「2014年はクラウドファンディング元年」:多様化するクラウドファンディングと市場の動き【ゲスト寄稿】

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編集部注:先日、3000万を超える目標金額を達成するなど、クラウドファンディングサービス自体の認知と利用促進の動きも起きつつある。前回に引き続き日本クラウド証券代表取締役社長の大前和徳氏に、寄稿していただいた。

第二回となる本稿は、多様化するクラウドファンディングと市場の動きについてまとめていただいた。

クラウドファンディングサービスの5分類

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Image by Simon Cunningham on Flickr

ここでは、クラウドファンディングについて、改めて整理をしてみたいと思います。

大きく分けると、クラウドファンディングは「寄付型」「購入型(リワード型)」「貸付型」「ファンド型」「投資型(エクイティ型)」に分けることができます。

分類を考える中で、「動機」と「報酬」をもとに考えると、整理しやすいです。

「寄付型」は、日本ではジャスト・ギビング・ジャパンなどのサービス事業者があるように、寄付金のファンドレイズ専用のクラウドファンディングサービスです。金銭的または物的な報酬はなく、ユーザーは社会貢献や団体への応援などが動機となってサービスを活用します。

「購入型」は、分かりやすい動機ではないでしょうか。応援はもちろんですが、お金を払うことで商品の事前購入やサービスを享受することができるという点で、既存のコマースと同様の形と言えます。日本では、CAMPFIREReady for?などさまざまなプラットフォームがあります。また最近では、もの作り専用、映画やアニメやゲームなどのコンテンツ専用、地域特化型など、テーマを絞り込んだプラットフォームも目立ってきました。いずれにしても、「モノ・サービス」を介したやり取りですので、理解しやすいのが特徴です。

最近では、まだ認知が広がっていない製品を開発している企業が不特定多数にリーチできるマーケティングとして利用し、資金調達と広報の手段として利用しているケースもあります。さらに、米カリフォルニアのジーンズメーカーであるGustinのように、クラウドファンディング・プラットフォームで人気商品を売り出した企業が、自社サイトにクラウドファンディングの機能を埋め込み、プラットフォームを介さずに直接ユーザーと関係性を強化している企業も出てきています。

注目されつつある「金融型」クラウドファンディング

日本クラウド証券株式会社が主催している「クラウドファンディングNight」の様子
日本クラウド証券株式会社が主催している「クラウドファンディングNight」の様子

貸付型は、主に企業や個人がネットを介して個人から融資をうけるもので、クラウドファンディングサービスという言葉が広がる前まではソーシャルレンディングとも呼ばれていました。イギリスではP2Pレンディングと呼ばれ、個人間でお金を融通する仕組みとして非常に大きな市場に成長しています。日本では、AQUSHなどが有名で、個人が少額の投資を行ない 、プラットフォーム事業者は利回りを確保して金利を上乗せして投資家に返金しています。

融資であるため、銀行と同様の機能を個人が果たしているとも言えます。動機と報酬は金融的なリターンが中心ですので、購入型のようにソーシャルメディア上でバイラルする要素は少ないのですが、銀行預金の利回りと比べると高い利回りであることや、融資という元本返済の可能性の高さから、長く低金利に甘んじてきた預金者にとっては魅力的な投資機会と見られています。

また、資金の出し手にとっては、自分のお金を金融機関任せにするのではなく、自分の共感できるテーマの「貸付」に主体的に投資することができるため、クラウドファンディング的な魅力も十分ある仕組みであると言えるでしょう。

私たちが運営するクラウドバンクでは、カンボジアのマイクロファイナンス金融機関を通じて貧困層を支援する投資案件が、わずか3週間で募集額の5,000万円に対して、6,000万円を超える申し込みがあり、社会貢献(新興国の貧困層支援)と資産運用(税引き前予想利回り年率5%)を両立する新しい投資のカタチとして注目を集めました。

後述するように「貸付型」はアメリカを中心に非常に大きな市場に成長しており、世界全体のクラウドファンディング市場に占める「貸付型」の割合は40%を超えているとも言われています。

「ファンド型」は、日本ではミュージックセキュリティーズが代表的な取り組みかもしれません。海外ではレベニューシェア型(あるいはプロフィットシェア型)クラウドファンディングとも呼ばれ、投資したお金に対してリターンがすぐに返ってくることはありませんが、プロジェクトや事業が売上(あるいは利益)が見込めた場合には投資した分の割合に応じて配当が割り当てられる可能性があります。もちろん、プロジェクトが失敗した場合にはお金は返金されません。

