アドテクはスタートアップ・技術者・広告にまたがる領域にーー「AES 2014」レポート

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アドテクノロジーは、ビジネス的にもテクノロジー的にも注目の領域。最近では2010年に創業したフリークアウトがマザーズに上場しており、スタートアップと広告にまたがっている領域としてもアドテクノロジーは注目の分野だ。

2014年5月15日(木)、16日(金)の2日間,東京ミッドタウンホールで、サイバーエージェントが主催する国内最大級のアドテクノロジーカンファレンス「Ad Engineering Summit 2014(AES 2014)」が開催された。

AES 2014は、インターネット、モバイル、広告、IT業界で働いている、または興味がある経営者、エンジニアの双方を対象としたカンファレンス。

二日間でセッションには、国内外のアドテクノロジー業界の第一線で活躍するキーパーソン計約30名が登壇した。AESの開催に至った経緯について、サイバーエージェント ビジネス事業部 事業責任者の渡邊大介氏は、開会の挨拶で以下のようにコメントした。

「昨今のインターネット広告業界のキーワードの変化の早さには驚くばかりです。DSP、SSP、DMP、プログラマティック、グロースハックなど、新しいキーワードが続々登場し、当たり前のように使用されています。

この変化はインターネット広告市場において、主要プレイヤーさえも変えてしまう可能性を秘めており、その変化の根底には、広告業界におけるエンジニアリングや技術者の重要性が増すことを意味しています。」

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今回は筆者が取材した「世界で活躍するモバイルアドテクノロジーのスペシャリスト達による豪華セッション!」「グロースハック進化論」の模様をお伝えする。

初日、モバイルアドテクのスペシャリストとして登壇したのは、以下の4名。

  • criteo社 モバイル製品担当 副社長 Jason Morse(ジェイソン・モース)氏
  • strikead社 StrikeAd, Regional Sales ,Director APAC Mario Piro(マリオ・ピロ)氏
  • TapCommerce社  Executive Director APAC Marc Hale(マーク・ヘール)氏
  • appier社 Appier,CEO & Co-founder Chih-Han Yu, Ph.D.(チハン・ユー)氏

モデレータは株式会社mediba, CMO 兼 デジタルエージェンシー本部 本部長 菅原 健一氏が務めた。

広告流通革命とフラグメンテーション

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アドテク分野にはエンジニアが入り、投資も入ってきており、すさまじい速度で変化してきている。予測の精度を上げ、個人に最も関連性のある広告を予測するというのが将来における課題になる、とジェイソン氏は語る。

チハン・ユー氏は、デバイスのイノベーションについて触れた。モバイルやタブレットなど、爆発的にデバイスが増えており、各デバイスに合わせた広告のフォーマットにもイノベーションが起きていく、とコメント。

マリオ・ピロ氏は映画「マイノリティ・リポート」を例に出して、将来はデバイスの増加、多様化、普及が進むほどさらにデータが集まるようになり、ユーザのコンテキストに合わせた情報がレコメンドされるようになる、と予測を語った。

フラグメンテーション

また、大きなトピックとなったのは「Fragmentation(フラグメンテーション)」だ。断片、という言葉の意味のとおり、デバイス、メディア、消費者の嗜好などが多様化、分散化したことにより、いろんなものがバラバラになっている状態を指す。

この断片をつなぎ合わせ、消費者とのコミュニケーションをしていくという課題にマーケターやエンジニアは向き合っている。このセッションではウェアラブルデバイスなど、新デバイスにも触れられた。

これらのデバイスも普及するのであれば、さらに「フラグメンテーション」は進むことになる。こうした状況に如何に対応できるのかが重要になるだろう。

このセッションで話された内容で、筆者がポイントだと感じたのは以下の点だ

  • デバイスの進化速度に広告のフォーマットは追いつけるか
  • 情報はさらに膨大になるが処理は可能か
  • ターゲティングがどの程度の精度で可能なのか
  • ユーザプライバシーの問題

デバイスの多様化、取得可能データの増加、データ解析、これらは密接につながっており、これらからは今後、よりユーザのコンテキストに合った提案が可能になることを示している。

今年の1月にはユーザが求めている情報をホーム画面に表示させるAndroidアプリ「Aviate」をYahoo!が買収した

アドテクはアイデアがあり、エンジニアリング力があれば、スタートアップであっても成功するチャンスが残されている領域だろう。このセッションを聞きながらそんなことを考えていた。

グロースハック進化論

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2つ日目には「グロースハック進化論」というセッションが開かれた。昨年から本誌でも紹介することが増えてきたこのワードは、今年入ってさらに勢いに乗っている。

  • KAIZEN platform 須藤憲司氏
  • pLucky 林宣宏氏
  • InnoBeta 平石大祐氏
  • VASILY 梶谷健人氏

同セッションには以上のような本誌でもよく名前の登場するスタートアップの面々が登壇し、渡邊大介氏のモデレートのもと、「グロースハック」について語った。

このセッションではグロースハックという概念が注目されるようになった背景、そして本来の言葉の意味を整理、再確認する場であったように思う。

効果を検証し、サービスを成長させよう、という動きは以前からあった。変わってきた点としては、データの取得がより細かくできるようになってきたこと、ソーシャルメディアやモバイルなどの登場により、ユーザの獲得が容易になってきたことなどが挙げられる。

グロースハックは「お金をかけないで済むマーケティング手法」という理解や、「LPOやボタンの最適化」といった細かい点に注目が集まり過ぎている。

筆者の理解では、グロースハックはサービスの成長において最も重要な指標を見極め、その数字を伸ばすための最適な方法を考え、実行し、効果検証をしてPDCAを回していくというものだ。

そのため、セッションの中でも言及されていたが、広告を打たないわけではない。広告を打つことがサービスの成長にとって有効なのであれば、広告を打つことも十分に考えられる。

こうしたセッションの場が設けられることで、少しずつ概念の整理も進んでいくかもしれない。今回、アドテクのカンファレンスを取材し、アドテクとスタートアップの距離の近さを感じた。継続的にこの動きをウォッチしていきたい。

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