クラウドワークス、Sansan、nanapi、クックパッド、スタートアップにおけるエンジニアの採用と評価とは

Junya Mori by Junya Mori on 2014.5.23

ベンチャーヒューマンキャピタル事業を展開するスローガン株式会社がプロデュースし、アマゾン データサービス ジャパン株式会社との共催で「2020年のエンジニア像 ~ エンジニアがこの先生きのこるには? ~」が先週開催された。

スタートアップ向けにエンジニアの採用、育成、評価に関する事例共有やエンジニアの働き方に関するパネルディスカッションなどが行われた。

2020年のエンジニア像 ~ エンジニアがこの先生きのこるには? ~

ゲストとして参加したのは、

というメンバー。スタートアップ各社におけるエンジニアの採用についてや、評価制度についてのトークについて紹介する。

スタートアップにおけるエンジニアの採用と評価制度

クラウドワークス – フェーズごとの採用ポイント

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クラウドワークスの開発体制は、立ち上げ期、創業期、成長期と3つのフェーズに分けられる、と野村氏は説明する。

野村氏「立ち上げ期はほぼ自分一人。一番気をつけていたことは体調管理で、フリーランスの方の力を借りつつ開発していました。創業期ではエンジニアが2人入りました。ベテランで、かつ最近話題のフルスタックエンジニアという人達。創業期におけるCTOの役割で大切なことは採用圧力に負けないこと。

サービスインまでは順調に進みますが、一度リリースすると、ユーザサポートなどもあり、スピードは落ちます。そうすると人を増やそう採用へのプレッシャーがかかる。ですが、そこで採用することを優先して人材に妥協するのではなく、あくまで価値ある人材を採用することに重きを置いていました。」

創業期にエンジニアを採用する際に気をつけていたポイントを、「重要なのは事業にコミットできるかどうか」だと野村氏は語る。

野村氏「創業期においては、技術力が最優先の項目ではないんです。事業にコミットメントする力があるかどうか。それは、持続的に成長している会社の出身かどうか、スタートアップを経験しているか、自分のプロダクトを持っているか、など事業を伸ばすことがどういうことかを理解しているかどうかで判断します。」

成長期においては採用における考え方は変化する。

野村氏「成長期では技術力を重視します。CTOよりも優秀な人を採用する事。採用によってチームの力、技術力を向上させるつもりで採用を行います。これまでは速度重視で進めてきた開発のおかげで、パフォーマンス上の問題など負債が積み上がっている状態。これを解決できるチームにしていくことが求められます。」

人の採用には「お金」や「安定」、「人的リソース」など、様々なものが必要になる。だが、スタートアップは大手企業と比較し、この面が弱い。

野村氏「スタートアップには「夢」しかない。露出して夢を語っていく。そして賛同してくれる人を集める。これまではマスメディア、プレスリリース、イベント登壇や協賛、社内や業界での勉強会などを実施することで露出して、採用につなげてきました。現在では結果的にはうまくいっています。」

Sansan – 良いエンジニアを見極めるには

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Sansanの藤倉氏は、法人向けサービスの開発責任者。自分の部署の採用に責任をもっている。

藤倉氏「Sansanは、エンジニアの教育や評価といった部分にはあまり力をいれていないのが現状です。というのも、エンジニアの採用には絶対に妥協していないからです。採用をしっかりやっていれば、教育や評価に割くリソースを抑えることができます。

しっかりと任せられる人、背中を預けられるエンジニアを採用します。これはうちはまだまだ安泰というような規模の会社ではなく、さらに名刺関連のサービスということもあって個人情報を扱っています。何か障害が起きたり、事故が起こることは避けなくてはなりません。一緒に命をかけてサービスを開発できる人かどうか、そういったことを見ています。」

また、採用において技術力より実務能力を重視していると、と藤倉氏は語る。

藤倉氏「個人的には技術が評価されるのは、それがサービスなり事業なりを作り上げ、残すことができたときだと考えています。技術単体で見るだけでは評価はできず、なんのための技術なのか、それが重要です。そういった意味では、適切な技術を選択していくことが重要であり、実務能力が重要になると考えています。」