後述する株式型とは違い、株式を保有しているわけではありません。あくまで、ファンドとして、お金を投資して売上や利益に応じて配当をいただく、という形としては、金銭的報酬だけでなく、プロジェクトを応援したいという動機がミックスしたモデルです。

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Image by Rocío Lara by Flickr

最後に、これから盛り上がるだろうと期待されているのが「株式型」、いわゆるエクイティ型のクラウドファンディングで、まさに現在法改正が進んでいるところです。すでにアメリカでは法改正を行ない、イギリスも現行法の中で、株式型クラウドファンディングサービスが誕生し、それに追従する形で日本でも法改正が進みつつあります。

日本のクラウドファンディング法案は、上限1億円、一人あたり最大50万円までの未上場の株式を購入することができるとされています。現在法改正のための議論が行われている真っ最中のため、確定したことが語れるものではありませんが、アベノミクスの三本目の矢である成長政策の一つとして期待され、日本に眠る1600兆円もの個人金融資産を成長性の高いベンチャー企業、中小企業の成長資金に結びつける仕組みとして期待されています。次回の寄稿でもう少し詳しく述べたいと思います。

金融型クラウドファンディングは、2005年以降イギリスから始まり、世界中に伝播してきました。2013年第三四半期末現在において、64億ドルの市場規模だと言われており、主要な市場としては、中国、イギリス、アメリカに集中しています。そのうち、最大市場はアメリカで世界の市場の51%を占めるほどです。特に、サンフランシスコに本社のあるLendingClubは、グーグルと資本提携し、役員陣には元モルガン・スタンレー会長のJ.マック氏、元財務大臣のL.サマーズ氏、モルガン・スタンレーでIT業界をカバーしてきたカリスマ証券アナリストのM.ミーカー女史などを役員陣に加えるという豪華布陣で、年内にも上場するのではないかと噂されています。

金融マーケット全体の市場規模から考えると、クラウドファンディングの数十億ドルという市場規模は米粒みたいに小さく、肝心の金融業界自体からはそれほど注目を集めてはいません。むしろ盛り上がっているのは、非金融業界の人たちというのがユニークですね。そして、購入型や寄付型の昨今の動き、成長の入り口に入ったばかりの金融型クラウドファンディングの現状を考慮すると、クラウドファンディングの市場はとてつもない成長余力があると私は考えております。先日フランス中央銀行の方が私のところに訪ねてきて、クラウドファンディングに関するヒアリングをされていきましたが、今度は日本銀行の方にもご注目いただきたいですね。

2014年こそ、クラウドファンディング元年

「クラウドファンディング協会」の分科会の様子
「クラウドファンディング協会」の分科会の様子

5分類をさらに細かく見ていくと、政治版クラウドファンディング地域に特化したクラウドファンディングポスドクの研究助成金に特化したクラウドファンディングなど、ユニークで多様なサービスが誕生してきつつあります。

分野の多様性と利用シーン、昨今の達成金額の大型化など、クラウドファンディングにおける面と深さがまさに着実に広がってきています。

こうした日本におけるクラウドファンディングの盛り上がりを踏まえて、2014年3月にクラウドファンディング事業者の有志が集まり、「クラウドファンディング協会」を設立しました。日本におけるクラウドファンディング事業者同士が意見交換し、運営指針や行動規範の合意形成などに取り組んでいます。

協会メンバーとの議論を通じて、運営者間のノウハウ共有を行ない、より円滑で安全かつ安心なサービス提供が行える環境を整えたり、クラウドファンディングに関する情報発信や啓発活動をしていく予定です。協会メンバーは購入型であったり投資型であったりと多様な事業者が参加していますが、クラウドファンディングという同じ業界に属する者同士、クラウドファンディングというエキサイティングな業界を一緒に盛り上げて、また各方面から信頼される業界にしたいという目的意識を共有しています。既に多くのお問い合わせが協会に寄せられており、クラウドファンディングに対する反響の大きさを実感しています。

日本のクラウドファンディング市場は、過去数年の黎明期を経て、いよいよ成長期の入り口に到達し、今年以降に本格的に盛り上がっていくという手応えを感じています。貸付型は、おそらくこの1-2年で市場規模は倍に広がるでしょうし、購入型のクラウドファンディングにおいても5000万円や1億円規模のプロジェクトが今年中には登場するかもしれません。私自身、クラウドファンディング業界に身を置くものとして、日々そのポテンシャルの高さと手応えを感じています。

次回は、現在法整備の議論がなされている「株式型」の詳細と可能性について、まとめてみたいと思います。

写真:クラウドバンク

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