「女性にこそ、短いスパンで起業するシリアルアントレプレナーという道は超おすすめ」、「iemo」のCEO 村田マリさん【後編】

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「男性経営者には作れないサービスを世に出し続ける女性シリアルアントレプレナー、「iemo」の村田マリさん」の後編をお届けします。【前編】はこちら。

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現在記事は2,000件超、勝負の決め手は初動の早さ

三橋:iemoのチームは今何人ですか。

村田:常勤のメンバーは10人くらいです。マーケティングや営業の他に主にエンジニアですね。外部パートナーは10名以上います。

三橋:最初のマイルストーンはどこを目指していますか。

村田:まずは、住まい、暮らしに関する情報を配信するメディアを作ること。記事が2,000本ほどあるので、それに関しては一旦達成したかなと思います。3ヶ月目からはもっと楽しんでいただける質の高いコンテンツにチューニングしていきます媒体としての枠ができたところで、毎日アクセスしてくれるユーザーさんを増やしたいです。

三橋:村田さんは次々に作り続けますね。

村田:根っからのクリエイターというか、物づくりが好きなんです。あとは、その時代によって必要とされているものが違うので、そのトレンドの波のできるだけ先端のほうで新しいウェブサービスやアプリを作って行くことに対してやりがいや喜びを感じます。サービスを作るからには沢山の方に楽しんで使ってほしいと思うので。

三橋:新卒の時代から続けてきて、当時と今とで新規サービスを生むことにどんな違いを感じますか。

村田:やっぱり、10年、15年経つと全く周りの状況が変わってきます。まず新規事業とか会社の立ち上げがめちゃくちゃローコストでできるようになった。少資本で短期間でサービスが作れるという実現性が、100倍、200倍のレベルで上がっています。

三橋:その分、真似もされやすいですよね。村田さんがおっしゃるスピード感を上げるにはどうすればいいんでしょうか。

村田:まずは初動が早いかどうかです。例えば、今なら動画系メディアやキュレーションメディアなどが流行っていますよね。年を開けてから「UpWorthy」がすごく伸びているみたいなニュースが蔓延して、それを受けてみんな作りに行く。それを半年前、1年前に予測できるかどうかが重要だと思います。そのためには普段からアンテナを貼っておくことです。

子育てが快適な共働き社会のシンガポールを拠点に

三橋:iemoのユーザーさんは日本だし、チームも日本ですよね。なぜ村田さんはシンガポールを拠点にされたんでしょうか?

村田:子育て環境が大きいです。東京でソーシャルゲームをやっている時に出産して、保育園に預けながら働いていました。資本を大きく調達してどんどん展開していくパワーゲームになっていて、日本の子育て環境では両立するのがなかなかタフでした。ちょうどそんなタイミングで子どもが喘息になってしまい、買収を決意して子どもを連れてシンガポールに移住しました。温かい国にいくと喘息が治ると聞いたので。

三橋:なるほど。南の国の中でも、なぜシンガポールだったんですか。

村田:子育てをしながら働くことへのインフラがかなり整っているからです。例えば、メイドさんやベビーシッターが安く雇えるし、保育園を探すことにやっきになることもない。もともと共働きの国なので。東京で子どもが急に発熱したと保育園から呼び出しを受けたら、午後の会議を全部キャンセルしてお迎えにいって病院に並ばなきゃいけない。そんな子育てから、周囲が助けてくれる環境に変わりました。

三橋:なるほど。社会の子育てへの意識に違いを感じますか。

村田:子育てを応援することへの感覚が日本とは圧倒的に違うと思いますね。日本では、電車もバスも、ベビーカーを持っていると形見が狭い思いをする。子どもが泣かないか緊張感の中で暮らしていかなきゃいけない。シンガポールでは、道行く人、レストランの人、みんな協力的で子どもを可愛がって愛してくれます。移住して良かったなと思います。

女性へのメッセージ:ビジネスに優等生はいらない

三橋:20代、30代の女性に仕事上でのアドバイスはありますか。

村田:あります。女性は、どうも遠慮しがちだし、優等生であろうとし過ぎる。この2点を捨てたほうがいいです。すごく欲しいポジションがあっても、私なんかにできないなんてモジモジしている間に男性とかがパッと手を挙げてしまう。ビジネスにおいては、思慮深いとか女性らしいなんてことは全くのナンセンスだと思うので、直感でやりたいと思ったらやる。やるって決めたらやりぬくことです。

三橋:口ではやりたいと言いながらやらない女性が多い、と。

村田:やりたいってみんな言うんです。女性起業塾とかに行ってみたり、資格や講座を取ってみたり。でも、それを取得した後にどうするかの大きなゴールがないから、10人中9人がそこ止まり。起業したいという女性から相談はすごく受けます。でも、話を聞いたことに満足してしまうのか、十中八九が起業まで至らない。そこで本当にやるっていうアクセルを踏み込めるかは、自分の腹の据わり方や決めの問題です。御託を並べている暇があったらとにかくやってみなさいと思います。

