AngelList創業者Naval Ravikantが語る、成功するスタートアップ・ハブの作り方(1/3)

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2014.6.1

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左から:Naval Ravikant (AngelList)、Jai Choi (Teckton Ventures)

本稿は、5月14日〜15日に韓国・ソウルで開催されたスタートアップ・カンファレンス「beLAUNCH 2014」の取材の一部である。2日目に行われたファイヤーサイド・チャットのセッションに、起業家と投資家をつなぐソーシャル・ネットワーク「AngelList」の共同創業者 Naval Ravikant が登壇し、スタートアップ・シーンにおけるエンジェル投資やクラウドファンディングの重要性、成功するスタートアップやスタートアップ・ハブの作り方について考えを披露した。

このインタビューの全編は長いものになるが、彼の発した言葉は要約するには惜しいので三部構成とすることにした。今回はまずその第一回目である。なお、このセッションのインタビュアーは、サンフランシスコを拠点にスタートアップ向けシード投資を行っている、Teckton Ventures の Jai Choi が務めた。

(トランスクリプションと翻訳:池田 将)

まず、AngelList とはどういうものなの?

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THE BRIDGE が掲載されている、
AngelList のページ

Naval: 明らかに、これはコミュニティをエンゲージするためのものだね。交流するためのサイトではあるが、毎日訪問してもらうようなサイトではない。君のような投資家がスタートアップをチェックできるわけだ。海外では違うだろうけどね。いい会社がいい投資家に出会って、十分な資金を獲得できるようにすべく日夜努力しているんだ。

非常に規制の多い分野で業務をしている。特に企業の資金調達を助ける分野においては、アメリカでは規制を遵守しなければならない。ヨーロッパでもこの規制をクリアしようとしているところなので、ヨーロッパでも同じことができると思う。我々はアジアではできないと思うんだ。法律制度が全く異なるから。お金の動きも全然違う。

みんながニーズを持っているけど、それを満足させるプロダクトを作るのは難しい。我々は他の誰もが解決していない問題を解決しようとしているんだ。

以前のインタビューで、君は「脱出速度 (escape velocity)」という考え方について話していたね。聴衆の皆に説明してくれないかい? 君が脱出速度を達成できた事例でも構わないよ。

Naval: 脱出速度というのは、ロケットを宇宙に打ち上げるときの用語だね。君に置き換えれば、素早く動けば、支えているものを打ち破れることを意味する。重力圏を突き抜ければ、地面に引き戻されて死ぬこともない。

そこで疑問なのは、脱出速度に達してしまえば、それで十分なのかということだ。十分だろうがなかろうが、あるいは、それが分かろうが分からなかろうが、さらに進まなければならない。スタートアップの多くに取って、それがあるべき姿だ。

文化を偉大に発展させている力の一つは、失敗を忘れるということだ。失敗を忘れられるから、次に何かを始めようという気になることもできる。したがって、起業家は自分が脱出速度に達したと気付くことができれば、少なくともどこかへ進もうとしているという自信につながる。

脱出速度には多くの測り方があるが、素早く脱出速度に達することができれば、市場は君のプロダクトを放っておかない。君が信じるものには需要があるのだから。需要が向こうからやってくる。お客が値段を聞きに来る。君は人々を確信させ、彼らにプロダクトを買ってもらうようになるだろう。

しかし、脱出速度に達している企業はほとんど存在しない。私達でさえ達していない。私達の場合、ある面では達しているが、すべての面では達していないと思う。

それは、クリティカル・マス(訳注:ある商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がるための分岐点となる普及率、物理学用語としては臨界質量)とは違うの?

Naval: クリティカル・マス? それは、みんな同じものを使おうとすることだよね。「成功とは、失敗よりは成功しそうな状態」と彼らは言う。君だって、失敗よりは成功に近いよね。

クリティカル・マスは核反応から来た物理学用語だが、おそらく、それはこの場で話すような重要なテーマではない。プルトニウムとウランを混合したら、爆発するか核反応を始めるというような話になる。

スタートアップの文脈では、コミュニティの中で君のプロダクトを使ってくれるお客やパートナーが獲得できることを言う。彼らは互いに価値を提供しあう。つまり一定のクリティカル・マスを獲得すれば、反応を得られ、さらに多くのお客を市場に連れてきてくれる、というものだ。

それを実現した企業の例はある? 何が一番の成功要素なのだろうか。

Naval: 我々は初期の段階で大きな成功を企業に注力するようにしている。例えば、Uber。非常に速く成功したよね。正しいプロダクトを正しいタイミングで正しい方法で投入すれば、大きな市場が生まれる。

振り返ってみても、そのようなケースはまれだ。さらに成功事例を述べれば、Twitter や Yammer だろう。彼らは成功までに時間を要した。時間はかかるものだ。スタートアップをしているということは、世界中の最高の人々と競争している訳だ。これは間違いない。つまりそのゲームで、君は最高である必要がある。でも、みんな頭がいいし、みんなよく働く。

頭はいいのに成功していない人も多く居る。研究所、大学などにはそういう人はいっぱいいる。長期的に見て、勝者と敗者を分けるのは執着心だ。10年間も同じ場所にいて、同じことをやり続けるということだね。

