成約課金のキャッシュバック賃貸がGBから1億円を調達、掲載課金のSUUMO、反響課金のHOME’Sを追う

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キャッシュバック賃貸___祝い金がもらえる賃貸情報サイト

成果報酬型の賃貸情報を取り扱う「キャッシュバック賃貸」を運営する賃貸情報は4月22日、グローバル・ブレインを引受先とする第三者割当増資の実施を発表した。調達金額は1億円で、払込日などの詳細は公表していない。

キャッシュバック賃貸は、入居者が成約したあとに貸し主に対して広告掲載費用を発生させる「成約課金型」の賃貸情報サイト。入居者は成約が決まった段階で所定の手続きをするとお祝い金としてキャッシュバックが受けられるため、コンバージョンしたことが分かる仕組みになっている。

2013年11月のベータ版リリースから掲載物件数を伸ばし、3月の移動が激しい時期には120万件の物件を掲載した。賃貸情報では今回資金調達を経て、開発強化およびサイトコンテンツ、マーケティングの強化を推進するとしている。また、5月上旬にはスマートフォン版のリリースも計画している。

掲載課金から反響課金、そして成約課金へと進む不動産広告モデル

キャッシュバック賃貸の取締役メンバーに遠藤彰二氏の名前をみてピンときた方もいるかもしれない。学生起業からはじまり、リブセンスでは初期経営陣の取締役として各メディア運営に携わった人物だ。本誌でも彼の携わった事業のひとつ「ドリパス」でインタビューをしている。

<参考記事>
ある起業家が事業を売却するまでの道のり

そしてこのお祝い金という制度はリブセンスを大きく躍進させたビジネスモデルとしてご存知の方も多いはずだ。リアルビジネスでのコンバージョン測定方法として秀逸であり、今回はこの方法を賃貸情報サイトに持ち込んだ形になる。

SUUMOのような掲載課金は一般的ながら当然掲載した後に入居が決まらなくても広告費は発生する。つまりロスが多い。HOME’Sが実施している反響課金、つまり問い合わせに対して課金するモデルは掲載数を伸ばすのに大いに役立ったが、やはり同時にロスは発生する。

今回キャッシュバック賃貸がとった成約課金というのは当然ロスはなく、理想的なモデルとして受け入れられ、前述の通り、立上げてまだ数カ月ながら物件掲載数でトップを走るHOME’Sの約420万件(4月22日現在のサイトから)からみてもそこまで見劣りしないレベルに急激に成長させている。

なぜ成約課金は不動産サイトで出てこなかったのか

さて、ここでひとつ疑問が浮かぶ。お祝い金を活用した成果報酬型モデルは決して新しいものではない。なぜこれまで不動産で出てこなかったのか?

代表取締役の金氏一真氏の話によれば、やはり業界の慣例が大きな壁になっていたようだ。例えば経理処理や予算処理ひとつ取っても、掲載課金や反響課金といったビジネスモデルに習って各不動産事業者の予算割りなどが決まっている。

「例えばフランチャイズの不動産営業店舗だと広告枠をまとめて買ってたりフランチャイズフィーに広告費がすでに含まれてる場合もある」(金氏氏)と成約課金がいくら効率的でも、まだ小さな事業者に対して会社の慣例を変えるのは難しい、といったようなことだ。

【SUUMO】_不動産売買・住宅購入・賃貸情報ならリクルートの不動産ポータルサイト

掲載課金で業界大手のSUUMO

また、大手賃貸情報サイトは既に「先払い」の広告掲載モデルで多数の営業人員を抱えているなど、業態を変更するには大きなリスクを伴うことになる。こういったいくつかの業界要因が重なって成果課金というモデルは見送られてきた、と説明してくれた。

もうひとつ、では賃貸情報のようなスタートアップが取り組めばいいじゃないか、と思う方もいるだろう。しかし、これもまた難しいかもしれない。

そもそも不動産サイトには物件情報を取り扱う複数のコンバート会社などがあるのだそうだ。数百万件という物件の情報はこのような複数の管理会社、そしてシステムを通じて掲載される。まずこの仕組みに精通してないと取り扱いが難しい。

また経営陣のキャリアも大切だ。代表の金氏氏は元々司法書士を経て不動産業界に深く在籍していたキャリアの持ち主だし、遠藤氏は前述の通り、お祝い金モデルのリブセンスにて幅広い経験値を持っている。熱意を持ってこの組み合わせが実現しなければ革新は起こらないだろう。ちなみにふたりはこの事業を立上げる前からの知り合いなんだそうだ。

掲載課金のSUUMO、反響課金のHOME’Sという二大賃貸サイトに対抗し、スタートアップのキャッシュバック賃貸が「成約課金」で攻める姿は新しい時代を感じさせてくれる。引き続き彼らの成長を追いかけたい。

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