三橋:お話を伺っていると、村田さんは何事にも迷いがない感じがします。

村田:迷っている時間が好きじゃないんです。2つの選択肢があった場合、どっちにしようって悩む時間を持つ事に対して意味がないと思っているので、まずAをやってみる。間違っていたら、とあるタイミングでBにしてみる。だから、極端に迷っている時間が少ないですね。

三橋:10年間の中で乗り越えた、一番大変だった時のエピソードを聞かせてください。

村田:起業したら大変なことは細かいレベルでたくさんありますが、それは悩ましいことじゃなくて解決するだけ。でもそんな中で本当に大変だったと思うのは、ファイナンスなしで行った事業転換です。受託制作の事業からソーシャルゲームに移行する時に資金調達をしなかった。既存の売上を落としながらメンバーを新規事業に移して、でも当時はそもそもソーシャルゲームの経験者がどこにもいない。V時でフワッと離陸するはずだったのが中々次のゲームが出なくて、しまいには毎月,000万円弱の赤字に突入しました。もう機体を擦り過ぎて飛び上がる前に爆発する!って思った瞬間にやっと売上が上がって。あの3ヶ月くらいのディレイは精神衛生上良くないですね。

三橋:やり直すならどうしますか。

村田:間違いなくファイナンスをします。

女性にこそ超おすすめなシリアルアントレプレナーという道

三橋:村田さんは5年後、10年後どうなっていると思いますか。

村田:ぼんやりありますけど、けっこう新しい体験をさせてもらうことが多いのでかなり柔軟に、その都度アップデートされていきます。時間は有限なので、どうしてもやりたいって思う自分の欲求や衝動が出てきた時にそれを自覚して、すぐに実行できるようにアイドリングの状態にしておく。それは心がけていますね。

三橋:この先もここだけは変わらないだろうという軸はありますか。

村田:サービスを作り続けると思います。現状の不便や我慢を強いられる状況を変えなきゃっていうところから着想するものが多いので、実際に沢山の人に使ってもらって、例えばインフラの一部になったり、人の生活の中に組み込まれたり。そういう時に作って良かったと喜びを感じるので。今はドメスティックにやっていますが、いつかグローバルにも進出したいです。たぶん、死ぬまでこういうことを繰り返すんだろうなと思います。

三橋:まさにシリアルアントレプレナーですね。

村田:シリアルアントレプレナーは女性に超おすすめですよ。長期で永続的な会社を作るってなると、結婚や出産を諦めるという選択肢になりがちで。母としての幸せを犠牲にするのはもったいないと思うし、女性ならではの感性でビジネスを起こせば男性と全くちがう差別化ができるわけです。短いスパンの起業だったら、結婚する前、子どもが生まれるまで、子どもが3歳になったからまたやってみるとかすごくコントロールしやすい。

三橋:女性は、具体的にどんなことを意識すればいいでしょうか。

村田:26歳くらいまでに手に職や実力をつけて起業して、自分のライフサイクルに合わせたビジネスの立ち上げ方をすると良いと思います。私も結婚していますし、会社を売却した後、子どもが2歳になるまでの一番貴重な時期を専業主婦として1年半くらいずっと一緒に過ごせました。短期でエグジットするとか、その都度、区切りをつけて自分で人生に喚起をつける。

三橋:なるほど。女性こそシリアルアントレプレナーにという発想は新しいですね。

村田:私が今、穏やかで落ち着いているのは、仕事に振り回される人生ではなく、自分の人生の中にきちんと仕事を織り込んで行く側に回ったからだと思うんです。そのためのキャリアなので、半年先、1年先の小ゴールに謀殺されながら3年間を過ごすのではなく、じゃあ自分が30歳になった時、35歳、40歳の時にどうしていたいかを考えて、20代半ばくらいまでにキャリア設計することが大切だと思います。

三橋:女性ならではの発想がサービスの立ち上げに強みになると。

村田:なりますね。例えば、iemoも男性経営者にはまず作れないと思います。だって、みんな奥さんに任せっきりのゾーンで興味がないですから。だから、家を買う、引っ越し、家具の買い替えって最後に決定するのは奥さんです。半分の決定権を持つ人たちにきちんとリーチする媒体を作りたい。私が女性で、主婦で、また子どもがいるから生める発想です。そういうものを活かした形で次々に事業を作ってみんなに使ってもらえれば、それ以上に幸せなことはないですね。

三橋:今日はどうもありがとうございました。

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