したいと伝えました。

三橋:それで、当時は珍しい新規事業立ち上げに配属されたんですね。

上手くいくサービスの2か条をクリアする「iemo」

村田:2000年頃なので、インターネットビジネスの経験がある人材が中途でもまずいない時代で。学生時代に自分でプログラムを書いたり、ライティングをしたりを小さい規模でやっていたので、経験があるプレーヤーとして結局6事業くらいの立ち上げに携わらせてもらいました。

三橋:その時期に培って、起業後に活かされているものはありますか。

村田:なんでしょうね。みんな経験がなくて、でもやるしかない。3人くらいのチームで新規事業をやるんですが、限られた資本の中でゼロイチをいかにスピーディに立ち上げるか。ディシジョンメーカーである上長の背中を見て、上手くいったものと失敗したもの、それぞれのパターンを学べた感じはあります。

三橋:上手くいくサービスとそうでないものを隔てる要因はどこでしょう。

村田:まず市場の選び方です。できるだけ大きい市場、もしくはこれから急激に成長していく市場を選ぶことが一つの条件だと思います。あとは、市場の成長に併せてスピード感を持ってサービスを立ち上げること。この2点に尽きるんじゃないでしょうか。

三橋:iemoもその2つは意識して立ち上げられた?

村田:意識しましたね。今はスマートフォンに乗り換えるタイミングで、これからスマホコンテンツ、アプリ、ビジネスなど何が流行って行くのか。人の生活がどうなっていくのかと考えた時に、スマートフォン上で閲覧できるコンテンツが不足していると感じました。では、スマホやタブレットで閲覧できるものだな、と。

じゃあどんなコンテンツを作ると考えた時に、市場が大きい衣食住の中の「住」を選びました。衣食に関してはさまざまなサービスが登場する中で、住まいに関してだけ圧倒的に情報が少ないと感じました。また、30代半ばのわたしの世代は結婚をして子どもを生んで、ちょうど住まうことへの興味・関心が湧いているタイミングです。どう暮らしていくかを考えるど真ん中で、自分自身が欲しい情報が不足していたことが決め手になりました。

ニッチトップにしかなれなかった「デート通.jp」

三橋:女性、ママ、住まいへの関心からiemoが生まれたのだとすると、これまでもご自身がサービスのユーザーでもあった?

村田:そうですね。ソーシャルゲームが儲かる業界だったから参入したんだろうってよく言われるんですけど、自分自身が他社さんのゲームに10万円くらい課金するくらいのゲーマーでした。もともとデザイン系の受託会社を立ち上げたのも、アート、建築、デザインが好きだから。これまでに自然にインプットしているものを、今回サービスとしてアウトプットすることで生業とさせていただいた感じです。

三橋:過去に運営されていたサイトはどうでしたか。

村田:「デート通.jp」という口コミサイトを運営していた時期がありました。レストランではなく、もうちょっとセグメントがかかったデートスポットの情報サイトでした。それも当時自分が20代後半くらいでおしゃれなレストランとかに興味があったんでしょうね。これはイケると思って作りましたが、ニッチに掘り過ぎたという教訓です。パイが狭すぎたんです。

三橋:デートがニッチってことですか?

村田:デートはニッチですね。デートに絞ってしまったので、大学生から社会人の若い人くらいまでをきゅっと集めるコンパクトなものにまとまってしまった。「デート」で検索すればトップに出てくるサイトにはなったんですが、莫大なトラフィックがあるかといえばなかった。ニッチトップになっても大きな収益を生まず、沢山のユーザーさんにリーチすることはできない。市場の選び方、立て付けの仕方の教訓になりました。

自らがユーザーでも、思い込まずにデータで探るユーザーの興味関心

三橋:iemoのターゲット設定は広いようですが、主には女性なんでしょうか。

村田:そうですね、主婦層です。実際使ってくださっている方も、当初想定していた25歳から40歳くらいの主婦です。PCからもきれいに見えるサイトですが、全体の9割以上がスマホとタブレットからのアクセスです。

三橋:多くの人にとって面白いコンテンツを作るためにどこに気をつけていますか。

村田:これがいいはずだという固定概念を持たずに、まずは幅広くコンテンツを出してみました。皆さんの関心がどこにあるかは数値が証明してくれるので、まずは興味関心を探って。意外な部分もありましたがだいたい想定通りでした。今後は個別記事の質のアップをはかっていきます。

三橋:意外だった発見についてもう少し具体的に聞いてもいいですか。

村田:主婦層が好きなブランドは、IKEAや無印など主婦層というのはその通りでした。家の間取りとかも興味があるので、例えばワンルームとか1LDK、12畳といった広さを表す言葉にもすぽっとハマるものがあったり。あとは、生活の中でちょっとゆとりを持ちたいと思っているのかなと。朝食をゆったりとろう、夜寝る前にアロマとかキャンドルで心をリッチにしようとか。朝、昼、夕方、夜中に読まれるので、時間帯でも好まれるコンテンツの傾向が出ます。

後編につづく。

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