クックパッドのアプリが累計2,000万DLを突破、滞在時間を3割伸ばしたAndroid版を手掛ける2人に会ってきた

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Cookpad-Mobile-First-Teamモバイルファースト部の八木さん(右)と滝口さん(左)

ユーザー目線でサービスを作り続けている会社は?という質問に、「クックパッド」と答える人はきっと少なくないはず。同社のアプリのダウンロード数は累計2,000万を突破し、スマートフォンからの閲覧は直近で全体の7割以上を占めるまでになっている。

今年2月、クックパッドに新たに結成されたのが、モバイルファースト部。全70人強のエンジニアのうち、10%ほどが所属する。アプリの開発や運用はもちろん、モバイルファーストを社内全体で推進し、もともと人数では圧倒的に多いWebエンジニアがモバイルにシフトする後押しをすることをミッションに掲げる。

今回は、そんなモバイルファースト部の八木俊広さんと、滝口健太郎さんにお話を伺った。二人とも、Androidアプリ開発の経験者として、クックパッドにここ1年以内にジョインしたメンバーだ。

モバイルエンジニアもUIやユーザビリティを一緒に考える

モバイルファースト部の前身であるメディア事業部デバイスグループの頃に始まったAndroidアプリの開発。2013年8月に企画が走り出し、実際に開発に着手したのは昨年10月。約半年間の開発期間を経て、今年3月に正式にローンチした。

クックパッドのモバイル版はスマホに対応したWebサイトとして始まった。当時の開発チームはWebエンジニアが数十人に対して、Androidエンジニアはたったの一人。ユーザーのモバイルへの移行が加速化する現状を受けて、クックパッドをネイティブアプリとして提供することに。

Androidアプリの開発に携わったのは、Androidエンジニア3名と、デザイナー1名の4人チーム。OSのガイドラインなどについてはエンジニアも知識が豊富なため、AndroidアプリのUIや使い勝手についてはエンジニアもデザイナーと一緒に考えて行く。デザイナーが用意した画面遷移などのたたき台をもとに、チーム全員でユーザーにとって最適なAndroidアプリにブラッシュアップしていった。

「ユーザー体験は統一して、UIは別にする」OS対応

Cookpad-app-introもともと、クックパッドのアプリはiOSを先行してリリースしていたため、どうしてもデザインがそっちに引っ張られてしまいがち。

例えば、iOSとAndroidのUIの大きな違いの一つが、メニューの引っぱり出し方。iOSは右から引っ張るのが通常であるのに対して、Androidでは左から出す動作が一般的といった違いがある。

Androidのユーザーにとって本当に使いやすいアプリになっているのか。確かめながら進むため、アップデートは5%、10%など段階的にリリースしていった。そんな改善の一つが、アプリの左上部にある、クックパッドのロゴに重なるようにして配置されたメニュー。

一部でリリースしてみたところ、この部分がタップ可能なメニューであることに気がつかないユーザーが多いことが判明し、初回起動時にチュートリアルを追加することで解決した。

「iOSとAndroidの操作性、またUIの統一に関してはかなり悩みました。よく、「ユーザー体験は統一して、UIは別にする」と言いますが、これは本当に難しい。Androidのユーザーさんが慣れている動作に合わせて作ることを意識しました」(滝口)

滞在時間の3割増を実現したネイティブアプリ

Cookpad-recipe-of-the-day-tabそんな細かな改善を地道に続けた結果、「ウェブっぽい」感じだった以前のバージョンに比べて、Androidアプリの滞在時間は3割ほど伸びたそう。

これには、アプリ内の移動を前より圧倒的に早くできるようにしたこと、また「今日のレシピ」、「殿堂入りレシピ」など、タブの見せ方を取り入れることで回遊率が上がったことも起因しているという。

最近では当たり前になりつつあるモバイルファースト。モバイルのネイティブアプリ開発では、どんなことに気をつけるべきなのか。

「デザインが、iOSやウェブっぽくならないように気をつけています。日頃からOSのガイドラインを読んだり、デザインの美しさと使いやすさを兼ね備えたAndroidアプリなどを巡回したりして、Androidにおける標準に対する意識を高めています」(滝口)

「技術面の課題の多くは、乗り越えられるものです。でも、技術はあくまでユーザーに価値を提供するためのツールでしかありません。その機能がユーザーにとって本当に必要で、さらには使いやすいのかを繰り返し問うようにしています」(八木)

「外からヘッドハンティングされるような人材であれ」

クックパッドでは、技術的なことから企画のアイディアまでを社内ブログで共有するほかに、エンジニアが学んだtips(ちょっとしたコツ)を共有する「ポテチ」という会を社内外で設けている。

社内では毎週、社外では月に一回、iOSやAndroidのエンジニアが集まって、参加者全員がひとり5分でtipsを発表し合う。2013年11月頃に始まった勉強会は、社内は次回で第20回、社外でも第6回を迎える。(2014年4月11日時点)

 「クックパッドには、向上心と、高い技術力を持ったエンジニアが集まっています。ストッパーが誰ひとりとしていないため、何か課題が発生すると、全員でその解決に向けて走ることができます」(八木)

「社長には、「自分のキャリアを考えて仕事をしろ」と常に言われています。他の会社からヘッドハンティングされるくらいでないとダメだと。普段から、社内外の勉強会やカンファレンスに積極的に参加して学び、それをアウトプットしています」(滝口)

そんなクックパッドは、モバイルエンジニアを絶賛募集中。モバイルファースト部に関しては、高い技術力や豊富な経験以上に、アプリを作りたいという強い想いが必要不可欠。

「普段、家や会社の外でもプログラミングをしているかは見ています。それくらい、思わず手が動いちゃう、みたいな人がいいですね」(八木)

求む、女性のアプリエンジニア

現在、モバイルファースト部のメンバーは全員が男性。クックパッド全体でも、エンジニアの男女比率は9:1と、ほぼ男子校。

前述したように、モバイルデバイス部には、デザイナーと共に、アプリのUIや使い勝手をユーザー目線で追求することが求められる。ここには、ぜひ女性エンジニアに協力してほしいと話す二人。

「ユーザーインタビューをしても、話を聞いて、それをアプリに落とし込む時に男フィルターが入ってしまっているかもしれない。エンジニア自身が女性であることで、根本的に見方が変わるはずです。アプリを作りたい女性エンジニアに、ぜひジョインしてほしいです」(八木)

クックパッドのようなメインストリームのサービスは、むしろユーザーにとってのUIやユーザビリティの「標準を作っていく側」にいると言っても大げさではないはず。本気でアプリを作りたいエンジニアは、一度社外共同開催のポテチに参加してみると良いかもしれない。次回は5月14日を予定しているそう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAオフィスに遊びに行けば、野菜と真剣に見つめ合う2人に遭遇できるかも。

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