編集部注:「隠れたキーマンを調べるお」は、国内スタートアップ界隈を影で支える「知る人ぞ知る」人物をインタビューする不定期連載。毎回おひとりずつ、East Venturesフェローの大柴貴紀氏がみつけた「影の立役者」の素顔に迫ります。
IVS Launch pad 2013 Springでの優勝をきっかけに界隈の注目を浴び続けている「クラウド会計ソフト freee」。
期待値だけではなく、ソフトのクオリティに関しても既に高い評価を受けています。そんなfreeeと言えば代表取締役の佐々木大輔氏がよく知られていますが、その佐々木氏を起業当時からサポートし続けて2013年7月にfreeeにジョイン、取締役COOに就いてビジネス面を一手に担っている東後澄人氏にインタビューしてみました。
人生を変えたコンサルティング企業での5日間のインターン
大柴:はじめまして。佐々木さんのブログを拝見して「あぁこの方はまさにキーマンだなぁ」と感じまして(笑)。
東後:キーマンですか(笑)。よろしくお願いします!
大柴:まずはざっくりと経歴を伺っていきたいと思います。大学は東京大学ですね。
東後:はい。東大の工学部でロケット関連の研究をしていました。
大柴:ロケットですか?
東後:大学院で次世代ハイブリッドロケット推進薬の研究開発をしてたんです。ロケット用の新しい燃料の研究ですね。
大柴:なんだか凄いですね…。そうなると研究者の道に進むケースが多いと思うのですが?
東後:そう思ってたんですよね。でもとあるコンサルティングファームのインターンをやってみたんです。たった5日間ですけど。でもその5日間で得られたものがあまりに多くて、衝撃を受けたんです。ずっと研究ばかりやっていたのですが、全く違う世界を見ることができました。
大柴:なるほど。
東後:それでマッキンゼーに入ったんです。研究者になって技術で日本に貢献しようと考えていましたが、これまで考えていたものとは違う貢献をすることができるかなぁと思いまして。別のところから大きな貢献をしていきたいと。
大柴:なるほど。マッキンゼーには5年ほど在籍されていましたが、どうでしたか?
東後:マッキンゼーでの5年間は得たものがとても多かったです。物事の考え方、現在の自分のベースになっているのはこのマッキンゼーでの5年間です。大学卒業からの10年間は自分への投資と決めていたのですが、この最初の5年はとても大きかったです。企業のトップや現場の考え方、様々な知識を得ることができました。出会った人達のクオリティも高く、成長できたと実感することができましたね。
スモールビジネスにおける課題を実感したGoogle時代
大柴:マッキンゼーを辞めた後、Googleに転職されます。
東後:事業会社側の立場でビジネスをしたくなったんです。第一人称でのビジネス。いくつか候補があったのですが、わりと即決でGoogleへの転職を決めました。Googleが生み出すプロダクトは面白かったし、どういう仕組みか知りたかった。イノベーションを生み出し続けてる仕組みです。あとは出会った人達が面白い人が多かったのも決め手の一つですね。
大柴:その中の一人が佐々木さんだったわけですね。
東後:転職した時には既に佐々木がいまして、一緒のチームで働くことになりました。取り組んでいたのが、スモールビジネス向けのサービスです。ただ、すぐに佐々木はアジアパシフィックの担当になってしまい、チームを移ってしまったんです。私は引き続き日本担当という事で。チームが離れた後も連携して業務はしていました。
大柴:しかし、佐々木さんは起業をしてしまいます。
東後:最初に聞いた時はちょっとびっくりしました(笑)。でもGoogleで取り組んでいたスモールビジネスに関わる事業でしたし、良いチャレンジなんじゃないかと思いました。
大柴:freeeの最初のアイデアを聞いた時、どう感じましたか?
東後:日本には素晴らしい事業をされているスモールビジネスがたくさんありますが、一方で課題を抱えていることも多いんです。当時話してた一例ですが、インターネットには8割の人が接続しているのに、スモールビジネスのWebサイト保有率が当時25%前後しかなかったり。
そういったズレのようなものが存在すると感じていました。あとはバックオフィス。煩雑な作業をしなくてはならず、無駄が多くなってしまいます。何らかのツールを入れればすぐに効率化し、空いた時間をもっと有効に使う事ができるのになぁと思っていたので。
大柴:なるほど。まさにfreeeはそういう課題を解決するツールですね。
東後:そうです。弊社でもfreeeを導入しているのですが、経理専任のメンバーはいません。他の業務をしている人が2割程度のリソースを注ぐだけでまかなえています。
大柴:え!?経理担当者いないんですか?
東後:そうなんです。freeeのおかげでリソースが空き、他の仕事をすることができるんです。
大柴:これは凄い。Google時代に感じていた課題の一つをfreeeによって佐々木さんは解決したんですね。
freeeに自分が関わる事で会社にも社会にも貢献できると感じた
大柴:ところで佐々木さんの起業直後から個人的に事業の相談などに乗っていたということですが?
東後:そうですね。休みの日とか夜とかによく佐々木とディスカッションしていました。
大柴:「Google辞めてウチに来ない?」なんて誘われなかったですか?(笑)
東後:無かったですね(笑)。純粋に前職からの流れで相談に乗っていた感じです。会社は違うけど同じ課題に立ち向かっていましたし。プロダクトができて、しばらくはその改善に佐々木は全力を注いでいました。やがてちょっと落ち着いてプロモーションなどのビジネス寄りの相談が増えてきて。だんだん「佐々木と一緒に取り組むことで世界を変えられるかもしれない」と思うようになり、ジョインを決めました。
大柴:Googleを辞める事に迷いは無かったですか?
東後:無かったです。freeeに自分が関わる事で会社にも社会にも貢献できると感じたので。
大柴:東後さんがfreeeに加わる事で佐々木さんにはどんな事に集中してもらいたいですか?
東後:細かいオペレーションではなく、シンボルとしての活動をしてもらいたいです。あとはロングタームのビジョン構築ですかね。でも基本はプロダクトサイドに集中してもらいたいです。そしてスモールビジネスに一番詳しい経営者になってもらいたいです。
大柴:なるほど。東後さんから見て、佐々木さんってどんな人ですか?
東後:そうですね(笑)。うーん、一言で言うと「おもしろい」人ですかね。他人にはできない事ができる。既存の枠にとらわれずに、イノベーションを起こすことができる。ただ、それが思いつきではなく、ロジカルなんですよね。
大柴:なるほど。
東後:あと、リーダーシップがあるんです。親しみやすいリーダー。わりと誰とでもカジュアルに親しくなる。Googleの時も社内の有名人でした。人柄でしょうかね。ロジカルな側面とフレンドリーな側面を合わせ持っている人です。魅力的なリーダーです。
大柴:冒頭に「最初の10年は自分への投資」と仰ってましたが、もうすぐ10年。どうですか?
東後:3社とも全く違う経験をすることができて、とても充実した良い10年だったと想います。
大柴:freeeもこれから10年、20年・・・と続くサービスとなっていきそうです。応援してます!
東後::ありがとうございます。
大柴:ところでfreeeと言えば卓球ですが(笑)。
東後:卓球台を置こうと提案したのは僕なんです(笑)。最初は強かったんですが、上手い人がどんどん入ってきて・・・。
大柴:今度対決しましょう!今日はありがとうございました。
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