イベントプラットフォーム「Peatix」がグロースハックのために実施した3つのアプローチ

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peatix top

インターネットが発達する前は「イベント」と呼ばれるものは一部のネットワークやメディアを持つ人だけが開催できるものだった。ソーシャルメディアの発達やイベント管理サービスの登場により、その状況は変化した。

今ではイベントページの作成や集客などが格段にやりやすくなり、規模の違いはあれど日々数多くのイベントが開催されている。2011年5月にスタートした「Peatix」も、そんなイベント管理サービスの1つだ。

イベント管理サービスはいくつも存在しているが、Peatixはその中でも頭ひとつ抜けた印象だ。これまでに16000件のイベントで利用され、年400%の成長を果たしている。日本最大級のサービスとなっていると自負しているPeatixだが、一体どのようにしてこの成長を成し遂げたのか。

今回、Peatixのマーケティングマネージャー庄司望氏と、プロダクトマネージメントディレクターのNathaniel Heinrichs(ナサニエル・ハインリックス)氏に同社のプロダクトのグロースについて話を伺った。

Peatixが持つ3つの特徴

同サービスの特徴は以下の3つだ、と庄司氏は語る。

    ・低価格
    ・ユーザインターフェイスへの注力
    ・厚いユーザサポートとコミュニティ支援

Peatixはイベント開催における手数料をビジネスモデルとしておらず、多くのイベント管理サービスが手数料をイベント参加費の6%ほどとするところを、2.9% + 70円としている。赤字にならないギリギリのラインでサービスの提供を行っている。

また、モバイルにフォーカスし、シンプルなUIを構築するよう心がけているという。現在、モバイルからの購入が多く、同社の調べによればユーザの満足度は90%近くになっている。

どれだけ使いやすさを追求しても、イベントを開催し実際に人が動くとなればユーザからの質問はゼロにはならない。Peatixではこれに対応するため、フリーダイアルを作って対応するようにしている。これはイベントの主催者には参加者からの質問に対応するよりもイベントの中身をブラッシュアップすることに注力してもらいたい、というPeatixの考えがある。

テーマは「Sell more ticket」

Peatixは成長のドライバーはイベント主催者だと考えている。

庄司氏「Peatixを使ってイベントを主催する人の3分の1は口コミでサービスを知って使ってくれています。残りはPeatixを通じてイベントに参加した人が、イベントの主催者に転じるパターンが多い。」

プロダクトも、コミュニケーションも、イベント主催者が持つイベントにまつわる課題の解決を目指し、プロダクトの改善を重ねてきた。

「CPO」を下げるための大幅な機能削減

Peatixでは主催者の満足度を「CPO(Contact Per Order)」という指標で表現している。この数字が増えることはチケットに関する問い合わせが多く来ている状態で、イベントの主催者がその対応にリソースをとられている状態ということになる。

庄司氏「メールでチケットを送っていました。QRコードをメールで送付し、それをスキャンすればチケットになる、という形にしていたのですが、どこでチケットが管理されているのかがとてもわかりにくくなっていたんです。」

メールやPDF、カレンダーなど、様々な機能でチケットの管理をしようとしていたが、機能が多すぎてイベントの主催者も、参加者も混乱してしまっていた、と庄司氏は語る。

イベント参加者の100人に1人は問い合わせをしていた状態を改善するために、2012年5月に機能を大幅に削る判断を下した。

peatix app

庄司氏「メールによるチケット送付を廃止し、アプリとウェブログインだけでチケットを管理するように変更しました。アプリをダウンロードしてもらうようメッセージを発信していった結果、イベント参加者から問い合わせが来る確率は1.1%から0.02%と低下しました。」

一時的にはイベントの主催者も驚いていたが、今ではこの方針が浸透しており、問題はなくなっているという。機能を大幅に削るというのが、まず第一にPeatixが取り組んだことだった。

考え抜かれたプライシング

peatix price

機能削減から約1年後の2013年、Peatixは手数料を下げる決断を下した。それまで6%にしていた手数料を2.9% + 70円という現在の設定に変更した。

庄司氏「一度、ソーシャルグッド割引という割引制度を提供したことがありました。社会貢献をテーマとしたイベントは3%前後の手数料でPeatixを使うことができるようにした結果、これがとてもユーザに支持されたんです。

Peatixでイベントを立ち上げるほとんどのユーザはイベントでビジネスをしているわけではありません。こうした人たちから手数料でお金をとるのではなく、赤字にならないラインの価格にしてより使ってもらうサービスを目指し、マネタイズは他の部分で行うように舵を切りました。」

手数料の価格を変更したことで、チケット販売による利益はなくなったものの、アマチュアやプライベートなイベントの開催にもPeatixが利用されるようになり、Peatixを通じて開催されるイベントの質が変化したという。

プロダクトの機能改善

イベントを開催したことがある人ならわかると思うが、イベントのチケットを売るのはなかなか大変だ。Peatixはテクノロジーを活用してチケットを販売することができるのかにもチャレンジしている。

Heinrichs氏「チケットの販売率を上げるために、ウォッチリスト機能を追加しました。この機能はいわば気になったイベントをブックマークしておける機能です。ユーザが一度イベントをウォッチリストに追加すると、2つのタイミングでアラートが飛びます。チケット販売期限が近づいたときと、販売されているチケットの8割が購入されたときです。」

機能の実装は簡単だった、とHeinrichs氏は語る。だが、そのインパクトは大きく、販売期限が近づいたタイミングでの通知からのCVRは6.7%向上し、チケットが売り切れる寸前のタイミングでの通知メールからのCVRは15.5%向上したという。

Heinrichs氏「これは機能を試してみないとわからないことでした。Peatixではこの例のようにまず機能を出してみて、ユーザの反応を見ながら改善していくようにしています。」

実験を繰り返しながらプロダクトの改善を重ねるPeatixは新たな仕組みを導入する。「ソーシャル拡散プログラム」と名付けられた仕組みは、イベント主催者の集客を助けるためのものとなっている。

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「ソーシャル拡散プログラム」の機能をオンにすると、チケット購入者がイベントに参加するというメッセージとイベントページへのリンクをTwitter、Facebookでシェアすることで通常価格の10%オフでチケットを購入が可能になる。

ユーザにソーシャルメディアでイベント情報を拡散することに対するインセンティブを与えることで、イベントの拡散とチケットの販売数を伸ばすための機能となる見込みだ。

多くのイベント主催者は自分のイベントを拡散してもらいたいと思っている。イベントに参加するユーザ側にも拡散することによるインセンティブが発生すれば、イベント情報はシェアしてもらいやすくなるだろう。

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Heinrichs氏「この「ソーシャル拡散プログラム」を使えば、イベント主催者はイベントを立ち上げたばかりのタイミングで機能をオンにしてイベントの存在を拡散し、ある程度広まったらオフにする。そして、募集の期限が近づいたら残りのチケットを売りさばくために再度機能をオンにする、といった使い方も可能です。」

この他にもPeatixではイベント主催者をサポートするための機能を追加していく予定だという。

庄司氏「私たちが心がけているのは「Sell more(all) ticket.」です。チケット販売数を増やすこと。それがイベントプラットフォームの本質ですから。」

Peatixはマーケティングとプロダクト開発の担当者が共に本質的に大事なことを見極めようとする姿勢でサービスを運営している。Peatixは今後もさらなる速度で成長していくだろう。

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