採用を加速させるために必要なことについては、

藤倉氏「まず、応募を加速させるためんはメディアに出て露出を増やすことが重要です。仕事でもやることは山ほどあるのですが、露出の機会があればそれを最優先しています。次にはダイレクトリクルーティング。勉強会に出て、様々なコミュニティに出ていると、出会ったタイミングでは転職の意思がなくても、転職したくなったときに思い出してもらってコンタクトをもらうこともあります。

あとは社員からの紹介。これを盲目的に信じるわけではありませんが、良い人に巡り合う可能性は高い。そして、大事なことがエンジニアの採用はエンジニアにしかできないということ。私は広報や人事だけで完結するエンジニア採用はありえないと考えています。とはいえ、人事や広報の協力は不可欠なので、うまく協力しながら活動していくこと。

nanapi – 変化し続けること

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nanapiは現在、ライフレシピ共有サイトの「nanapi」、モバイルQ&Aアプリ「アンサー」、海外向けメディア「IGNITION」の3つを運営している。エンジニアは11名。

和田氏「nanapiの教育制度は、「変化し続けるものが強い」という考え方に基いていいます。企業風土としては、業界も事業も変わりうる。会社自体、人材も変化し続けないといけない。新しい技術をキャッチアップ、学び続けることができる人を重視しています。

nanapiは事業が先にあってそこに人をアサインしていくのではなく、チームを作りそのチームでどんなサービスを生み出すのか、という順番でサービスを作っています。普段使っている技術だけでサービスを作っているとどうしても視野が狭くなってしまいます。そのため社としては幅を広げていくことを促しています。」

変化に強いチームにするために、nanapiがやっていることはどのようなことなのだろうか。

和田氏「具体的には1日1時間、業務内に時間を確保して、そこで新しいテクノロジーや今やっていないことをキャッチアップする時間を設けています。クオーターごとにチームで何か学ぶことを設定し、クオーターが終わるころには何か新しいことができるようになっている、そんな状態が生まれるようにしています。

社全体のレベルを上げたいと考えていて、最終的には社内からコードが書けない人間がいなくなるところを目指しています。これにはけっこう私がコミットしていまして、週に一回非エンジニア向けの人に講座を開いてプログラミングを教える、といったこともしています。」

こうした考え方、企業風土を持っているnanapiでは採用に対してこのように考えているという。

和田氏「採用は事業計画と密接に関係するもの。ですが、事業も採用も計画通りにはいかないものです。私たちは採用は結局「縁」と「運」だと考えています。そのため、採用活動は継続的に実施しなくてはいけないと考えていますし、良い人がいれば採用する、というスタンスです。

採用の基準に関しては、志望動機は重視していません。先ほどお話したようにうちはサービスが先にあるのではなくチームが先にあります。志望動機を重視すると現状のサービスへの想いが中心になる人が多い。これは私たちが既存サービスから新サービスへの転換をすることになった場合、よくありません。ですので、志望動機よりも変化に強いこと、ウェブやテクノロジーへの関心が高いことを見るようにしています。」

とはいえ、スタートアップには中々人は入ってきてくれない。

和田氏「なかなか良い条件が出せないスタートアップにとって大事なことは、如何にして口説くかということ。最初のメールのやりとりから採用活動は始まっているので、最近までそのメールのやりとりから自分でやっていました。応募してきてくれた人にとってもCTOからメールが来ると「おっ」と思ってもらえる。そのあたりは肩書を有効活用します。

あとは社員の紹介というのはやはり合う可能性が高いですし、あとは直接の応募も会社に合う人が多い。求人媒体なども使うのですが、コストもかかりますし、リソースも割くことになるので最初のうちは大変です。慣れないうちは人材要件がうまく伝えられないということもありますし。」