では、最近の資金調達や市場動向について、ちょっと話を進めてみたいと思う。現在のVCやスタートアップ・シーンで起きている、最も恐いことは何だろう?

navalNaval: 恐いこと? いつだって恐いことは起きているよ。スタートアップはリスキーだし、スタートアップ投資のビジネスは感情に左右されるからね。リスクや恐いことが常について回るが、スタートアップ投資は規模が小さい。非常に少数の人々に少額が投資されるだけだ。

株式公開に近づいたら、恐くなるかもしれないね。バリュエーションが過大で後にクラッシュするかもしれない企業がポートフォリオにあれば雰囲気は悪くなる。でも、破綻や損害は、ある程度あっても構わない。

例えば、ここ韓国で聞いた話では、今年3つの大きな上場があるという。Coupang(関連記事)、カカオ(先週ダウムが買収)それに LINE だ。君は、Coupang の出資に関わっているんだってね、おめでとう。

そのような動きが世界の他の場所でも繰り広げられるようになれば、韓国のスタートアップ・シーンは変化していくだろう。リスクに物怖じせず、スタートアップを知り、スタートアップを愛し、より多くのスタートアップに出会う、お金を持った人々を生み出すからだ。そうなれば、そこからはローンチ可能なコミュニティが生まれ、エンジェル市場やスタートアップ・シーンが生まれることになる。

例えば、世界の他のスタートアップ・ハブを見てみると、言うまでもなくシリコンバレーがナンバー1だ。しかし、ニューヨークがナンバー2だと言う人も大勢いる。ニュ—ヨークはこのところ、テック業界からIPOは出ていないのにだ。もし韓国が一年で3社のIPOを出せるのなら、韓国はテック・エコシステムで普遍的な位置づけになれる可能性がある。

それは夕べ、我々が飲みながら話していたことだね。

Naval: そう二人とも飲んでいたので、それ以上のことは話さなくていいよ。(会場笑)

君は、韓国の市場が5大財閥によって成り立っていることにコメントしていたね。そして、市場をディスラプトするには、韓国は最高の場所だと思うって。この点についてどう?

Naval: そうだね、韓国には財閥があるよね。彼らは成功者だし、この国に信じられないほど多くのものをもたらしている。長期的に見れば、財閥はイノベーションとは関係ないところにいる。成熟した市場、例えばアメリカを見てみると、多くの公開企業は一つか二つの事業しかやっていなくて、うまくやっている。つまり、一社で10種もの事業をやる企業なんて存在しないわけだ。

こういう財閥をみたら、資本へのアクセスが不十分だと思うよね。市場が規制され過ぎているとか。こういうことは変化していくと思っている。ここにはインターネットやオープンソースのおかげで、起業家世代がいるんだ。以前ほどお金がなくても会社は作れるんだよ。

10万ドルもあればプロダクトが一つ作れる。市場で100万ドルを手に入れられる。1,000万ドルで成功する会社が作れる。こういう数字がかつては10倍、100倍必要だった。だから、そこにはイノベーションのチャンスがあるんだ。

韓国の人はリスクを取りたがらないという話はよく聞く。文化、文化、文化。人はリスクを取りたがらない。でも、そんなの問題じゃない。スタートアップ・エコシステムが存在するために、リスクを取る人が100万人必要なわけじゃないんだ。1,000人リスクを取ってもいい人が居れば、1,000人で十分なんだ。

これだけは言わせてほしい、スタートアップに本当のリスクなんて存在しない。確かにスタートアップは大変だ。人生の数年間を費やすことにはなるが、そこで学ぶことは後の人生にとって役立つことだ。餓死することはないと思う。だから、積極的にリスクを取るべきなんだ。

Fred Wilson(訳注:ニューヨークの投資家でブロガー)が「成功しているスタートアップ・ハブとは何か」って面白い記事を書いていた。彼は世代の多様さ、学び、適用性だと。これについてはどう思う? スタートアップ・ハブを成功させる要素って何だろう?

Naval: ハブは、いろんなことが組み合わさって成立している。だから作るのは難しいけど、それを壊さないようにすることはできるよ。まず規制を減らすのはよいこと。リスクを取ろうとする文化を支持するのもいい。よいベンチャー投資家を迎えるのもいいことだ。

私は韓国にいいVC企業が少ないことには驚かなかった。むしろシードファンドがもっと必要だね。もっとエージェントが必要だ。イグジットが必要だ。大きな IPO が必要だ。そして成功したスタートアップの創業者や従業員は、次世代の企業にもっと投資を促されるべきだ。税制も緩和しなくちゃいけない。

私はシリコンバレーの天気がいいのは偶然だとは思っていない。天気はすべてに役に立つ。近くに大学がたくさんあることも。デザインも重要なので、よいデザインセンスを持った人がいれば、それも役に立つ。

私は大学の近くにいたんだけれども、そこには非常によいデザインセンスが多くある。クリエイティビティもある。エネルギーもある。そういったものをテクノロジーを持った優秀な人と結びつければ、すごいことになる。

テクノロジーはカギだ。スタートアップはテクノロジーのビジネスだからだ。すなわち、たいていの会社は、MBA や美術の学位を持った人じゃなくて、エンジニアで埋め尽くされなければならない。そこには、テクノロジーや技術者を賛美する文化が必要なんだ。

次回に続く)

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