Gengoがシリコンバレーではなく、東京でスタートアップをした理由

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Why this startup is better off in Tokyo than in Silicon Valley

GengoのRobert Laing氏(CEO、写真左)とMatthew Romaine氏(CTO、写真右)のストーリーは、日本でテック系スタートアップを試みる多くの外国人にとって気づかされる点が多いものになるだろう。

私が緑茶を頂いている間に、Laing氏とRomaine氏はGengoがどのようにスタートアップしたのかを語り始めてくれた。東京を拠点としたスタートアップという彼らのストーリーはお見事としか言いようがない。シリコンバレーはすごいが、東京だって結局のところそれほど悪くないのだ。

Laing氏は「もし私たちがシリコンバレーにいたら、このアイデアは思い浮かばなかったでしょう」と語る。

Laing氏とRomaine氏はそれぞれ東京でウェブビジネスを営んでいた時に出会った。Laing氏は当時、日本語を勉強していたのだが、オンラインクラウドソースの翻訳スタートアップを立ち上げるのはどうかと考えていた。Romaine氏の日本語は流暢だったのだが、同じアイデアを持っていた。こうして2人は2009年に翻訳スタートアップに取り組むことになった。

「東京では多くの人がこのアイデアを理解してくれました」(Laing氏)。

東京はスタートアップに最適な場所

2009年9月、Laing氏とRomaine氏はビジネスを始めるにあたって必要な資金となる3万米ドルを友達や家族から調達した。そして2010年1月にはシリコンバレーで資金調達するため、500 StartupのCEOであるDave McClure氏から交通費として1万米ドルの資金提供を受け、そのおかげで彼らは76万米ドルの資金調達に成功した。

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同じ年の終わりにGengoは90万米ドル、2011年9月にはAtomicoから525万米ドル、そして2013年4月には1,200万米ドルもの資金調達に成功する。

文字で書くと簡単そうにみえるが、全くそうではなかった。

「2010年と2011年の資金調達は困難でした。日本にはエコシステムは事実上存在しません。私たちを奮い立たせたのは『Gengoにはそれが可能である。だから私たちが第一線に立って他の起業家にとって資金調達が容易になるようにしよう』ということでした。マイナスなことはやはり、自分たちが一番最初にアクションを起こさなければいけなかったということです」(Laing氏)。

そして総額1,900万ドルの活動資金とともにGengoは東京に留まることになる。他のアジアのスタートアップであれば、より多くの資金や才能、機会が約束された地としてシリコンバレーに飛び立っていったかもしれない。

「シリコンバレーの外にいる人たちは、シリコンバレーを崇拝しすぎており、優れた人材を確保しやすいと考えているんだと思います。確かに優れた人がたくさんいますが、とても高給取りなのです」(Laing氏)。

続けてRomaine氏は「シリコンバレーではテック系の人材プールが豊富です。しかし同様にエキサイティングなスタートアップの機会が溢れているので、彼らを惹きつけることはとても大変なのです。離職率も非常に高いです」と続ける。

「一方日本には忠誠心があります。それには良い面も悪い面もあります。もし非常に気に入った人材がいて、彼らは自分が所属する会社に非常に忠実だとしたら、彼らを振り向かせるにはより多くの時間がかかります。しかし彼らを振り向かせることができれば、同じ忠誠心をあなたの会社に抱いてくれるでしょう」(Romaine氏)。

日本を拠点にしているということはまた、Gengoが国際的な才能を惹きつけるという点で興味深い有利な立場に立たせている。国際的な企業で働きたい人、日本の文化を体験したいという才能ある人々はいつだっている。

もちろん、日本において全てが順調というわけではない。日本のエコシステムは(それでも東南アジアよりははるかに優れているが)シリコンバレーと比較すると劣っている。東京拠点のスタートアップということは、両氏が何度も往来しなくてはならないことを意味する。しかしそれはGengoを初日から国際的な企業にさせたともいえる。

クリック、ドカーン、すごい

苦労は報われた。今日までにGengoは1億5,000万語以上を翻訳してきた。顧客の中には、Alibaba、Youtube、楽天、TripAdvisorがいる。

Professional_Translation_Services_by_Gengo

Gengoは翻訳の速さも売りにしている。95%の翻訳案件は200分以内に開始され、Gengoのクラウドソースの翻訳の90%以上は24時間以内に完了される。非常に速いスピードであるが、Laing氏によるとさらに「6ヶ月以内にその時間を半分にする予定」らしい。

インターネットは世界とつながるには良いが、言語翻訳の需要が飛躍的に高まってきた。75%のウェブ顧客が日本からで、販売企業の多くがアメリカからだ。ユーザが最も多く翻訳している言語は日本語から英語への翻訳だ。

Laing氏はGengoの収益について詳しい数字を明らかにすることはなかったが、「eコマースからの需要が多くある」と明かしている。年間で100万円ほどを翻訳に費やす顧客もいる。

「翻訳に関することでは、人々は投資利益率(ROI)についてより賢くなっているということです。仮に誰かが1ページ翻訳をした場合に、人々はいくらの収益が得られるかを明確に計算することができます」(Laing氏)。

営業戦力を拡大する他に、根はコンピュータマニアである設立者たちはクラウド管理システムや技術をアップグレードする方法を捜索している。例えば、Gengoのエンジニアたちは現在、スペルチェックや機械翻訳支援などの機能を付加し、翻訳家が翻訳の作業を楽に早くできるようにしているところだ。

「システムを通して数百万円という仕事が舞い込んできます。そこでさらに企業向けによりシステムを強化していく必要があります。ところでGengoにはこういう言い回しがあります。『クリック、ドカーン、すごい!』-ーこれがGengoが提供する翻訳スピードと品質の本質を現してると考えていますよ」(Laing氏)。

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