和田氏は最後に、nanapiの評価制度についてコメント。

和田氏「基本的にうちの会社ではサービスごとにチームを組んでいます。基本的にはプロジェクトに対してどれだけ貢献できたかが一番多くの割合を占めています。プロジェクトリーダーが査定を行い、役員がチェックして決議、という流れです。

オーソドックスですが、クオーター単位で目標設定をし、末にその確認をします。目標設定に関しては、役員やリーダーから「もっとこのあたりまで目標に入れようよ」などフィードバックをしながら目標を決めていきます。おそらくあまり人数が多くないから可能なやり方かな、と思っています。また、新しい技術へのキャッチアップも考慮には入れています。」

技術的なチャレンジが評価されるべきということもあるし、プロジェクトへの貢献性が評価されるべき、という考え方もある。和田氏は「いまだ最適解は見つかっていないが、今度試行錯誤しながらよりよいやり方を見つけていければ」とコメントしていた。

クックパッド

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現在、クックパッドの社員は150人ほど。エンジニアは60数名。今回、クックパッド CTOの舘野氏はクックパッドでのエンジニア評価制度について紹介した。

舘野氏「クックパッドのエンジニアの7、8割は事業部に所属して仕事をしています。すると、エンジニアを評価するための視点は2つになります。

  • 部室評価 – 部の目標にどれだけ貢献したか
  • 横断評価 – エンジニアとしての技術力評価

今回は、特に横断評価、エンジニアとしての技術力評価についてお話していきます。」

エンジニアを評価するために、クックパッドでは以下のような点を見ているという。

  • 「ユーザの問題発見、解決を主体的にできているか」
  • 「誰にも負けない分野で仕事ができているか」
  • 「シンプルな設計にできているか」
  • 「社内外の開発者全体に貢献できているか」

舘野氏「ユーザの抱ええいる課題を発見し、どうしたらそれを解決していくことができるのかを考えることが非常に重要です。これは直接サービスやプロダクトに関わっていないエンジニアにとっても重要なこと。

誰にも負けない分野で仕事ができているかというのは、自分の強みを持ち、業務へ適用できているかです。自分だからこそ実現できたであろう成果を、出せているか。これをひとつの指標として置いています。

シンプルな設計にできているか。これは技術への深い理解があるからスピードをもった開発が可能になり、知識がないと無駄が増え複雑になってしまいます。シンプルとは何かを考え、それを開発に活かすことができている人を評価するようにしています。

社内外のエンジニア全体に貢献できているか。事業部単位だけではなく、社全体や社会への貢献をどれくらい意識しコミットできているかを評価するようにしています。」

このような指標をおき、チームやチーム外のエンジニアからの評価の次にリーダーからの評価、その次にはCTOや技術の統括責任者が評価を行った後、各部室長に給与提案込みでフィードバックしているという。

舘野氏「評価制度は一度設定したら終わりというものではなく、見直しが必要です。さらに、評価制度を考える上では、会社自体がどういう組織であり続けたいかということが重要です。クックパッドの場合は、ユーザにとって価値があるサービスを提供し続けることが価値だと考えています。

なので、エンジニアにかぎらず、ユーザファーストを最優先としています。ユーザの課題解決のために、どれだけ技術をうまく活用することができるか。この部分を大事にしています。今クックパッドは「ユーザのために技術を役立てる会社」。そのため、今では採用時に「技術の会社ではない」と伝え、そこには齟齬がでないようにしています。」

スタートアップにとって、会社の規模もサービスの規模も変化の速度が早く、採用や評価についての制度を整えることに課題を抱えているのではないかと思う。今回伝えた内容が、少しでも参考になれば幸いだ。

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Junya Mori

Junya Mori

モリジュンヤ。2012年に「Startup Dating」に参画し、『THE BRIDGE』では編集記者として日本のスタートアップシーンを中心に取材。スタートアップの変革を生み出す力、テクノロジーの可能性を伝えている。 BlogTwitterFacebookGoogle+

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